組織運営の改善策として、国内外の企業で導入され始めている1on1ミーティングですが、
「何から話せばいいかわからない」「雑談だけで終わってしまう」「メンバーとの距離が縮まらない」
など、進め方や話す内容などに悩んでいる方も多いのではないのでしょうか。
この記事では、1on1ミーティングを導入したが、うまく活用できていないと感じている方向けに、効果が出やすい進め方のポイントをご紹介します。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、ビジネスにおいてメンバーとマネージャーが個別に対話するミーティングです。
人事考課面談と違い、メンバーの話をメインとし短い期間で継続的に実施されています。
アメリカのシリコンバレーにあるIT企業やベンチャー企業が発祥のマネジメント方法です。
在宅ワークやリモートワークの普及に伴いヤフーなどの大手企業を始め、国内企業でも取り入れられるようになりました。
導入する意味や効果は?
1on1ミーティングを導入する意味は、メンバーの成長を促進しモチベーションアップを高めることです。
社員一人ひとりの強みや状況を把握し、課題に向けた目標設定を常時行うことでそれぞれの能力の向上を図ります。
このように人材育成とチームの活性化を促進し、企業の生産性を高めさらにメンバーとマネージャーの関係性の構築が離職防止にもつながります。
効果的な1on1ミーティングのコツ
このパートでは、次のような方に向けて1on1ミーティングのコツをご紹介します。
- 1on1の効果が出ているかわからない
- ミーティングの内容を充実させたい
実施する前に準備が大切
1on1ミーティングではを効果的に実施するためには、話すテーマやトピックを決めておくなどの事前準備が大切です。
お互いに貴重な時間を割いているので、雑談や業務、キャリアに関する話し合いをしていきましょう。
対等で話しやすい場を構築
マネージャーとメンバーでは上下関係があることから、1対1で対話をするとマネージャーだけが話してしまい、メンバーが聞き役に徹してしまう場合が多いです。
1on1ミーティング中は尊敬し合えるような、対等な関係の構築を意識しましょう。
しかし、いきなり対等な立場を求められてもメンバー側は困惑してしまうかもしれません。
まずは、マネージャーからメンバーに自己開示をし、メンバーの心理的安全性を担保しましょう。
メンバーが話しやすい雰囲気を作ることが重要です。
1on1ミーティングの4つのコツ
マネージャーとメンバーにとって、有意義な時間になり継続しておこなうために1on1を実施する際の4つのコツをご紹介します。
コツ1:実施する目的を伝える
まずはメンバーに1on1ミーティングを実施する旨を伝えます。
「業務に追われて時間が取れない」「めんどくさい、話すことは特にない」「話をしてもわかってもらえない」
など実施に対して否定的な意見も出てくるかもしれません。
何のために1on1ミーティングを行うのか、目的を先に伝えるとスムーズに実施できます。
メンバーが実施する目的の理解をしていれば、「マネージャーは自分を理解しようとしてくれている」と想いが伝わるからです。
このように目的の共有は重要のため、まずは全体に目的を発信し、1on1ミーティングが始まったら改めて個別にも伝えることをおすすめします。
コツ2:頻度や時間、曜日を決める
人事評価面談の実施頻度は半年に1度程度ですが、1on1ミーティングでは短い期間でコンスタントに実施します。
週に1回、最低でも月に1回実施し、1回の実施時間は30分程度が理想です。
導入しはじめのころは、定着しておらず実施を忘れるかもしれません。
そうならないためにも、
- 毎週○曜日は○○さんのミーティングの日
- 月末の○○日までにマネージャーの予定をメンバーが必ず確保し実施する
などルールを決めると、実施が習慣化して継続できます。
コツ3:テーマや内容をメンバーが事前に決める
1on1ミーティングの日程が決まったら、その日までにメンバーにテーマや内容を考えてもらいましょう。
そうすると、メンバーは課題や取り組んだことをまとめる中で自身の振り返りをすることができます。
またマネージャー任せにせず、メンバーは「ミーティングは自分のために実施している」という実感と責任が生まれるでしょう。
コツ4:記録を取る
ミーティングの内容は記録を取ることをおすすめします。
その際はできればメンバーが自分で記録することが望ましいです。
メンバーが自分自身で記録を取ることで、課題をより自分で考える機会になるからです。
記録を取ることの効果3点
- 次回のミーティングテーマが重複しない
- 前回を振り返られる
- 長期的に振り返りメンバー自身の成長度合いが確認できる
1on1ミーティング全体の流れ、進め方
それでは、1on1ミーティングを実施する際の流れと進め方を説明します。
1on1ミーティングの大まかな流れは次の通りです。
- アイスブレイク・雑談
- 前回の振り返り
- OKRの進捗状況の確認
- マネージャーからフィードバック
- テーマに沿ってメンバー主体で話す
- 今後の目標、アクションプランを設定
1:アイスブレイク・雑談
1on1ミーティングが始まってすぐに、悩みや仕事に関する考えは話しにくいものです。
なので冒頭では、休日何をしているか、仕事以外の趣味や最近の出来事など、できれば楽しい話題をして雰囲気をよくすることを意識します。
メンバーの体調や精神的なコンディションを聞くのもよいでしょう。
マネージャーからの気遣いが伝わり、メンバーは安心して話をすることでができるようになります。
2:前回の振り返り
続いて、前回の振り返りをします。
振り返る内容は下記の4つです。
- 前回話した内容の振り返り
- 前回に出た課題に対しての結果を聞く
- うまくできた場合は、どのように工夫や努力をしたのか
- うまくできなかった場合は、なぜできなかったのか
うまくできなかった場合でも、攻める言い方ではなく一緒に解決したいという気持ちでメンバーに寄り添います。
また、解決策を一方的に伝えるのではなく、メンバーが自分で内省と考察をさせるように誘導しましょう。
3:OKRの進捗状況の確認
OKRとは、目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)の略語です。
メンバーの業務での現状把握と、目標を再確認します。
まだOKRの設定ができていない場合は、1on1ミーティングの時間を使ってメンバーと一緒に考えてもいいでしょう。
組織においてメンバーが置かれている状況に応じ、メンバーに合うOKRを設定しミーティングごとに振り返り、状況に合わせて柔軟に設定を変えるなどしましょう。
OKRの設定が完了したら、進捗と成果を確認をします。
- 成果のためにどのようなことに悩んでいるのか。
- どのような課題を抱えているのか。
細かくヒアリングし、課題はメンバーと一緒に解決し、目標を設定する際に活用します。
4:マネージャーからフィードバック
次にメンバーが目標に対して実施している業務内容や成果に対して、マネージャーからフィードバックを行います。
成果についてはどのような工夫や考えでおこなったかをヒアリングし、マネージャーの目線で気づいたメンバーの成長や変化を伝えましょう。
メンバーのモチベーションの向上と信頼関係が生まれます。
ここからは、具体的に使えるフィードバックの方法を3つご紹介します。
SBI(SituationBehaviorImpact)型
Situation(状況)→Behavior(行動)→Impact(影響)の流れでフィードバックする方法です。
まずなぜその状況が起きたのかを整理し、どのような行動をして結果どのような影響があったのかを説明します。
時系列に整理され、客観的に考察しやすくお互い相違なく共有できるでしょう。
サンドイッチ型
ポジティブな評価→ネガティブな指摘→ポジティブな評価の流れでネガティブをサンドイッチするフィードバック方法です。
はじめに褒めることでメンバーの心理的ハードルを下げ、次に指摘を伝えることで受け入れやすくします。
最後にもう一度ポジティブな評価を伝え、メンバーのモチベーションを維持しましょう。
ペンドルトンルール
心理学者ペンドルトン氏が開発したフィードバック方法です。
マネージャーが評価を伝えるのではなく、フィードバックを受けるメンバーが自分自身でよかった点、改善すべき点を考え出し振り返ってもらう方法です。
自己評価ともいいますが、自ら振り返り次の行動計画を立てることで、マネージャーが単に指示をするより自発的に向上できるでしょう。
メンバーが自分で成長するように促すコーチングにも似た方法です。
5:テーマに沿ってメンバー主体で話す
ミーティングの中でメンバーがテーマに沿って進める時間を作ります。
マネージャーが進めてばかりのミーティングだと、マネージャーだけが満足する内容になりかねません。
メンバーが主体となり、マネージャーが見えていない人間関係の悩みや将来のキャリアについてなど話し合います。
こういったメンバーを主役とした時間を確保することで、職場やマネージャーに対する信頼感から、メンバーは「わかってもらえている」と心理的安全性が生まれます。
6:今後の目標、アクションプランを設定する
ミーティングで良かったこと、課題や改善点が出たらそこで終わりにせずに次の目標とアクションプランを設定します。
- 次回のミーティング実施までにどのような行動をするのか
- その行動によりどのような目標を目指すのか
長期的な大がかりの目標ではなく、短期的にクリアできる目標設定をし、次回のミーティングでまたその結果を振り返ります。
進める際のポイントと注意点
ついついマネージャー自身が話したいことを話してしまい時間が過ぎてしまう、一方的にメンバーの評価をして終わってしまうことが1on1ミーティングではよくあります。
メンバーの話を最後まで聞くことを心掛け、メンバーのペースで共感や質問を投げかけて進めることが重要です。
全体で7割以上をメンバーが話すようにする
メンバーが主役のミーティングのため、マネージャーが話す割合は3割程度にとどめ、メンバーが話すように促しましょう。
対話は、聞くより話す方が満足度が高いという統計もありますので気持ちよくメンバーに話してもらうようにします。
傾聴を心がけ、話をさえぎらない
ミーティング中では、マネージャーはメンバーの話を真剣に聞く態度、傾聴を心がけます。
うなずきをするだけでも、話す側はちゃんと聞いてもらっていると安心して、より心を開いて話してくれるでしょう。
ですので相手を受け入れる受容と、相手の話に共感することが重要です。
決して、指導しようとしたりマネージャー自身の話をかぶせて話をしたりせず、メンバーの気持ちに寄り添う姿勢を心がけましょう。
ラポールを形成する方法を活用する
1on1ミーティングに限らず、ビジネスシーンにおいて人と接する際に信頼関係を構築することは重要です。
ラポールとは、フランス語でrapport(ラポール)が由来の言葉で、意味は心が通い合っている関係です。
ここからは、ラポールを形成する方法3つをご紹介します。
ミラーリング
相手のしぐさや姿勢、動きを真似して鏡のような動きをする方法です。
行為を抱く相手と対話している場合、無意識に行為を真似してしまうことがあります。
似た行動を取られた相手は好印象を抱きやすく心を開く傾向があるでしょう。
マッチング
マッチングは、対話している相手の声量や話すペース、声のトーンなど相手に合わせる方法です。
例えば相手が静かに話す人の場合、ゆっくり落ち着いたトーンで話し、明るくテンションが高い相手であれば同じく相手のテンションに合わせます。
相手に合わせることで好印象を与え理解してもらえていると印象付けられるでしょう。
キャリブレーション
キャリブレーションは相手を観察することです。
まだ相手をよく知らない場合、無意識にすることもあるでしょう。
しぐさや、雰囲気、笑い方、ふとした表情などを観察し相手の心理状態を知ることです。
観察することで、ミラーリングやマッチングをおこなう際も役に立ちます。
バックトラッキング
相手が会話の中で使った言葉を復唱しそのまま返す方法です。
オウム返しともいいますが、相手が発した言葉を共感するように繰り返すことで、「自分のことを理解してくれている」と安心感を与えられるでしょう。
しかし、ミーティング中にラポール形成の方法を取り入れるために、会話に集中できなくなる危険性もあり注意が必要です。
また相手にばれないようなテクニックも必要ですが、このような方法があることを頭に入れておくだけでも違うかもしれません。
アドバイスよりメンバーに考えてもらう
メンバーの話を聞く中で、ついついマネージャー目線で物事を解釈し「こうしたほうが効率がよい」「もっと簡単にできる方法がある」などと言いたくなる場面があるかもしれません。
しかし、アドバイスはメンバーのためにならない場合もあります。
簡単に解決方法を伝えたり、結論を出したりするのではなく、メンバー自身で答えを出せるように導くことが大事です。
1on1ミーティングの目的の一つであるメンバーの成長を促すためにも押し付ける意見を言わないように注意しましょう。
テーマ別具体的な質問のご紹介
ここまで1on1ミーティングの進め方や流れ、注意点などを説明しました。
1on1ミーティングを実施するうえで、マネージャーにはコーチングスキル(質問力)が求められます。
ここからは実際に使える質問を紹介していきます。
アイスブレイク
1on1ミーティングが始まって本題に入る前に、メンバーにリラックスしてもらい雰囲気を良くするために、下記の質問をしましょう。
- 仕事は楽しいですか?
- 体調や悩みはないですか?
- 休日はどのように過ごしていますか?
- 趣味や、好きなスポーツはありますか?
- 最近嬉しかったことはなんですか?
質問している側が共通の話題があれば、それについて盛り上がってもいいでしょう。
雑談からお互いの価値観を知りよりよい関係を築けます。
雑談のみで終わらない
たとえばマネージャーとメンバーが同じ趣味があり、その話題ばかり話してしまい時間が過ぎるのはミーティングの意味がありません。
雑談をする際のコツは、どのような話題でも最後は仕事(職場)の話題につなげることです。
たとえば、最近見た映画の話題であれば、登場人物の共感部分や性格を職場内の似た人と重ねてみましょう。
「主人公は○○さんに似てる」や「人を助けるところはこの前の事例に似ている」などとつなげると自然とチームや組織の話に広がります。
会話の工夫を少しするだけで、雑談が意味のある内容に繋がります。
メンバー自身の振り返り
1on1ミーティングでは、メンバーが改めて自分自身を振り返る貴重な時間でもあります。
先ほどもありましたペンドルトンルールのように客観的に自身を振り返り改善に向かうためにも必要な質問です。
- 今の業務でうまくできた(できなかった)ことは?
- その要因はなんだと思いますか?
- もっと効率化するにはどのようにしたらいいですか?
- 組織やチームに自身が必要なことはなにかありますか?
自由に答える質問オープンクエスチョンを意識して、課題に対し常に「なぜ」「どうやって」を使い質問しましょう。
今後の目標設定やスキルアップ
メンバーに振り返ってもらったら今後に向けての目標を設定してもらいます。
またそれに伴い必要なスキルがあれば確認し共有します。
- 業務での課題に対してどのような行動をしますか?
- マネージャーやチームに要望や改善に向けて提案はありますか?
- 今後身に着けたいスキルはありますか?
- 組織やチームの中で興味がある業務はありますか?
まとめ|メンバー主体で課題解決するように進めること
1on1ミーティングの進め方と効果が出やすいポイントをご紹介しました。
- 1on1ミーティングの目的を先に伝え実施する理解を得る
- メンバーとマネージャーでスケジュールを決め、定例とし習慣化する
- 上下関係を気にしない、始めはアイスブレイクなど話しやすい雰囲気を作る
- メンバーに話題(課題・取り組んだこと)を事前に考えてもらう
- 記録を取り共有する
- メンバーに寄り添ったフィードバック
- 目標を見直しアクションプランを設定する
- 傾聴を心掛け、7割メンバーに話してもらう
- アドバイスよりメンバーが自分で考えるように促す
導入し実施しても、「時間の無駄だ」「話すことはない」など否定的なメンバーは一定数いるかもしれません。
やらされているという受け身の姿勢から自分の成長のための時間として前向きに取り組んでもらうには、ミーティングのテーマ決めからメンバー自身に考えてもらいメンバー主体で進めることがポイントです。
自分自身を振り返り、自分で課題を見つけ、自分で解決すると成長できている実感が生まれメンバーにとっての1on1ミーティングの意味が見いだせるでしょう。