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人材育成におけるリフレクションとは?メリットや目的・注意点を解説

現在、人材育成のひとつとしてリフレクションが注目されています。

取り入れて実績を上げた会社の事例などを見て、自社でも実施の検討をされている方もいるでしょう。

この記事では、リフレクションを人材育成として取り入れる場合の目的やメリット、注意点を解説します。

人材育成におけるリフレクションの基礎知識

リフレクションは内省という意味を持つ英単語ですが、人材育成においては仕事の進め方や自身の行動を振り返ると意味です。

現在、ビジネスの世界ではリフレクションが人材育成に有効と言われており、取り入れを検討するところも増えています。

ここでは、人材育成におけるリフレクションの特徴など、基礎知識を解説します。

リフレクションとは自分の仕事を客観的に振り返ること

人材育成におけるリフレクションとは“振り返り”を意味します。

人材育成の基本は、仕事を経験させることです。

新入社員教育としていろいろな部署を回ってさまざまな仕事をさせる会社も多いです。

しかし単にいろいろな仕事を経験するだけでは、仕事を覚えられても実施するだけではそれ以上の成長は難しいケースも多いでしょう。

そこで、ある程度仕事を覚えたところでこれまでの仕事を振り返る時間を設けます。

「なぜ、自分はあのときあのような行動をしたのか」

「その行動によって、仕事がうまくいった(もしくは失敗した)」といった経験は誰もが持っていることでしょう。

その振り返りを、成長につなげるプロセスが リフレクションです。

リフレクションを行うことで、以下のような気づきを得られます。

「あのとき、先輩やマネージャーが言っていたのは、このような意味だったのか」

「あのとき、自分がとった行動は間違っていなかった。これは、どう思って行動したのだろうか」

つまり、自分の行動を客観的に振り返ることで、成長の気づきを得られるのです。

仕事の幅を広げながらリフレクションを行っていけば、自分で考えながら行動できる力が身に付きます。

反省とリフレクションの違い

“振り返り”というと、「反省と同じではないか」と思う方もいるでしょう。

しかし、反省と振り返りは似ているようで違います。

反省とは、自分の行動を振り返る点ではリフレクションと同じです。

しかし、反省は自分の言動のうちよくなかったことをピックアップして、 同じ過ちを繰り返さないためには、どうしたらよいかを考えることです。

一方、リフレクションは悪かったことだけでなくよかったことも含めて自分の行動全体を振り返ります。

反省も成長に必要ですが、あまり反省しすぎると自己嫌悪が強くなったり悲観的になったりするデメリットもあります。

リフレクションは自分の行動すべてを振り返ることで、自分で考える訓練を積めるのが特徴です。

反省もしますが、それをふまえて「では、自分はどうすればいいのか」と考えて成長に結びつけるのがリフレクションです。

リフレクションを行なう目的とメリット

自分の言動の振り返りは、自主的にでも行えます。

アスリートや経営者向けの本にはリフレクションの重要性を記載してあるものも多いです。

では、人材育成の一環としてリフレクションを行う目的やメリットはどのようなものがあるでしょうか?

ここでは、人材育成としてリフレクションを行なう意義を解説します。

自分自身で考えて行動する従業員になれる

現在、多くの会社が求めているのは自分で考えて行動する従業員です。

ビジネス書などでは、ダメ従業員の代表例として“指示待ち従業員”がよくあげられます。

マネージャーの指示を待ち、自分では何もしないメンバーは新入社員の頃はよくても、リーダーとして後輩を引っ張っていくのは難しくなりがちです。

リフレクションを行なうと、主体性が育ちやすくなるといわれています。

振り返りを行うと、「では、自分はあのときどうすればよかったのか」「これからどうすればいいのか」と考えるきっかけがつかめます。

そして、“自分が取るべき行動”のシミュレーションもできるでしょう。

リフレクションを定期的に行えば、指示をもらって仕事をするときでも漫然と行わなくなります。

「この仕事を効率よく終わらせて成果を上げるにはどうしたらいいか」「はじめての仕事だけれど、どうすれば最小限の失敗ですませられるか」といった感じに考えながら仕事ができるようになるでしょう。

これが、自分で考えて行動する従業員です。

主体性が育てば自然とリーダーシップも取れるようになります。

自分がどう動けば仕事がうまくいくか考えられるようになれば、自分以外のメンバーをどう動かしていけばいいのかもわかるでしょう。

自分の得意分野の仕事であれば、率先して先頭に立って皆を引っ張ってくれる機会もできます。

リーダーシップは、管理職になれば自然と芽生えるものではありません。

リフレクションを定期的に行なえば、メンバーのうちからリーダーシップの芽も育てられます。

従業員の気づきやマインドセットが可能になる

マインドセットとは、“経験、教育、思い込みなどによって作られる思考パターン”のことです。

例えば、売り上げを10%伸ばそうとチャレンジして失敗すると、「売り上げを10%あげるのは無理だ」という思い込みが形成されます。

逆に、ある方法で仕事がうまくいくと、「この方法でやればうまくいくんだ」といった思い込みが形成されることもあるでしょう。

仕事で、プラスのマインドセットが形成されればいいのですが、マイナスのマインドセットが固まってしまうと仕事にも悪影響が出ます。

人材育成の場では、プラスのマインドセットを“成長型マインドセット”、マイナスのマインドセットを“固定型マインドセット”といいます。

リフレクションを行って言動の振り返りをすれば、“なぜ自分がプラス(もしくはマイナス)のマインドセットを持つようになったのか”を分析できるでしょう。

また、マインドセットは絶えず更新する必要があります。

成長型マイインドセットであっても、何年もブラッシュアップしなければ固定マインドセットへと変化するでしょう。

成功体験に固執し、もはや時代遅れになっているのに、そのやり方を変えられないといったケースも成長型マインドセットから固定マインドセットに変化した一例です。

リフレクションを行なえば、「なぜ今までうまくいっていたことが、うまくいかなくなったのか」と考え、気づきを得られます。

従業員として経験を積んでキャリアを得た社員にもリフレクションは有効です。

業務の改善が図れる

仕事が軌道にのると安定しますがどうしてもマンネリ化してしまいます。

世の中の移り変わりは早く同じやり方で仕事を続けていれば、どうしても売り上げは下降していくでしょう。

また、業務がマンネリ化してもその原因や改善点がなかなかつかめず、有効な改善方法がなく場当たり的な対処しかできないケースもあります。

業務の悪い意味でのマンネリ化は、会社の方針もありますが従業員1人ひとりが固定型マインドセットに囚われていることもあるでしょう。

リフレクションは個人だけでなくグループでも可能です。
誰かの振り返りが別の人に気づきを与え、従業員全員の気づきにつながることもあるでしょう。

この気づきがプラスの方面に働けば、業務改善が図れることもあります。

リフレクションを実施する機会

リフレクションは、個人個人でも行えますが、ただマニュアルを作成して「リフレクションを行なっておいて」というだけでは、うまくいきません。

リフレクションを会社に定着させるためには、最初のうちは機会を設けて研修の一環としてやるといいでしょう。

ここでは、リフレクションをどのタイミングで行なえばいいのか、キャリア別におすすめの時期を紹介します。

新入社員研修

新入社員は、入社してからずっとOn the Job Training (オンザジョブトレーニング:OJT)をマネージャーや先輩から受けている最中です。

覚えることで手一杯で、リフレクションなどやる暇がないと思っている方もいるでしょう。

しかし、新入社員は仕事に対する姿勢や自信が定まっていないからこそ、リフレクションを行なう意味があります。

新入社員は常に、「自分は会社が求められる人材に成長しているのか」「頑張って入った会社だが、この仕事は果たして自分に向いているのか」といった不安を抱えています。

不安が大きくなれば、自信喪失に繋がりやがてやる気を失ってしまうかもしれません。

また、「もっと自分にふさわしい仕事があるのではないか」と早期退職する可能性もあります。

それを防ぐためにも、リフレクションは有効です。
“今までOJTを受けていて、自分はどのような成長をしてきたか”“入社前と現在と比べて思った通りに仕事を進められているか”など、テーマを与えてあげるとスムーズに進みます。

この際、単なる反省会にならないように注意しましょう。

自分が成長したことを実感できれば、モチベーションも上がり離職率も低下する可能性もあります。

中堅社員のスキルアップ研修

中堅社員とは、入社3年目以降の社員のことです。

この時期になると、仕事にも慣れてリーダーを任せられる機会も増えてきます。

また、中途入社の社員ならば、役職に就く方も出てくるでしょう。

仕事が面白くなり仕事へのモチベーションが上がってくる一方で、“さらに自分の力を試したい”と転職に前向きになりやすい方もいます。

反対に、仕事で躓いたりマネージャーとして実力を発揮できなかったりすれば、モチベーションが低下してやる気を失ってしまう可能性もあります。
このように、中堅社員は頼りになる存在の一方でちょっとしたことでモチベーションが大きく左右されてしまいがちです。

中堅社員にリフレクションを実施すれば、さらに成長できるきっかけをつかみモチベーションをアップさせる効果がのぞめます。

また、リフレクション単体だけでなく併せてセルフマネジメントをはじめとするリーダーとしての教育を行うと、より効果的です。

ただし、個々の成長には差があるため一斉に同じプログラムを行なうのではなく、リーダー向け、サポーター向けとわけてスキルアップ研修を実施するとといいでしょう。

シニアミドル研修

シニアミドル社員とは、40代以降の社員のことです。

かつては60歳で定年だったので、45歳以降になればスキルアップ研修を行う必要性はありませんでした。

しかし現在は定年後も同じ職場で働き続けられる方がいる一方で、早期退職を強くすすめられる方がいるなど、シニアミドル社員を取り巻く環境は一変しました。

「定年まであと10年程度だから、無理をせずにこれまでと同じように働いて安定した日々を過ごそう」などとは、言ってられなくなってしまいました。

その一方で、固定マインドセットから成長マインドセットに切り替えられずに、業務が滞る原因となったりします。

“メンバーはやる気が満ちあふれており、アイデアも持っているがマネージャーのシニアミドル社員が首を立てに振ってくれないので、うまくいかない”といったケースも珍しくありません。

しかし、シニアミドル社員は20年以上会社を支えてくれた貴重な人材です。

リフレクションがうまくいけば、これまでのマインドセットをブラッシュアップできたり、新しいスキルを身につけたりできるでしょう。
移り変わりが早い世の中ですがシニアミドル社員が培ってきた経験は会社にとって大きな財産です。

シニアミドル社員のリフレクションがうまくいけば、定年後の再就職もやりやすくなります。

シニアミドル社員本人も、モチベーションがアップできて業務の改善もスムーズに進む可能性も高まるでしょう。

リフレクションの実施例

では、リフレクションはどのように実施していけばうまくいくのでしょうか?

ここでは、リフレクションの実施例を紹介します。

フレームワーク

フレームワークとは、以下のような方法を用いてリフレクションを進めていくやり方です。

フレームワークの種類
  • KDA
  • KPT法
  • YWT経
  • 経験学習モデル

ひとつずつくわしく説明していきましょう。

KDA法

KDA法とは、Keep(継続)、Discard(切り捨てる)、Add(加える)のイニシャルを取った名前です。

KDA法は、チームで仕事をしている際にリフレクションを行う場合に適しています。

新入社員研修もグループワークが多いので、KDA法でリフレクションを行ってもいいでしょう。

KDA法のやり方は、Keep(継続)、Discard(切り捨てる)、Add(加える)の3つのキーワードに沿って振り返りを行います。

キーワードの意味
  • Keep:継続していきたいこと
  • Discard:今後改善したいこと
  • Add:今後行いたいこと

キーワードを設定することで、振り返りがしやすくなります。

また、グループで振り返りを行うと他人の意見を聞いて気づきが得られることもあるでしょう。

KPT法

KPT法とは、Keep(継続)、Problem(問題)、Try(改善に挑戦)のイニシャルを取った名前です。

Keepは、KDA法のkeepと一緒です。

Problemでは、日々の業務から仕事から発生する問題を指します。

例えば、仕事をするにあたって“メンバーとの意思疎通がうまくいかない”“はじめての仕事は皆が責任を押しつけ合う”などの問題があったら、洗いざらい振り返って見ましょう。

自分が原因であることでも、自分以外が原因であることでもかまいません。

そして、Try(改善に挑戦)です。

問題を解決するにはどうすればいいのか、自分で、もしくはグループで考えましょう。

KPT法は業務の改善にも役立ちます。

YWT法

YWT法とは、Y(やったこと)、W(わかったこと)、T(次にすること)の頭文字を取った名前です。
自分が行ったこと、その結果わかったこと、さらに次にすることを段階づけて振り返っていきます。
シンプルなやり方なので、新入社員研修やシニアミドル社員の研修で最初にリフレクションを行う場合に、利用してもいいでしょう。

経験学習モデル

自分の経験を活かして学習する方法を経験学習モデルといいます。

指導員の話を聞いて自分の経験に当てはめる受動形式よりも、自分の経験を振り返り、さらに概念化を試みた方がステップアップしやすいです。

例えば自分がはじめて1人で顧客へ営業に出向いたとき、できたこと・できなかったことを振り返り、マネージャーや先輩のアドバイスも鑑みて「次からはこうしていこう」と気づきを得る、といったサイクルを作ります。

この経験学習モデルは、自分でリフレクションをする際にも役立つでしょう。

リフレクション会議

リフレクション会議とは、個人が行ったリフレクションをチームや部署で共有することです。

リフレクションはプライベートに関わることなので、結果は自分の心の内だけに留めておきたい方もいるでしょう。

しかし、固定概念や本人の性格などによって個人だけではうまくいかないこともあります。

リフレクション会議は、自分の意見や考え振り返りを第三者に客観的に見てもらうことにより、最善の選択ができるようになるでしょう。

個人のリフレクション

個人のリフレクションとは、グループのリフレクションを行う前段階で、どの言動を振り返るのかまとめておく行為です。

グループでリフレクションを行う際も、いきなりその場で言動を振り返ってもうまくいきません。

あらかじめ、5W1Hを意識してわかりやすく言語化してもらえば、本番もスムーズにいきます。

ファシリテーターを置くとよりうまくいくこともある

グループでリフレクションを行う際、全体を取りまとめる“ファシリテーター”を置くとよりスムーズに進みます。

ファンシーリテーターとは進行役という意味ですが、参加者に対して話しやすい雰囲気を作ったり発言を易しく促したりする役目も担います。
ファンシリテーターは、リフレクションの目的ややり方を熟知し、自分も経験がある方にお任せするといいでしょう。

リフレクションを実施する際の注意点

最後に、リフレクションを実施する際の注意点を紹介します。

実施する際の参考にしてください。

失敗や問題点を指摘しない

リフレクションは、あくまでも自分の行為を客観的に振り返る行為です。

自分の失敗をあげることもありますが、それを出席者が指摘するのは控えましょう。

例えば、プロジェクトがうまくいかなかったことを振り返った際、「あなたが今振り返ったあれが原因だったのでは?」と指摘すると、誰も素直に振り返りができなくなります。

出席者を責めない

リフレクションを行うと、自分の反省点ばかりがあがるケースもあります。

特に、新入社員研修でリフレクションを行うと反省点が集中的に上がることもあるでしょう。

その際「あなたがそのような態度で仕事をするから、失敗する」というように、出席者を責めてはいけません。

失敗も成功も客観的に振り返るのが、リフレクションの目的です。

失敗を責めるばかりでは、だれもリフレクションで素直になれなくなります。

アドバイスをしない

メンバーとマネージャーが一緒にリフレクションを行うと、ついアドバイスをしたくなることもあるでしょう。

しかし、リフレクションはあくまでも自らの気づきを促すことが目的です。

リフレクションを行なうとき、マネージャーや先輩がメンバーに向けて積極的にアドバイスをすれば、リフレクションは意味を成さなくなります。

リフレクションが継続できる仕組みをつくる

リフレクションは一回やっただけでは意味がありません。

継続的に行なう仕組みを作りましょう。

最初はグループで半年に一度行なう、と決まりを作るなど工夫してください。

リフレクションはすべての従業員を対象に定期的に行う

今回は、リフレクションのメリットや目的を紹介しました。

リフレクションは自主性を高める効果が期待でき、人材育成の有効な手段になり得ます。

しかし、反省や自省と一緒にしないなど注意点もあります。

導入する際は、リフレクションの目的をしっかりと定めてから実施しましょう。

reviiコラム編集部

revii(リービー)のサービス企画・運用に携わるメンバーが、組織改革やマネジメント育成、1on1ミーティングなどで役立つ情報・HowToを発信しています。
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