1on1ミーティングが求められる背景
日本の将来では少子高齢化に伴い労働人口の減少がほぼ確実です。
それに加え、日本は人材競争力の低下も進んでいるといわれ、先進国の中でも下位に位置するようになってきています。
産業構造も、ものづくりからサービス業に変化している中で、人にしかできないクリエイティビティやホスピタリティのような力が求められています。
1on1ミーティングは、そういった人の生産性を上げるための1つの手段として、普及してきています。
1on1ミーティングが社会的に認知されている
ヤフー株式会社は、業績不振により組織に人が定着しない事象を改善すべく、働きがいや個人のやりがいを向上させるために1on1ミーティングを導入しました。
そのことが2010年代から書籍を中心に広まり、さらにコロナによりリモートでの働き方が急増し、ベンチャー企業から大手企業まで1on1ミーティングの実施が普及し認知されるようになりました。
働くことに対する価値観の変化
働き方に加え、働くことに対する価値観の変化もあります。
仕事と同様にプライベートも重視する働き方が増え、仕事への価値観が多様に変化しています。
自分の描くキャリアに対し、目の前の仕事がどのようにつながっているか、仕事に対しての納得感がモチベーションになる場合もあるからです。
そのため、マネージャーは、メンバーがなにを考え、どのようなキャリアを描いているのかなどの個性をとらえたコミュニケーションが求められています。
1on1ミーティングの得られる効果
ここでは、1on1ミーティングの必要性を踏まえ、導入した際の得られる効果の一部を紹介します。
メンバーの成長促進
1on1ミーティングでは、メンバーの課題や目標を明確にして成長を促し、業務遂行率を高めます。
定期的に振り返ることで、目の前の仕事や役割に加え、メンバーのキャリアアップや能力開発など、中長期的な育成のサポートにも有効です。
離職率低下
1on1ミーティングでは、業務に限った話の内容だけでなく、将来のビジョンや人間関係の不安などからモチベーションが低下しているメンバーを、フォローする時間でもあります。
1人で抱えることなく、問題を共有し一緒に解決へ取り組むことで、エンゲージメントが向上し、離職率の低下が期待できるでしょう。
1on1ミーティングの課題と失敗例
1on1ミーティングを導入しても、うまく活用できていない企業もあります。
ここでは、1on1ミーティングの課題と失敗例をご紹介します。
1on1ミーティングの目的が伝わっていない
1on1ミーティングの導入が上からの指令で決まり、現場では形だけのミーティングが行われているといったケースも少なくありません。
マネージャーがまず目的を理解し、メンバーに分かりすく伝えることが重要です。
業務に追われて、「1on1ミーティングをしている時間がない」「必要性がわからない」などの声に明確に答えられるように、導入時には丁寧に伝えましょう。
マネージャーばかり話している
メンバーの課題や問題をヒアリングしても、マネージャーが一方的にアドバイスしたり、メンバーがひたすら聞いたりだと、1on1ミーティングの意味をなしません。
まずは、マネージャーがメンバーの自己成長を促すマネジメントスキルを身に付ける必要があります。
1on1ミーティングが継続しない
導入しはじめは、日々の業務に追われ、ミーティングを忘れてしまいがちです。
そのため、実施が習慣化するような工夫が必要です。
スケジュールを繰り返しの設定にするなど、お互いが確実に実施できるよう日程が近くなったら声を掛け合い、確実に実施し継続しましょう。
1on1ミーティングで必要なスキル
効果的な1on1ミーティングをおこなうため、マネージャーのスキルが求められます。
おもに、下記の3つが必要なスキルです。
- 傾聴力(コーチングスキル)
- 承認力(フィードバックスキル)
- 問題解決/提案力(ティーチングスキル)
それでは、それぞれを詳しく紹介します。
傾聴力(コーチングスキル)
傾聴力とは、メンバーの話を真摯な姿勢でしっかりと最後まで聴く力です。
話を聴くだけではなく、メンバーの心の奥にある気持ちに寄り添ってメンバーが伝えたい内容とその本質を理解します。
ここで重要な点は、メンバーに好奇心を持つことです。
メンバーをひとりの部下としてではなく、自分とは違うひとりの人間として、その人となりに関心を持って話を聴きます。
「相手は、何を大切に想い仕事をしているのだろう」
「どのようなことでモチベーションを保っているのだろう」
「何に仕事のやりがいは感じているのだろう」
など、自分の主観で判断せずに、メンバーの立場にたち発言に耳を傾けると、メンバーへの理解が深まるでしょう。
さらに、傾聴のポイントは、どんな話も受け入れる受容と、話に対して寄り添う共感の2つです。
メンバーが、答えるまで辛抱強く待ち、先入観にとらわれず、話をしっかり傾聴することを心掛けましょう。
承認力(フィードバックスキル)
承認とは、メンバーのありのままを認めることです。
業務の結果や日々の業務に対する姿勢などを褒めて認めると、メンバーは自分ならできるという自己効力感が高まり、モチベーションの向上につながります。
しかし、やみくもに承認してもメンバーによっては、「結果だけを見ている」「本当に理解していない」など、誤解を招きかねません。
メンバーの計画に対しての行動と結果を明確にし、改善点などのマネージャーの意見を伝えます。
それによりメンバーが自分の行動を振り返り、次に生かす学びを見つける手助けができるでしょう。
承認をする順番とその具体例は以下の通りです。
- WHY(なぜ承認するのかを伝える)→メンバーのモチベーションを向上させ、成長を促すため
- WHAT(何を伝えるのか)→メンバーの具体的な言動からもたらされた結果
- HOW(どのように伝えるのか)→できるだけ迅速に、事実に基づいて簡潔に伝える
課題解決/提案(ティーチングスキル)
傾聴し、承認することで、メンバーの課題が見えてきます。
課題解決に向け必要な情報や知識をメンバーに伝え、次のアクションプランへのサポートもマネージャーに必要なスキルです。
メンバー自身で見つけた課題を、一緒に対策を考え、解決策へ導きます。
ここで注意する点は、先輩の姿を見て学ぶことが常識であるというマネージャーの一方的な考えを押し付けないことです。
メンバー1人ひとりの理解度の違いから、1度言われて習得することがなかなか難しい人もいるでしょう。
ティーチングスキルを磨くポイントは自分で考えられるように、段階的に促すことです。
下記の順で、マネージャーが教えるのではなく、メンバーに考えてもらうように促します。
考えてもらうように伝える順番
- HOW(仕事のやり方)→どのようにやるのか
- WHAT(仕事の成果物)→何をやるのか
- WHY(仕事の目的)→なぜやるのか
教えすぎは、HOWを細かく指示しすぎるため、メンバーの理解度を把握したうえで、メンバーがある程度慣れてきたら、WHATだけを示し、HOWは任せてみましょう。
その他のスキル 質問力
メンバーに気づきを与えるには、ティーチングスキルに加え、質問力も必要です。
最終的な答えに自らたどり着くよう、導く質問を投げかけます。
メンバー自身が自分で答えに導く能力を身に付けることにより、課題に対して前向きに取り組めるでしょう。
1on1ミーティングスキルを磨くには?
ここでは、スキルアップの方法を3つ紹介します。
マネジメント職向け研修
人材育成に特化した、マネジメント職向けの研修を受講し、傾聴スキルや質問スキルなどを学びます。
さらにマネジメント職同士の情報交換も有効で、どのような工夫をしているか、どんな点で悩んでいるのかを共有するとスキルアップへ効果的です。
コミュニケーションスキルを磨く
ミーティングの場面だけではなく、日々のコミュニケーションからスキルを磨く方法もあります。
すぐに使える3つの方法をご紹介します。
ミラーリング
メンバーのしぐさや行動、言動をミラーのように真似ることです。
同じしぐさをすることで、相手は親近感を持ち、心を開きやすくなります。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、謂わゆるオウム返しのことです。
メンバーの言葉をそのまま復唱することで、メンバーは承認されたと感じ不安を解消する効果があります。
パラフレージング
メンバーの言葉を違う表現で言い直すことをさします。
メンバーは、話を深く理解してくれていると感じ、心を開きやすく話が進むでしょう。
いざ1on1ミーティングで、上記のようなテクニックを取り入れようとすると、会話がぎこちなくなり話の内容に集中できません。
日頃から、業務上の会話や、なにげない雑談に取り入れ相手が話しやすい雰囲気を作ると、ミーティングでもスムーズにおこなえるでしょう。
効果的な1on1ミーティングのコツ
最後に、効果的な1on1ミーティングのコツを3つご紹介します。
メンバーにテーマを決めてもらいメンバー主体で進める
1on1ミーティングで話すテーマは、毎回メンバーに事前に決めてもらいましょう。
それによりメンバーは自主性と、ミーティングに対し責任を持って取り組めます。
またあらかじめ話す優先順位とゴールを決めることで、限られた時間内で充実した内容にできます。
メンバー自身に内省と考察を促す
繰り返しになりますが、一方的にアドバイスや答えを伝えては、メンバーの成長になりません。
傾聴力、承認力、提案力の3つのスキルを活かし、メンバー自身で課題を見つけ内省するよう誘導します。
たとえ、メンバーが出した答えが間違っていても、否定せずになぜそう思ったのか、メンバーの視点から寄り添いながらフォローしましょう。
メンバーから話が出ない場合は、マネージャーから自己開示をする
メンバーが何を話していいのか理解していない場合や何を頼っていいかわからないなど、まだ信頼関係が築けていないと、話が詰まる場面もあるかもしれません。
まずは、1on1ミーティングがどういった場であるのかを改めて説明し、マネージャーがメンバー自身に何ができるのかを開示します。
1on1ミーティングスキルを習得し、メンバーに関心を持ち続けよう
1on1ミーティングの目的の1つである人材マネジメントにおいて、マネージャーのスキルは必須となります。
今回ご紹介した、1on1ミーティングに必要なスキルは3つです。
- 傾聴力(コーチングスキル)
- 承認力(フィードバックスキル)
- 課題解決/提案(ティーチングスキル)
まず傾聴するには、メンバーに関心を持つことからはじまります。
日頃から、どういう言動をしているのかを観察し好奇心を持つことで、メンバーへの理解が深まりコミュニケーションも弾みます。
理解度を高めたうえで、傾聴力、承認力、課題解決/提案力のスキルで課題解決へ導き、メンバーの自発的な育成へつなげましょう。
日々の1on1ミーティングで効率的に結果を出すために、マネージャーのスキルアップを今一度、見直してみてはいかがでしょうか。
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