MBOとは
MBOとは目標管理する制度を意味し、Management By Objectivesの頭文字を取った略称です。
マネジメント分野で近年脚光を浴びている経営学者ピーター・ドラッカー氏が、著書現代の経営で発表したことで知られています。
MBOは、組織目標に沿って社員が個人目標を設定し、その進捗や達成度合いにより人事評価を決定するマネジメント方法です。
社員は、目標を達成するために日々の業務に取り組み、自己統制しながら目標管理を社員自身で行います。
MBOを導入する3つのメリット
労働行政研究所によると2022年の人事労務諸制度の実施状況調査では、MBOを導入している企業は78.4%におよびます。
引用:WEB労政時報『人事労務諸制度の実施状況【前編】』
では、実際に目標管理が明確なMBOは、導入したらどのようなメリットがあるのでしょうか。
MBOを導入するメリットは下記の3つです。
- 人事評価ができる
- 社員の能力開発や人材育成ができる
- 社員のモチベーション向上が期待できる
人事評価ができる
MBOは目標達成度を可視化するため、達成度合いを報酬や人事評価に直結できます。
目標設定にルールはなく、定性的や定量的などさまざまな組み合わせで設定が可能です。
そのため、社員1人ひとりに合った目標設定で、適切な評価ができるでしょう。
社員の能力開発や人材育成ができる
MBOにおける個人目標の設定は、現状のレベルより少し高いレベルでの目標設定をします。
そのため、社員は目標達成のために工夫や努力、必要な知識の習得など自主的にスキルアップを行いながら取り組みます。
このようにMBOは、自主的に社員の能力開発を促すため、人材育成が行えるでしょう。
社員のモチベーション向上が期待できる
MBOは、組織目標とリンクしているため、個人目標を達成すると社員は組織に対する貢献性も実感できます。
組織の業績に寄与すると、会社やマネージャーから認められ社員の自尊心が満たされます。
そのため、社員のモチベーション向上につながるでしょう。
『MBO (目標管理)とは?メリットと注意点をOKRとの違いを参考に紹介』
MBOの導入、実施の流れとは?
MBOは目標を定め取り組むだけでは、導入する意味をなしません。
ここでは導入し実施する際の流れの4ステップをご紹介します。
- ステップ1:組織の目標を設定する
- ステップ2:組織目標に沿って個人目標を設定する
- ステップ3:MBO期間中、マネージャーが進捗を管理する
- ステップ4:MBO期間後、評価、フィードバックを行う
ステップ1:組織の目標を設定する
MBOの基点は組織の目標であるため、まず経営目標を決定し会社全体に共有する必要があります。
なぜならMBOは、社員が個人目標を設定する際は、組織目標の達成に貢献できるかを基に設定するからです。
組織目標を軸としてMBOを運用するため、まずは組織の目標を設定しましょう。
ステップ2:組織目標に沿って個人目標を設定する
組織目標を会社全体に共有したうえで、個人目標を社員自身で設定します。
どうすれば企業に貢献できるか、どのような努力すれば目標を実現できるかなどを自分ごととして目標を設定します。
それにより、社員自身で立てた目標を基に自主的に行動できるでしょう。
ステップ3:MBO期間中、マネージャーが進捗を管理する
MBOの期間中は、日々の取り組む行動などは社員自身で管理しますが、個人目標の進捗はマネージャーと共有し一緒に管理します。
1on1ミーティングや定期的な面談で、困っていることや必要なサポートはないか確認します。
このようにMBO期間中の進捗や管理、目標の修正などを行いマネージャーは社員が前向きに取り組めるようフォローしましょう。
ステップ4:MBO期間後、評価、フィードバックを行う
MBOの期間が終了すると、マネージャーや評価者は評価とフィードバックを行います。
評価をメンバーに伝える際は、評価の理由や成長した点、課題や改善点など丁寧なフィードバックが重要です。
その際は、次のMBOの目標に向けてメンバーのモチベーションを上げ、次につながる働きかけを行いましょう。
『MBOの目標管理と正しい運用方法とは?達成する目標設定のポイント』
MBO評価の方法とは
MBOの評価の方法は、一般の人事評価と同じでいいのでしょうか。
ここでは、MBOの評価方法を解説します。
「評価しているが、評価方法が合っているか不安」など、評価を行う管理職の方はぜひ参考にしてください。
MBO評価の目的
MBOにおいて人事評価をする目的は、下記の4つです。
- MBOの成果で昇進・昇給を適切に行う
- MBOの結果で社員の能力を把握する
- MBOで円滑な組織風土を形成する
- MBOで社員のモチベーションを向上する
MBOの結果で昇進・昇給を適切に行う
一般的な評価方法では、評価する側の主観や個人的な感情が反映されることも少なくありません。
しかし、MBOを利用した人事評価では、社員自身で目標管理し自己評価を基に行うため、公正な評価が有効です。
MBOの結果で社員の能力を把握する
MBOの結果から、成果・能力・情意など多角面的な評価で、能力レベルの正確な把握が可能です。
それにより適材適所への人材配置が可能となり、会社全体の業績向上が実現しやすくなります。
MBOで円滑な組織風土を形成する
社員に対し評価基準の明確化で、会社の方向性を提示できます。
明確な評価基準は、個々のレベルで会社の方向性を認識できるため、社員は会社から何を求められているかはっきりと理解できるでしょう。
MBOで社員のモチベーションを向上する
MBOの成果が給与や昇進に反映されると、社員のモチベーションの向上が期待できます。
公正な人事評価を受けた社員は、会社へ安心感を抱きエンゲージメントが高くなるでしょう。
MBO評価の要素とは
MBOにおける人事評価では、成果・能力・情意の3つで構成されています。
ここでは、各観点でどのように評価するのかご紹介します。
成果評価
成果基準とは、売上や業績など成果に関する評価です。
会社への貢献度を目標達成率や利益率など、具体的な数字に基づき評価します。
成果基準は成果を評価するため、プロセスや目標達成に行った取り組みなど、成果までの背景は一切考慮されません。
能力評価
能力基準は、業務を進めていく過程で身につけた能力の評価です。
例えば業績が同じでも、マネージャーにフォローをしてもらい達成した社員と、1人で業務を遂行し達成するまで工夫や努力しスキルを上げた社員では、能力に差が生まれます。
そのため、この評価観点は成果までのプロセスや途中過程の難易度が評価基準です。
情意評価
情意評価とは、業務に取り組む姿勢を評価するものです。
具体的には下記があります。
- 規律制:会社のルールを守っている、マネージャーの指示に沿って行動している
- 協調性:周囲と協力して業務に取り組む
- 積極性:自分から行動を起こす
- 責任性:与えられた仕事を最後までやり切る
この情意評価は、ほかの成果評価・能力評価に比べると、評価する側の主観が入りやすいため注意が必要です。
そのため、マネージャーや社員自身だけで評価をせず、チームメンバーや日頃関わる人の評価も集めるとより正確な評価が可能でしょう。
MBO評価シートの書き方と注意点
MBOの評価方法の特徴として、まず社員が自己評価を行い、その後マネージャーなど評価者が評価します。
ここでは、両者それぞれの評価シートの書き方と注意点をご紹介します。
メンバーが行うMBO評価
メンバーが自身で行う評価は、マネージャーや人事評価者にアピールできるチャンスとも言えます。
評価シートの書き方やポイントを押さえ、MBO期間中の努力や取り組みを正確に伝えてもらうようフォローしましょう。
具体的にわかりやすい表現で書く
メンバーが行う自己評価シートは、マネージャー、人事評価者など複数人が閲覧します。
そのため、誰が見ても同じように理解ができるよう、具体的で簡潔な書き方が重要です。
例えば、「目標売上を達成した」と記入するのではなく、「目標売上100万円に対し95%達成した」など、具体的な数字や取り組んだ内容を明記しましょう。
主観的ではなく、客観的に書く
評価してほしいあまり、ただ取り組んだことや努力したことのみを記載しても意味がありません。
評価してほしい要望を書くのではなく、どのような取り組みをしてどのような結果につなげたかを客観的に書くことが重要です。
前向きな表現を心掛ける
自己評価シートに書く際は、ポジティブな表現を意識します。
大きな失敗をした場合や目標の未達成が続き結果がなかなか出せていない場合では、自分を過小評価してしまいがちです。
しかし、結果が出ていない時期だからこそ、次にどうつなげるか前向きな表現を心掛けるようメンバーに伝えましょう。
自己評価シートでは、反省や謝罪などを書く場面ではないので注意してください。
自己評価は、1段階高く書く
自己評価は、つい遠慮して評価を控えめにしがちですが、より高い評価をもらうためには自分が思っているより1段階高く評価します。
なぜなら、マネージャーや評価者がメンバーを評価する際は、自己評価を基に評価する場合が多いためです。
例えば、自己評価が3であれば、2〜4で評価されます。
よって、自己評価を3から4にすると、3〜5の評価を得られる可能性が高くなるでしょう。
ただし、あまりにも自己評価が現状とかけ離れた評価にしてしまうと、自分を客観視できていないと解釈される恐れがあるので注意が必要です。
評価者のMBO評価シート
マネージャーや人事評価者が評価シートを書く場合は、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。
メンバーの信頼やモチベーションを左右するため、ポイントを押さえて参考にしてください。
客観的な視点と平等な基準で書く
自己評価シートの書き方でもご紹介しましたが、本人以上にマネージャーにも客観性が求められます。
成果・能力・情意の3つの観点から公平に評価シートに記入しましょう。
また、コメントを記載する際も注意が必要です。
メンバー同士やチーム間で比較する表現や個人を否定する表現は、決して行ってはいけません。
他者との差を指摘したり、個人的な感情を交えることは不適切なので注意しましょう。
よかった点と課題点のバランスに注意する
よかった点と、課題点・問題点・改善点などはバランスに注意して書くことをおすすめします。
仮に、マイナス評価が多い評価シートになってしまうと、社員のモチベーションの低下や自信損失につながる恐れがあります。
そのため、プラス面でマイナス面をカバーする書き方を心掛けましょう。
具体的に何を評価したのかわかりやすく書く
抽象的な表現ばかりの評価シートでは、社員のモチベーションを下げるかもしれません。
そのため、「MBO期間中は、これを評価しました」とひと目でわかるように表現しましょう。
数字や取り組み内容を具体的に指摘し、評価の根拠を示すとより伝わりやすくなります。
メンバー自身が気づいていない点を示す
MBOの評価では、メンバー自身が気付いていない弱点や強みなどをマネージャーが本人に伝えることも重要です。
自分では当たり前だと思っていたことを、第三者に指摘されることで大きな成長につながります。
MBO評価シートの書き方3つのポイント
最後に、評価シートの書き方のポイントを3つご紹介します。
自己評価の場合、評価者が評価する場合の両者に使えるため、ぜひチェックしてください。
具体的な数字を用いる
数値での評価が可能な場合は、なるべく具体的な数字を用いて表しましょう。
なぜなら、基準があいまいな評価結果では、納得が得られない恐れがあるからです。
定量化が難しい項目は、達成条件を示す
職種や業務内容によっては、定量化できない場合があるかもしれません。
その場合は、あらかじめ明確な達成条件の設定を行うことで、適切な評価が可能です。
数値化しにくい業務の場合、ゴール設定があいまいで被評価者と評価者の間で認識の相違が発生してしまいます。
このような事態にならないためにも達成条件をあらかじめ取り決め、事前に共有する必要があるでしょう。
結論から先に書く
評価シートを書くうえで、まず結論から書きはじめましょう。
結論の後に「なぜなら」と続くような形が、より読みやすくなります。
評価シートは誰が見ても同じ解釈ができるよう、読みやすさを意識した構成で書きましょう。
反省点と改善点を明確にし、来期のMBOの目標につなげる
MBOを取り入れるうえで、人事評価は非常に大切な役目です。
今回ご紹介したMBOの評価方法や評価シートの書き方、伝えるべきポイントなどを理解し、人事評価に活用してください。
継続してほしい点、改善してほしい点などを伝え評価を正しく行うことで、社員の能力アップやモチベーションアップにつながります。
評価後は、さらにレベルアップした来期のMBOの目標立てを行い、さらなる人材育成に取り組んでください。