1on1ミーティングで従来の面談をしがち
1on1ミーティングと面談は、マネージャーとメンバーが1対1で対話するという共通点があります。
そのため、1on1ミーティングを従来の面談と同じような内容で実施してしまい、本来の効果を発揮できていない場合が多くあります。
なぜ、このような間違いが起きてしまうのでしょうか?
マネージャーの認識が不足している
面談では、今後の昇進や昇格、昇給やボーナスの査定に関わる評価、またはメンバーの業績や業務能力を評価することが主な目的としてあります。
そのため上下関係がはっきりします。
同様なやり方で1on1ミーティングを行ってしまうと、マネージャーが一方的に話の主導権を握り、メンバーはひたすら聞くといったミーティングになってしまうのです。
1on1ミーティングは、評価を伝える場ではなく対話する時間です。
マネージャーが1on1ミーティングの目的を再度認識することが重要になります。
メンバーが実施目的を理解不足していない
メンバーも1on1ミーティングの実施目的を理解していないと、面談と同じように1on1ミーティングを自分の評価を受ける場と勘違いし、自分の意見を伝える場ではないと間違った認識をしていることがあります。
マネージャーが目的をしっかり伝えることで、1on1ミーティングの目的を理解し、有効な時間に変えられるでしょう。
1on1ミーティングと面談の違い
1on1ミーティングと面談は、実施する内容にどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、1on1ミーティングと面談との違いを5つのポイントに分けてご紹介します。
面談と1on1ミーティングの目的とは
一般的な面談の目的は、下記の通りです。
- 評価面談
- 目標設定面談
- 進捗管理
- 問題解決
特徴は、個人の一定期間の評価目標の進捗状況や達成の確認、フィードバックです。
面談は、対話をするより、伝えることが主に行われます。
一方1on1ミーティングの目的は、メンバーの業務遂行における効率を上げることです。
そのために下記のアプローチを行います。
- 業務サポート
- キャリアの自律
- メンバーの成長の促進
- 日々の悩みや課題解決
- 信頼関係の構築
1on1ミーティングでは、マネージャーとメンバーが自由に対話し密接なコミュニケーションを図り、信頼関係が構築され離職率低下にもつながります。
またメンバーが気持ちよく働けるよう、お互いの考えをすり合わせ、サポートすることが目的です。
さらに組織として成長し生産性を上げることを目標とします。
面談と1on1ミーティングの実施頻度とは
一般的な面談は、基本的に半期、または2半期に1度の頻度でその期間の結果を話し合う時間です。
1on1ミーティングは、週に1度、少なくとも月に1度の短いサイクルで定期的に実施します。
1on1ミーティングは頻繁に実施するため、短期間での個人の行動目標を設定し、日々の細かい進捗や変化などフィードバックできます。
さらに業務改善も都度、細かく行えるため、業務効率化に期待できるでしょう。
一般的な面談 | 半期、または2半期に1度 |
1on1ミーティング | 週に1度、少なくとも月に1度 |
メンバーとマネージャーの立ち位置
面談は、上下関係に基づき評価や問題解決、指示をメンバーに伝えるため、マネージャーが話す場面が多くなります。
マネージャーが考える解決策を一方的に伝え、メンバーが実行します。
メンバーは指示を受け取るのみで自律的に考える場ではありません。
また、業績評価の結果を伝えるなど、過去の話になることも特徴です。
一方1on1ミーティングは、フランクな雰囲気でメンバーの日常の悩みや不安、業務に関する課題などを積極的に引き出し、傾聴します。
上下関係ではなく同じ目線を心掛け、横の関係で支援し、メンバーが話したいテーマに基づきメンバーが話すことが中心です。
マネージャーのフィードバックも評価や判断を入れず、メンバーに対し感じたことを伝えます。
業績や結果など過去の話ではなく、未来志向で今後メンバーの未来について話すことが多いです。
一般的な面談 | 上下関係に基づき評価や問題解決、指示をメンバーに伝える |
1on1ミーティング | 上下関係ではなく同じ目線を心掛け、横の関係で支援 |
メンバーのメリット
面談でのメンバーのメリットは、実績や結果を評価してもらうことです。
昇給や昇進、人事に関わる評価や、中長期の目標設定を行います。
一方1on1ミーティングは、メンバーが話したいテーマをメンバー主体で対話するため、日頃感じている課題や悩みなどを1人で抱えず定期的に解決できます。
マネージャーと一緒に課題に向き合い解決できるため、理解してもらえるという安心感から自分らしく前向きに業務に取り組み、能力を発揮できるでしょう。
また、マネージャーとコミュニケーションが増えると信頼関係が構築でき、キャリアアップなどのモチベーション向上が期待できます。
一般的な面談 | 昇給や昇進、人事に関わる評価や、中長期の目標設定 |
1on1ミーティング | 日頃感じている課題や悩みなど定期的に解決 |
1on1ミーティングのメリットとは
ここでは、1on1ミーティングを実施するメリットをご紹介します。
メンバーとの信頼関係を構築する
個人面談と違いフランクに話せる1on1ミーティングは、メンバーとより深いコミュニケーションが取れるため、メンバーの悩みや課題などがヒアリングでき迅速に対応できます。
このようにメンバーの課題を1on1ミーティングを繰り返すことで解決でき、マネージャーとメンバーの間に信頼関係の構築が期待できます。
さらにエンゲージメントが向上し、離職率の低下も期待できるでしょう。
メンバーに適切なキャリアアップを支援できる
1on1ミーティングではメンバーの性格やモチベーション、将来のキャリアプランなどを把握できるためメンバーの適性に配慮した対応が可能となります。
また、メンバーに働きやすい職場環境を提供できます。
そのため、メンバーは安心してキャリアアップのために取り組め、業績向上の効果も見込めるでしょう。
1on1ミーティングを成功させるコツ
続いて、面談との違いを理解したうえで1on1ミーティングを成功させるコツをご紹介します。
メンバーが話しやすい雰囲気づくり
繰り返しになりますが、1on1ミーティングはメンバーがメインで話してもらう場にする必要があります。
普段から、コミュニケーションがあまりない関係性や言いたいことが言えない雰囲気、またマネージャーが一方的な態度を取っている場合は、1on1ミーティングをいくら実施しても結果は出ません。
マネージャーは、メンバーに寄り添い心を開いて話しやすい雰囲気づくりをしましょう。
話すことが苦手なメンバーの場合は、アイスブレイクからはじめプライベートの楽しい話をしたり、マネージャーから自己開示をしたりするなど工夫が必要です。
1on1ミーティングに必要なスキルを習得する
1on1ミーティングの成功とは、メンバーの行動を成果につなげ、できることを広げ次の挑戦を引き出しメンバーの成長をサポートすることがあげられます。
そのために、マネージャーに必要なスキルは3つです。
- 傾聴力(コーチング)
- 承認力(フィードバック)
- 課題解決/提案(ティーチングスキル)
傾聴力(コーチング)
傾聴力は、真摯な姿勢でしっかりと最後まで聴く力のことです。
まず、メンバーの心の奥にある気持ちに寄り添い、何を伝えたいと思っているのか本心を理解します。
自分とは違うひとりの人間として、メンバーに関心を持ち話を聴きます。
どのような話も受け入れる受容と、話に対して寄り添う共感を心掛けましょう。
承認(フィードバック)
承認とは、メンバーのありのままを認めることです。
業務の結果や日々の業務に対しメンバーを褒めて、認めます。
それにより、メンバーはいかなる状況下でも結果を出すために適切な行動ができるようになります。
さらに遂行するための能力が、自分にあると認知できる自己効力感の向上が期待できるでしょう。
また、改善点を伝える際もメンバーの行動と結果を明確にしたうえで、マネージャーの意見を伝えます。
メンバーが自分の行動を振り返り、次に生かせるように手助けをしましょう。
課題解決/提案(ティーチングスキル)
メンバーを傾聴し、承認したうえで、メンバーの課題解決に取り組みます。
マネージャーが一方的に教えることや解決策をただ伝えるだけでは根本的な解決策になりません。
必要な情報や知識を伝え、解決策へ導きます。
メンバーの理解度を把握したうえで、自分で考えられるように促しましょう。
『1on1ミーティングで必要なスキルとは?スキルの磨き方もご紹介』
1on1ミーティングの失敗例とは
業務中に行う1on1ミーティングは、有意義なものにしなければなりません。
ここでは、1on1ミーティングの失敗例を5つご紹介します。
メンバーが自己開示しない
メンバーが自己開示しないと、メンバーの意見や状況を知ることができません。
そのため、マネージャーはメンバーが話したくなるような雰囲気作りを意識しましょう。
また、メンバーが話している途中で話の腰を折ったり、メンバーの意見を否定したりするとメンバーは、自己開示してくれなくなる恐れがあります。
チーム発足時は特に、自己開示が難しいケースが多いです。
その際は、マネージャーから自己開示を行い、メンバーも話しやすい流れにしましょう
雑談で終わってしまう
個人面談と違い1on1ミーティングは、フランクになんでも話す場でもありますが、メンバーのためにならない雑談だけで終わってしまうことは意味がありません。
雑談は、あくまでもブレイクスルーの目的として、メンバーの成長につながる内容がメインとなる1on1ミーティングが重要です。
ミーティングの準備不足
1on1ミーティングの失敗は、準備不足でも起こります。
そのため、マネージャーとメンバーで事前に議題やテーマを持ち寄り、ミーティング内容を決めます。
テーマがないと有意義な対話が行えないため、ミーティング当日までに必ず準備をしましょう。
マネージャーが一方的に話す
立ち位置でもありましたが、1on1ミーティングは上下関係ではなく同じ目線で対話します。
そのため、マネージャーが話したいことを一方的に話してしまってはミーティングの意味をなしません。
1on1ミーティングは、メンバーのための場であることを意識し、メンバーを主体に話してもらいましょう。
メンバーの満足感が高いミーティングが成功と言えます。
1on1ミーティングが業務に活かされていない
1on1ミーティングの目的は、メンバーの業務能力の向上です。
課題をミーティング内で完結して、普段の業務に反映されていなければその1on1ミーティングは失敗といえます。
有意義のある1on1ミーティングを行えても、メンバーの成果や業務に現れてるか継続して確認する必要があるのです。
『1on1ミーティングの進め方と結果が出やすい4つのコツとは?』
1on1ミーティングの心構え
ここまで、面談の違いと1on1ミーティングを成功させるコツをご紹介しました。
しかし、1on1ミーティングは従来の面談と違うため、1on1ミーティングに関する悩みは簡単には消えないでしょう。
ここでは慣れない1on1ミーティングを実施するための心構えをご紹介します。
はじめは完璧にできなくていい
1on1ミーティング実施を開始して、初めからスムーズに進めることは難しいです。
マネージャーは、1on1ミーティングの実施回数をこなしスキルを磨く必要があります。
メンバー1人ひとりとのコミュニケーションと、スキルを学びながら時間をかけてメンバーの成長のために試行錯誤していきましょう。
できることとできないことを伝える
課題解決のために、メンバーから要望があがることがあります。
マネージャーがすべてを解決することは、難しいでしょう。
その際は、お互いのニーズや要望を理解し合ったうえで、マネージャーが解決できることとできないこと、支援できることとできないことを正直に伝えることが重要です。
表面的に、無理に取り繕うだけでは信頼関係は築けません。
正直に透明性のあるコミュニケーションを心掛けましょう。
時間内に課題解決することが正解ではない
メンバーは、マネージャーに相談することで、その場でアドバイスをもらえると期待している場合があるかもしれません。
しかし、内容によってはすぐに回答できなかったり、マネージャー1人で解決できないこともあるでしょう。
その際は、すぐに明確な回答ができないことを正直に伝えます。
一緒に考えたり、時間をかけて解決するよう提案し、同じ立ち位置で一緒に悩み解決することが大切です。
メンバーは共感や寄り添ってもらうだけでも安心感につながります。
継続して実施すること
1on1ミーティングは、継続して実施することで効果が出やすくなります。
マネージャーの都合で実施が後回しになるなど、優先順位が落ちると、これまで築いてきた関係性に大きく影響が出てしまう恐れがあります。
まずは、1度スケジュールを決めたら必ず実行し、継続を心掛けましょう。
まとめ|実施後にメンバーがどう感じるかが違う
1on1ミーティングと面談の違いと、成功するコツについてご紹介しました。
面談は一定期間の評価目標の進捗状況や達成の確認、フィードバックを行い、マネージャーが一方的にメンバーへ伝える時間です。
1on1ミーティングは、メンバーの成長の促進のためにメンバーの悩みや課題解決に向けてメンバーがメインで話します。
面談と1on1ミーティングはそれぞれ実施後、メンバーがどう感じたかが大きな違いです。
一般の面談後は、実績結果や評価を受けるため、内容によっては満足、不満足に分かれるでしょう。
一方1on1ミーティングは、メンバーは考えや想いを伝えることにより、マネージャーに対して「自分を理解してもらえた」「話してよかった」と感じ、満足感につながります。
さらに、1on1ミーティングの実施を重ると、1人ひとりが自律的に成長することで、メンバー同士でも相乗効果が生まれ、生産性の高い組織になっていきます。
そのために、面談との違いを再度確認し、効果が出る1on1ミーティングの実施を目指しましょう。