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導入の効果を実感する企業が多い360度評価とは?詳細を解説

2023年01月18日
2023年01月18日
トヨタ自動車株式会社、アイリスオーヤマ株式会社、住友林業株式会社。

誰しもがその名を知る有名企業が導入し、効果を実感しているのが360度評価です。

6割近くにもなる国内の企業が導入している360度評価について、くわしく解説しています。

ここのところ、「360度評価」ということばを多く耳にするようになったのではないでしょうか。

(株)シーベースが2022年に公表した調査の結果によると、全企業の6割近くが360度評価を導入しているのです。

参考:『シーベース 「データでわかる! 360度フィードバック導入状況」調査結果の第一弾を公開』

トヨタ自動車株式会社のような5,000名以上の従業員を有する大きな企業に絞ると、7割弱にもなるといいます。

360度評価とは?

360度評価とは、最近までどの組織でも当たり前とされてきた仕事のやり方を大きく変えた評価の方法です。

360度評価とはまったく異なる考え方が、かつては常識とされてきました。

従来、評価する立場にあった人たち(マネージャー・人事部や人事課に配属されている人)が、評価する側に立つのは360度評価でも変わりません。

彼らに加えて、同僚やメンバーまでもが評価する側に加わる点で斬新なのです。

常識を覆した理由とは、いったいなんでしょうか?

導入増の背景【1】

斬新に思える360度評価ですが、日本に入ってきたのは50年も前のことでした。

では、急に注目されるようになってきたのは、なぜでしょう。

契機となったのは、リモートワークの増加でした。

マネージャーが、メンバーの働きぶりを常に見れない新しい働き方です。

2020年あたりで、いきなりの導入を余儀なくされた企業も多いでしょう。

リモートワークでは、従来のようにメンバーの勤務態度を参考に評価することはできません。

まず考えられたのが、成果主義の比重を大きくする評価の方法でした。

成果主義に重きを置けば、リモートワークの問題をほとんど解決できると考えた企業も、同じく2020年ごろにはいました。

しかし、成果主義には欠点もあります。

自身の成果アップのみを考える従業員は、チームプレーをおろそかにするかもしれません。

条件面の差を考慮するのも、成果主義では非常に困難です。

それほどの努力をしなくても成果を出せる職場があれば、非常に優秀な従業員がいくら頑張っても、成果を上げるのが難しい職場もあるのです。

導入増の背景【2】

リモートワークが増加する以前から日本の企業が抱えていた問題も、背景にあると言っていいでしょう。

マネージャーや人事の担当者のみで、公平な評価を客観的にするのは困難な状況となっていたのです。

バブル期には、世界的にもてはやされた年功序列や終身雇用。

かつては日本的経営の象徴であり強みとされていた制度は、リモートワークの増加より以前から崩れはじめていました。

バブル崩壊で経営の厳しさが増した国内の企業は、制度の廃止のみでは済まさず、管理職の削減にも乗り出します。

さらなるコスト抑制が目的でした。

メンバーの数ばかりが増え、管理する側の人数が減ると、メンバーひとりに対してマネージャーが費やせるコミュニケーション時間も減らさざるを得ません。

その上、フラットな組織が理想とされるようにもなっていました。

リモートワークを各所で導入するようになったのは、そのさなかです。

縦のつながり(マネージャー⇔メンバー)も横のつながり(同僚⇔同僚、自部署⇔他部署)も、希薄となる一方でした。

いくら優秀な担当者でも、公平で客観的にメンバーを評価するのは、難しいどころではなかったでしょう。

360度評価の導入で得られるメリットとは?

厳しい競争に毎日さらされている企業が360度評価を導入しようと考えるのは、メリットが大きいからにほかなりません

次に、導入によるメリットを考えます。

(1)客観性の確保

人事部の担当者が従業員の評価には関わらない会社では、ひとりのマネージャーがメンバーの評価をしていました。

評価する側の人数が少なければ少ないほど、評価する側の主観が評価に色濃く反映されます。

マネージャーひとりが評価する企業で、マネージャーの人を評価する力が低ければ、適正に評価されないメンバーが多く生じるのは想像に難くないでしょう。

人事部が関わったとしても、評価する側の人数は非常に少なくならざるを得ません。

360度評価は、“多面評価”とも呼ばれます。

同僚なども加わり、より多くの人たちからの評価が実施、平均化されれば、より客観的な評価へと近づけるのです。

(2)評価される側のすべてを把握できない問題の排除

部署を横断するプロジェクトが複数あり、マネージャーとメンバーが異なるプロジェクトに携わっているようなケースを考えてみましょう。

マネージャーがメンバーが関わる業務の全容を把握するのは難しいです。

メンバーの日々の業務の大半を把握できていないマネージャーからの評価を素直に受け入れられるメンバーが、果たしてどれほどいるのでしょうか。

また、リモートワークを導入する企業が増えたのは、コスト削減で管理職も削減されていた時代でした。

ただでさえ評価される側の多くを管理できなくなっていた状況が、さらに顕著となってしまったのです。

そのうえ転職が、自身のキャリアを傷つけにくい時代ともなりました。

自分の仕事ぶりをいつも見ている人から評価されるべきという不満が募れば、ただちに退職していっても不思議ではないでしょう。

ひとりの人材を育て上げるのに、企業は多大なコストをかけています。

360度評価とは、コストが水疱と帰すのを防いでくれる可能性を持つ評価でもあるのです。

(3)評価される側の納得

多くの企業が360度評価を導入するようになったのには、評価される側からの納得が得られやすい点にもあります。

ほとんど一方向からの評価と言っても過言ではない評価の手法が、近年まで用いられてきました。

評価する側の能力がたとえ十分だったとしても、あくまで一方向から見た評価でしかありません。

別名・多面評価の360度評価は、さまざまな方向から見た評価を集め、各数値を平均化します。

マネージャーの目には触れない、しかも有益な評価の情報も多数集められます。

評価される側も、評価には納得するケースがほとんどです。

適切に評価されていると感じた従業員の職場に対する信頼や組織へのロイヤリティー(忠誠心)は自然と向上します。

仕事に対する意欲も増大するでしょう。

(4)コミュニケーションの活性化

仕事への意欲が増せば、職場でのコミュニケーションを多く図るようになるのが人間です。

ところが、リモートワークが導入される以前でも、組織内でのコミュニケーション不足を感じている企業は少なくありませんでした。

企業内のすべてで、雰囲気が暗くなりがちだったのです。

これでは、生産性や情報の共有への悪影響にもつながりかねません。

360度評価では、評価される側に対しての定期的フィードバックが重要とされています。

しかし、マネージャーからメンバーへのコミュニケーションは取りやすいとされている一方で、リモートワーク導入増などが原因となり、上下間のコミュニケーションは減る傾向にありました。

360度評価の導入後には、定期的なフィードバックで、マネージャーとメンバーのコミュニケーション活発化も期待できます。

(5)改善点の気づきを与える

360度評価とは、評価される側にフィードバックされた際、納得して受け入れるケースの多い評価です。

同僚やほかの部署に配属されている従業員のみならず、メンバーや顧客にまで評価をさせます。

公平性が、相当に担保されると考えていいでしょう。

従来の評価では信頼性のなさから、素直に受け入れられないケースが少なくなかったため、フィードバックを自身の改善に役立てようとはしない人も多かったのです。

360度評価とは、気づきを促す評価とも言えるでしょう。

(6)管理職の育成

360度評価で評価の対象となるのはすべての従業員です。

管理職も例外ではありません。

360度評価の導入により、管理職が自身の行動を客観的に見つめ直すようになるのを期待できます。

評価はフィードバックされ、改善点の気づきが与えらます。

管理職が気づかなかった点に気づいて、自ら改善するようになるのです。

360度評価とは、管理職の育成につながる評価の方法であるとも考えられます。

(7)メンバーの組織に対する信頼がアップ

マネージャー自身では気づかず、指摘された点を改善していると、メンバーはその姿を目の当たりにするかもしれません。

マネージャーや組織に対するメンバーの信頼性が向上する可能性もあります。

(8)自身の弱点まで明確に認識

従来の一方的な評価で、本人が意識していなかった自身の強みを指摘されたとしても、喜んでそのまま受け入れるのではないでしょうか。

逆に、弱みは素直に受け入れにくかったりします。

360度評価とは、さまざまな人からの評価を平均化、フィードバックする方法です。

本人に対しても評価を下させます。

よって、本人が「問題ない」「できている」と日頃考えている項目について、周囲はそう思っていないケースもはっきりとしてきます。

フィードバックで、周囲との差を指摘してあげましょう。

「問題ない」と思っている点について、改善しようとすら考えない人の多いのが通常です。

しかし、あえて評価の項目が設けられ、はっきり口頭や文字で、差のある点について理論的に指摘されるとどうでしょう。

自然と改善する気になれるものです。

自身の評価と他者の評価に大きな開きがあったとしても、信頼性が高いため、ほとんどのケースでそのまま受け入れます。

そして、なぜそう評価されてしまったのか、自己を客観的に分析するようにもなります。

人から言われたとおりに動くのみではなく、自ら考えられる従業員が増えるのは、会社や組織にとってもプラスです。

(9)人間関係の可視化

リモートワークの導入などで、マネージャーは自らの部署でさえ完全な把握が難しいのが今の時代でしょう。

例えば、ひとりの従業員にのみ、それも同じ部署内の従業員たちから不当に低い評価が下されているようなケースを考えてみましょう。

いじめ・嫌がらせ・パワハラが生じている可能性を否定できません。

360度評価とは、人事部やマネージャーが部署内の見えない状況を把握するのに役立つツールでもあるのです。

360度評価の導入で生じるデメリットとは?

何事もメリットの裏には、デメリットがつきものです。

しかし、360度評価の導入や運用を間違えなければ、デメリットを受け入れてしまう機会を減らせます。

どのようなデメリットがあるのかを確認しておけば、導入や運用を誤るケースも少なくできるでしょう。

デメリット回避のためにも、360度評価の導入により生じうるデメリットをあらかじめ知っておくのは必要です。

今、自社の運営に360度評価を存分に活用できている企業も、デメリットを熟知した上で導入をはじめたのです。

(1)主観的な評価

従来は、評価の経験をある程度持つマネージャーなどが、メンバーを評価してきました。

それでも、マネージャーの主観を感じるメンバーが少なくなかったのです。

360度評価では、評価の経験がなかった人も評価する側になります。

ひどいときには主観どころか、本人の好き嫌いで人を評価する可能性も高まります。

嫉妬や足の引っ張り合いなど個人的な感情による評価は、組織にとってのマイナスにしかなり得ません。

(2)人間関係の悪化

同僚やメンバーからよくない評価をされたのが原因で、評価した側とされた側、両者の関係が悪化する可能性があります。

以前の評価でよくない評価をされたからといって、それぞれが悪い評価をつけ合うのも考えられます。

組織内で不信感が募るのも、組織のマイナスです。

(3)なれ合いによる評価

事前の話し合いで、お互いがいい評価をするようにしておくなど、談合するケースです。

実際を上回る評価が、多く生じてきます。

(4)仕事量の増加

これまで評価されるのみだった立場の人にも、評価という新たな作業が360度評価の導入で加わってきます。

評価の経験がない人への教育も必要です。

また、人事部や人事課でも各部署の評価をチェック、データ化する作業が増えます。

組織内の仕事量が、トータルで増えてしまうのです。

各部署が本来するべき仕事に差し障るほどとなってしまっては、元も子もないでしょう。

(5)厳しい教育の減少

マネージャーがメンバーを厳しく指導するのも、ときには必要です。

長い年月を経た後なら、「あのときしかってくれてよかった」と思えるメンバーがいるのかもしれませんが、

しかられたのを根に持ち、意図的にしかったマネージャーの評価を悪くする従業員もいるかもしれません。

よって、360度評価で悪い評価をされたくないマネージャーの中には、厳しい指導をやめてしまう人が出てくる可能性もあります。

360度評価の導入・運用・運用後までの流れ

メリットの多い360度評価にも、デメリットは少なからず存在します。

可能なかぎりデメリットは排除したいと誰しもが考えるでしょう。

360度評価の制度を綿密につくり、適切な順序でものごとを運べば、最大限のデメリット除外は可能です。

多くのメリットが得られると考えるからこそ、多くの企業が導入し、運用を続けているのです。

次に、導入までの流れを説明します。

人事の担当者が自社への適合性を熟慮

デメリットも“0”ではないのが360度評価です。
注目されているからといって、むやみに導入を決めてしまうのも問題です。

「そもそも自社に合っているのか?」などの根本的な点から、人事を担当する部署はよく考えるようにするのがいいでしょう。

従業員への説明

導入が決まれば、導入の意味を従業員にまず説明する必要があるでしょう。

1on1ミーティングでもいいのですが、全員に同じ内容を説明するのです。
研修の実施でも問題ありません。

説明では、主観の排除が非常に大切である点を力説するのがおすすめです。

なお、1on1ミーティングについては、以下の記事で詳しく説明しています。

1on1ミーティングの本来の目的とは?勘違いされやすい目的を徹底解説

そのほかにも、以下の点について伝えておくのが必要です。

    1. 評価表の詳細(設定されている項目・配布と提出の期限・記入のしかた)
    2. 基準やルール
    3. 評価の反映先
    4. フィードバックの方法(誰からの評価であるかわからないようにする)
    5. 今回を除く説明や相談の機会がある点
    6. 評価後

中でも意外と見落としがちな“3.”についての説明は、忘れないようにして下さい。

ライバルでもある同僚から評価を受けるとなると過剰に反応し、大きなストレスを感じる従業員もいるからです。

評価する側が集まり、研修後の話し合う機会を認めるのもいいでしょう。

評価表に設ける項目の具体例

360度評価に厳密な定義はありませんが、定性的な評価の項目も設けるべきです。

数値で表せる定量的な項目ばかりにしてしまうと、チームプレイをおろそかにする従業員が出てくる可能性があります。

執務態度の項目を多く取り入れたり、「よくわからない」などの漠然とした回答を設定したり、コンピタンシー(行動特性)についての項目としたりするなどの工夫が考えられます。

以下のように定性的な項目が少なくありません。

評価の作業に要する時間は15分ほど、項目数は30程度とするのが理想的です。

目標を達成する力

この項目内にはさらに次のような問いかけの文章を置き、5点満点5段階などで評価させるのも1つです。

  • 目標を実現するため、常に努力しているか
  • 目標を実現するため、具体的で効果的な計画の立案と管理ができているか
  • 目標を実現するため、社内外の情報の収集と分析ができているか
  • 実現が難しいと想定される目標でも、積極的に取り組んでいるか
  • 目標を実現するため、組織の輪を大切にしているか

コミュニケーション力

  • 相手のことばにしっかりと耳を傾けているか
  • 相手と考え方が違ったとしても感情的になることなく、冷静な対処ができているか
  • 業務上の上下、他部署、社内・社外を問わず、相手に敬意を払ったコミュニケーションが取れているか
  • 有益な情報を独占せず、共有できているか
  • 自身の考えを相手にわかりやすく伝えられるか

人材の育成力(管理職の評価に適した項目)

  • 適した目標をメンバーに与えているか
  • メンバーに対する評価は適正か
  • 業績を上げたとき以外でも、メンバーを褒めているか
  • メンバーを大切に扱い、育成できているか
  • 常にメンバーと建設的な話し合いをし、適切な目標を教えるなどサポートはできているか

健全な組織の構築力(管理職の評価に適した項目)

  • 率先して行動し、メンバーのモチベーションをアップできているか
  •  中期的・長期的な観点からの組織ビジョンを持ち、周囲の者との共有ができているか
  •  組織内のコミュニケーションが活発となるような場を設けているか
  •  組織ビジョンに沿った行動を自身とメンバーのどちらもが取れている状態をいつも確認できているか
  •  自身が担当する部署の業績が上がった際、全体の功績としているか

まとめ 360度評価のプラスとマイナスの両面を考慮

360度評価とは、従業員に気づきを促す有益な手法です。

しかし、「適切に導入・運用できれば」という条件付きです。

デメリットも存在し、下手をすると組織が悪い方向に進んでしまう原因ともなりかねません。

回避のためには、すべての従業員との密なコミュニケーションがとても大切です。

マイナスの芽は、見つけた段階で早めに摘み取るようにするべきでしょう。

幸いなことに360度評価は、組織内のコミュニケーション活発化にも有効です。

導入が、会社をプラス方向に進めるための第一歩と考えていいのです。

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