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企業でエンゲージメントを向上させる施策とは?具体的な事例を解説

今、あらためて従業員と企業のエンゲージメントが注目されています。

エンゲージメントは契約・信頼などいろいろな意味がありますが、ビジネスの場では顧客に対しては信頼、従業員に対しては絆や忠誠、居心地の良さといった意味を持ちます。

この記事では、エンゲージメントを向上させる施策の事例について解説します。

なぜ今企業でエンゲージメントが注目されているのか

エンゲージメントには、婚約・絆・契複数の複数の意味があります。

ビジネスで“エンゲージメント”という場合、顧客に対しては信頼、従業員に対しては絆や忠誠、居心地の良さといった意味を持ちます。

現在、従業員に対するエンゲージメントを重要視する企業が増加中です。

労働人口の減少や働き方の変化により、新卒で入社して定年までコツコツ勤め上げる従業員は減少する一方です。

優秀な従業員ほど労働環境や労働条件に不満があれば、転職活動に力を入れるでしょう。

優秀な従業員を手放したくなければ労働環境や労働条件を改善することはもちろんのこと、従業員に会社へ忠誠心を抱いてもらったり絆を強くしたりすることが重要です。

そのため、“エンゲージメント”があらためて注目されるようになったのでしょう。

日本のエンゲージメントは低い?

日本経済新聞2022年5月1日の朝刊に、『働きがい改革、道半ばの日本「仕事に熱意」6割届かず』という表題の記事が載りました。

それによると、仕事に熱意を持ち会社に貢献したいと考える従業員の割合は6割弱に留まり、これは世界最下位に留まるということです。

また、米調査会社ギャラップが2017年に行なった調査によると、日本においてエンゲージメントの強い従業員は6%と調査した国の中で最下位でした。

このほか、2019年に総合人材サービス会社ランスタットが仕事における満足度を調査したところ、満足度が高いと答えた従業員は42%と調査した国の中で最下位だったのです。

複数の調査結果から判断すると、日本は2010年代後半から仕事に対する満足度や熱意が低いと考えられます。

80年代、日本は仕事をしすぎると欧米に非難され、“モーレツ社員”など仕事第一に生きる人たちを形容する言葉が、いくつも流行語になったことがうそのようです。

家庭やプライベートを一切顧みず仕事一筋に生きろ、と強制されるのも問題です。

しかし、“仕事に情熱をもてない”“職場や働き方に不満がある”従業員ばかりなのも大問題でしょう。

従業員の働きぶりや業績を見て「どうすれば、従業員がやる気になってくれるのか」と悩んでいる企業は多いことでしょう。

単に給与を上げたり待遇をよくしたりすることでは、解決できないこともあります。

では、なぜ従業員のやる気が上がらないのか、その一例を次の項で紹介します。

日本企業における従業員のエンゲージメントが低い理由

ここでは、日本企業における従業員のエンゲージメントが低い理由を3つのカテゴリーに分けて紹介します。

エンゲージメント向上に取り組むなら、低い理由も把握しておくことが重要です。

従業員同士のコミュニケーション不足

仕事へのモチベーションをあげるためには、従業員同士のコミュニケーションが欠かせません。

ただし、会社におけるコミュニケーションに“雑談”は含まれないので、注意してください。

会社におけるコミュニケーションとは、従業員に以下の3つを明確にさせるためのものです。

従業員同士のコミニュケーションの目的
  • 従業員の理解度を上げる
  • 従業員の共感度を上げる
  • 従業員の行動意欲を高める

会社は利益を上げるため、さまざまなビジョンを持って仕事を進めていきます。

また、会社の規模が大きいほど分業化が進んでいくため、従業員の中には自分のやっている仕事が会社においてどのような意味を持つのか、わかりにくいこともあるでしょう。

ただ命じられるままに目の前の仕事をこなしていくだけの毎日だと、モチベーションも上がりません。

異動のある職場で、不本意な部署に異動された場合なら、さらに不満は溜まります。

「ここでやりがいのない仕事をしているより、転職しよう」と考える従業員も出てくるでしょう。

また、マネージャーとメンバーのコミュニケーション不足も問題です。

マネージャーが単に仕事を振るだけだったり、メンバーに威圧的に接したりするだけではエンゲージメントは低下するばかりです。

またマネージャーはメンバーに仕事を教指導したりすることも大切な仕事ですが、「見て覚えろ」「自分で考えろ」というばかりではいけません。

従業員が経営者が持つビジョンや会社が組織として目指す目標などを理解していれば、共感度も上がります。

大切なのは、経営者からマネージャー、そしてメンバーへと意思疎通がしっかりとできていることです。

また、必要あればメンバーから経営者へ意見できる環境を整えましょう。

経営者が意見を受け入れる体制を整えておくことも、コミュニケーションの一環といえます。

年功序列など柔軟性がない人事制度

日本の企業の大部分が、長い間特に高い功績をあげなくても勤続年数が長ければ一定の地位まで出世できる、年功序列の人事制度を取り入れてきました。

年功序列の人事制度にもメリットはあります。

仕事の中には業績に結びつかないけれど大事な仕事もあるため、そのような仕事をしてきた方を“年齢”を理由に評価が可能です。

また、年功序列と終身雇用がセットであれば、多少のことがあっても人事には影響しにくいので若手のうちに大胆なこともできやすいでしょう。

しかし現在、終身雇用は崩れつつあります。

早期退職を募集する大企業も珍しくなくなり、この会社に一生勤めていれば安泰という会社は少なくなりました。
それなのに出世は年功序列では、有能な社員ほどモチベーションは低くなります。

完全成果主義の人事にも、デメリットはあります。

しかし、営業など会社の売り上げに貢献する成果を出しやすい部署は、成果主義を取り入れたほうが従業員のエンゲージメントが高まりやすいでしょう。

会社の人事制度が今のビジネスの状況に合っていないと思ったら、早急な改善も大切です。

また、社員の意識も変えなくてはなりません。

20代~30代のマネージャーのもとでは、40代以降の従業員が働きにくいといった考え方が主流では、エンゲージメントは向上しにくいでしょう。

働きにくい職場環境

現在は共働きが当たり前となり、結婚退職や妊娠したら退職といったケースは少なくなりました。

反対に、少子高齢化によって親の介護のためにフルタイムで仕事をすることが難しくなる従業員は増え続けています。

社会全体のライフスタイルが変化しているといっていいでしょう。

それなのに、会社がいつまでもフルタイムで残業や休日出勤が当り前の働き方を従業員に求めていては、エンゲージメントは低下する一方です。

特に女性は育児と仕事を両立していくためには、どうしても男性と同じ働き方はできない時期があります。

そこを理解せず、“フルタイムで働けなければ、パートなどの非正規雇用になるか退職”といった選択を求める会社では、優秀な方ほど見切りを付けていくでしょう。

育児への理解が低い会社は、介護への理解も低めです。

現在は、介護離職が深刻な社会問題にもなっています。

介護離職は40代~50代のベテラン社員が多く、残業や休出ありのフルタイム出ないと働けない職場では、せっかく今まで育成してきた人材が失われてしまうでしょう。

企業にとっても長い目で見れば深刻な影響が出ます。

産休や育休、介護休暇などの仕組みを導入していても、実際に取得できなかったり取得すると査定に深刻な悪影響が出たりする場合は、意味がありません。

エンゲージメントを向上させる3つのポイント

ここでは、エンゲージメントを向上させるポイントを解説します。

先ほど従業員のエンゲージメントが低い理由を解説しましたが、その理由を解消すればいいのです。

しかし、どのように解消していいかわからない方もいるでしょう。

解決策の具体的な事例も紹介しますから、参考にしてください。

社内のコミュニケーションの活性化

前述したように、社内のコミニュケーションが不足しているとエンゲージメントは低下していきます。

エンゲージメントを高めるには、社内のコミュニケーションを活性化しなければなりません。

これには、時間がかかります。

単にマネージャーがコミュニケーションを活発化しようとはっぱをかけても、メンバーはついてきません。

社員のコミュニケーション能力を高めるには、次のような方法があります。

社内のコミュニケーションを向上化させる方法
  • 360度評価を取り入れる
  • 1on1ミーティングを取り入れる
  • 会社の経営者がメンバーの意見を聞く姿勢を見せる

360度評価とは、同僚やメンバー、マネージャーなどさまざまな立場の方が1人を評価する方法です。

いろいろな立場から同じ人物を評価することで、公平で多角的な評価を目指すやり方です。

1on1ミーティングとはマネージャーとメンバーが対面、もしくはオンラインでミーティングをします。

人事評価ではなく、メンバーのきめ細かなサポートをすることが目的です。

なお、360度評価も1on1ミーティングもマネージャーとメンバーの信頼関係が重要です。

今まで、マネージャーがメンバーに指示を出すだけなど一方的なコミュニケーションを取っていただけなら、いきなり導入してもうまくいきません。

ですから、まずは経営者やマネージャーがメンバーの話を「聞く」姿勢を見せましょう。

ただし、「飲み会の席でざっくばらんに話し合おう」という姿勢はなく、労働環境や仕事の話しは職場で、まじめに話し合うことが大切です。

また、メンバー同士のコミュニケーション能力を高めるためのミーティングなども小まめに実施しましょう。

企業理念を浸透させる

何のために仕事をするのか目標が明確でないと、モチベーションは低下する一方です。

会社にはさまざまな仕事があり、会社の売り上げに直接貢献できるような仕事もあれば目立たない仕事もあります。

特に、新入社員の場合、目立ちにくい仕事をする部署に配置されると、モチベーションが低下してしまう可能性が高めです。

そうならないためには、企業理念を社員1人ひとりに浸透させることが重要になります。

企業が目指すところやそのための目標がわかれば、仕事のやりがいも感じやすくなるでしょう。

ただし、目標や理念はできるだけ具体的なことが重要です。

“すべての人々の幸せのために”など、抽象的な理念ではモチベーションを高めるのは難しいです。

また、目標達成のためのノルマを設けるなら、達成可能なものにしましょう。

ある程度頑張らないと達成できない目標を立てることはモチベーションのアップにつながりますが、無理な目標を立てても長続きしません。

また、目標を達成したら功績を認めてあげましょう。

 適材適所に人材を配置する

人には向き不向きがあります。

適材適所に人材を配置することが、エンゲージメントを向上させるためにも重要です。

新入社員ならば短期間で複数の部署を回って適材適所を確かめる方法もできますが、中途入社の場合は最初から適材適所に配置したほうがいいでしょう。

また、今までの部署と畑違いの分野に異動させる場合は、本人とミーティングを重ねて納得してもらうことが大切です。

このほか、360度評価を利用する方法もあります。

マネージャーが見抜けなかった得意分野をメンバーや同僚が見抜けることもあるでしょう。

本人がやりがいを感じられる仕事を会社が見抜き、配置することが理想です。

エンゲージメントを向上させる施策事例

ここでは、エンゲージメントを向上させるために実際に企業が取り入れた政策事例について解説します。

どのような施策を取り入れればエンゲージメントが向上しやすいのか、参考にしてください。

ワークスタイルの自由化

現在は、さまざまな働き方ができます。

ここ3年でリモートワークが進んだ、という企業も多いことでしょう。

仕事によっては、どうしてもオフィスに出社してデスクで仕事をしなければならないこともあります。

しかし、“仕事は会社に出社して、全員で朝早くから夜遅くまで行なうもの”という固定観念を捨てなければ、エンゲージメントは向上しにくいでしょう。

例えば、育休中の社員でも週に2回、リモートワークならフルで働けるといったケースもあるでしょう。

また、リモートワークを取り入れることで、社員の離職率が下がったという事例もあります。

どのような働き方を取り入れれば離職率が下がるか、考えたうえで実施しましょう。

産休・育休・介護休暇などの充実

育児や介護でフルタイムで働けない社員がその度に退職していては、エンゲージメントは向上しません。

「育休、介護休暇は一切取りません。仕事第一です」と宣言する新入社員がいたとしても、ライフスタイルが突然変化することはよくあります。

フルタイムで仕事以外はすべて家族がサポートしてくれる従業員は、これからの時代減っていく一方です。

そのような従業員を探すより、産休や育休、さらに介護休暇を充実させる方が現実的です。

ただ導入するだけでなく、しっかりと取得実績も作りましょう。

資格取得の補助

社会人になっても勉強し続けることは、非常に有意義です。

しかし、資格を取得するためには時間だけでなく費用もかかります。

会社が資格取得の補助金を出したり、資格を取得すれば資格手当などで昇給を約束したりすれば、エンゲージメントは向上するでしょう。

会社の売り上げ向上に結びつくような資格は何か、どうすれば取得できるのかを会社側も調べておくことが大切です。

メンタルケアの充実

仕事が忙しすぎたり会社の人間関係がうまくいかなかったりすると、精神状態が不安定になることもあります。

1990年代半ばまで、日本の企業は従業員のメンタル面に無頓着でした。

企業によっては下のものには厳しく接することで、成長を促すことをよしとする社風もありました。

しかし、せっかく育ててきた社員がうつ病などで退職しては、貴重な人材が活かせません。

厳しく接することも重要ですが、サポート面も充実させましょう。

特に、中途社員や新入社員は右も左もわかりません。

また、功績を挙げた社員にはきちんと評価してあげることも重要です。

 社内ミーティングの充実

1on1ミーティングなど、従業員がプライバシーを保ちながら相談できるミーティングの数を増やしましょう。

皆の目の前では言えなくても、1対1なら言えることもあります。

そのためには、メンバーとマネージャーが信頼関係を結んでいることが重要です。

エンゲージメントが向上した企業の事例

最後に、エンゲージメントの向上に取り組み、実際に成功した企業の事例を紹介します。

スターバックスコーヒージャパン株式会社

スターバックスコーヒージャパン株式会社では、会社だけでなく個人としての将来像や目標を設定する取り組みをしています。

スターバックスで働く従業員の多くはアルバイトやパートのため、会社の理念や将来像といってもあまりピンとこない方も多かったのです。

そのため、自分がスターバックスコーヒージャパン株式会社で働くことで、何を身につけられるのかといった目標を立てさせました。

そのほうが、モチベーションが上がりやすいと考えたのです。

また、4か月ごとの人事考課を行なって成長を実感できる仕組みを作ってりました。

株式会社LIXIL

株式会社LIXILは、月に一回エンゲージメントの状態を数値化するエンゲージメントサーベイを実施しています。

間隔を短くすることにより、リアルタイムに近い状態でエンゲージメントの状態を把握できます。

エンゲージメントの責任はマネージャーにありますが、会社が「数値に固執しすぎるな」とはっきりと指示したおかげで、マネージャーが必要以上に責任を感じることはないそうです。

また、マネージャーをサポートしながら社員のエンゲージメント向上の対策を練っていくことで、社員だけでなく顧客満足度もアップしてきたといいます。

エンゲージメントの向上は長期計画で行なう

エンゲージメントの向上は企業にとっても重要ですが、一朝一夕では行なえません。

数年単位の計画を立て、できることから1つずつ導入していくことが重要です。

エンゲージメントの向上に成功した企業を参考にしつつ、自社の社風に合わせたものを取り込んでいきましょう。

reviiコラム編集部

revii(リービー)のサービス企画・運用に携わるメンバーが、組織改革やマネジメント育成、1on1ミーティングなどで役立つ情報・HowToを発信しています。
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