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1on1ミーティングが苦痛に感じがちなのはなぜ?理由と対策を解説

現在、人材育成のひとつとして1on1ミーティングは人気です。

しかし、1on1ミーティングを導入したものの、メンバーとマネージャー、双方から評判が悪く「苦痛にしか感じない」「できればやめたい」という声が大きいところも多いのではないでしょうか?

1on1ミーティングは成功すれば人材育成に大きな効果がありますが、失敗すると職場の人間関係が悪化する恐れもあります。

今回は、なぜ1on1ミーティングが苦痛に感じやすいのか、その理由や対処法を紹介します。

1on1ミーティングの概要

1on1ミーティングが苦痛と感じる理由を解説する前に、まずは1on1ミーティングの概要について解説します。

現在、1on1ミーティングが注目されている理由やメリットも解説するのでご参考ください。

メンバーとマネージャーが1対1でミーティングを行なうこと

1on1ミーティングとは、メンバーとマネージャーが1対1でミーティングを行うことです。

一見すると人事や評価を目的として行う面談と同じに思えますが、目的が異なります。

面談は、仕事に対する姿勢や成果に対する判定なのに対し、1on1ミーティングはメンバーのサポートや育成を目的に行います。
そのため、ミーティングの内容は多岐にわたり、ときには人生相談のようになる場合もあるでしょう。

メンバーとマネージャーの相互理解が進み自己育成に効果がある

マネージャーの役割は、単にメンバーを管理したり仕事を割り振ったりするだけではありません。

メンバーをサポートしたり成長を促したりするのも大切な仕事です。

しかし、メンバーをサポートし、成長を促すためにはまずコミュニケーションを綿密にして、相互理解を深めなければなりません。
それを難しく感じているマネージャーも多いことでしょう。

会社によっては、挨拶以外は従業員同士がほとんど話をしない職場もあります。
また、マネージャー同士、メンバー同士の交流はあってもマネージャーとメンバー同士はほとんど交流がないところもあるでしょう。

飲み会で親睦を深めていたが、ここ数年の社会情勢の変化ですっかり飲み会がなくなり困っている、といったケースもあります。

1on1ミーティングは、短時間でもメンバーとマネージャーが1対1で対話できる機会です。

皆の前ではできなかった話をすることで、相互理解を深められます。また、自分で気づきながら成長することも大切ですが、周囲からのサポートやアドバイスがなければなかなか難しいケースもあるでしょう。

1on1ミーティングは、マネージャーからメンバーへじっくりとアドバイスしたり、細かいところまでサポートできたりする貴重な機会です。
このほか、マネージャーと話をすることで、メンバーが自分で成長するヒントをつかめることもあります。

1on1ミーティングを取り入れる企業が増えている

現在は、限られた人材を適材適所に配置し、効率的に仕事をしてもらえるか、に頭を悩ませている企業が増えています。
メンバーが自分の向いている仕事ややりたい仕事がわからなかったり、マネージャーの指示をひたすら待っているだけだったりするのでは、経営者も困ってしまうでしょう。

1on1ミーティングを行っていくことで、メンバーは自分の弱点や伸びしろを理解できます。

一方、マネージャーはどうすればメンバーを効果的に成長させられるのか、1on1ミーティングを通じてヒントをつかめます。
このように、1on1ミーティングは従業員が成長するきっかけをつかみ、メンバーとマネージャーの相互理解を深められるメリットがあるため、取り入れる企業が増えているのです。

1on1ミーティングをメンバーが苦痛と感じる3つの理由

メリットが豊富な1on1ミーティングをなぜ“苦痛”と感じる方が多いのでしょうか?
まずは、メンバーが1on1ミーティングを苦痛だと感じる理由を3つ紹介します。

話すことがない

1on1ミーティングを導入したがうまくいかない、と悩んでいる会社で多く聞かれるのは「話すことがない」という意見です。

気心の知れた友人や家族でも、仕事の悩みはなかなか話しにくいものです。
あまりコミュニケーションを取ってこなかったマネージャーならなおさらでしょう。

「あまり本音を正直に話すと評価に悪影響が出るのではないか」と考える方も珍しくありません。
しかし、お互いに当たり障りのない話をしているだけでは、1on1ミーティングのメリットはありません。

何度もミーティングするうちに話題もつきて、お互いに黙ったまま時間が過ぎていくといったケースもあるでしょう。
こうなっては、「ミーティングの時間を業務に当てた方がずっと効率的だ」と思ってしまいます。
実際、1on1ミーティングを導入したが形骸化している企業も決して珍しくはないのです。

何をやってもマネージャーに否定される

日本の会社は、“メンバーは厳しく鍛えて成長させるもの”といった根強い考え方があります。

そのため、マネージャーの中にはメンバーを叱咤したりはっぱをかけたりすることで、成長を促そうと考えている方も多いでしょう。
しかし、メンバーから見れば「自分がどのような提案をしても、マネージャーは否定するばかり」と見えてしまいます。

マネージャーが厳しく接していても、メンバーがその中の愛情を感じられるならいいのですが、そのためには相手と信頼関係を構築しなければなりません。

挨拶以外ほとんどコミュニケーションを取ったことがない上の立場の相手から、ひたすら否定されれば嫌になってしまいます。
モチベーションも低下する一方です。

マネージャーが話すだけで終わってしまう

1on1ミーティングは、マネージャーが聞き役に徹してメンバーが積極的に話すほうが効果的です。

しかし、マネージャーが一方的に話してメンバーがほとんどしゃべらずに終わってしまうこともあります。
マネージャーが一方的に話すばかりでは、1on1ミーティングの効果はほとんどありません。
人事や評価の面談と同じです。

また、マネージャーが立て板に水とばかりにしゃべり続けると、メンバーは口をはさむ隙がありません。
最初は1on1ミーティングに意欲を持っていたメンバーも、マネージャーが聞く姿勢を見せなければやがてモチベーションが低下してしまうでしょう。

10分~30分とはいえ、コミュニケーションが十分に取れない相手の話を聞き続けるのは大変です。
こうなると、徐々に1on1ミーティングが苦痛になったり形骸化したりすることもあるでしょう。

1on1ミーティングをマネージャーが苦痛と感じる4つ理由

1on1ミーティングを苦痛と感じているのは、メンバーだけではありません。

マネージャーもまたよりよい1on1ミーティングを実施しようと試行錯誤したが、うまくいかなかったといったケースもあります。
ここでは、1on1ミーティングをマネージャーが苦痛と感じる理由を4つ紹介します。

準備が大変な割に効果が実感できない

1on1ミーティングはマネージャーがメンバーをアドバイスしたりサポートの方法を提案したりして、自己育成を促すのが最大の目的です。

マネージャーは、メンバーの話を聞いて1人ひとりに適切なアドバイスやサポートをすることが求めらます。
数人のメンバー相手なら、自身の仕事の合間にミーティングの準備を行えるでしょう。
しかし10人を超えると、きめ細やかなサポートが難しくなります。

そして、1on1ミーティングは定期的に長期間実施しなければ効果が表れません。
人によっては、1対1のコミュニケーションが苦手で打ち解けるまでに時間がかかる方もいるでしょう。

メンバー1人ひとりに合わせて話題やアプローチ方法を変更するのはなかなか大変です。
それでも、効果が出るとは限りません。

会社によっては、マネージャーにメンバーより厳しく成果を求めることもあるでしょう。
自分の仕事を後回しにして1on1ミーティングの準備を行ったのに、思うような結果が出なければ人事査定にも影響します。

経営者が1on1ミーティングの結果を早急に求めたり、マネージャーが多数のメンバーのサポートを同時にしなければならなかったりした場合、マネージャーのモチベーションも低下してしまいます。

準備に時間をかけた割には効果が得られない、もしくは経営者が目標とした成果が出せない場合、マネージャーは1on1ミーティングを苦痛に感じがちです。

そして、がんばって効果を出すよりは、1on1ミーティングを形骸化させて自分の仕事を優先するほうを選ぶでしょう。

単なる仕事の進歩確認になりがち

1on1ミーティングは、メンバーに自分が目指している将来像や現在それに向けて努力していること、悩んでいることなどを語ってもらうことが重要です。

しかし、自分の将来像や仕事に関する不安や悩みなどを理路整然と話せる方ばかりではありません。

また、「努力して成長し、将来的に会社を支えるような人材になる希望など抱いていない」や、「そこそこ仕事をして一定の給与をもらえれば十分」と考える方もいるでしょう。

多くの管理しているマネージャーは、1人ひとり手取り足取り指導してやる気を引き出す時間もありません。

こうなると、ミーティングはひたすら仕事の進歩のみを確認する時間になりがちです。

マネージャーの気質が1on1ミーティングに不向き

マネージャーも話し上手でメンバーにやる気を出させるのが得意な方がいる一方で、会話が苦手な方もいます。

会話が苦手で「どうやってメンバーから本音を聞きだし、サポートやアドバイスをすればいいかわからない」と悩む方にとって、1on1ミーティングは苦痛です。

また、1on1ミーティングは仕事に直接関係がないため、「ミーティングに時間をかけるくらいなら仕事をしていたい」と考えるマネージャーもいます。

これでは、1on1ミーティングの効果は期待できません。

話題選びが大変

1on1ミーティングを効果的に行うには、話題選びが重要です。
1on1ミーティングのマニュアル本などには話題の一例が載っているものもあり、最初はそれを参考にするマネージャーもいるでしょう。

しかし、ミーティングを重ねるにつれて徐々に話題がなくなっていきます。
また、職種によっては普遍的な話題では合わないこともあります。

話題選びを間違えると、会話が弾まないだけでなくメンバーによってはハラスメントになりかねません。

例えば、女性に「結婚や出産は何歳くらいが理想?」「もう20代も終わるけれど結婚の予定はないの?」などの話題を振れば、たとえキャリア計画を語ってもらうのが目的であっても問題になるでしょう。

1on1ミーティングを重ねても特に効果が実感できなければなおさらです。

話題選びに悩んだ結果、最終的に仕事の進歩確認となり1on1ミーティングが形骸化しているケースは決して珍しくありません。

1on1ミーティングが苦痛にならない5つの対策

1on1ミーティングを導入する企業は増えていますが、マネージャーとメンバーの双方がミーティングに苦痛を感じるようでは逆効果です。

1回のミーティングが10分のみであってもその分仕事の時間を削っているのですから、経営者からすればなんとか効果を出してほしいでしょう。
ここでは、1on1ミーティングが苦痛にならない5つの対策を紹介します。

1on1ミーティングを成功させるには、話を聞く方もするほうも準備や訓練が必要です。
実践できそうな対策から、順次試してみてください。

マネージャーはコーチングの研修を受ける

1on1ミーティングでもっとも発生しがちな問題は、マネージャーがメンバーをひたすら叱責してしまうことです。

特に、優秀なマネージャーの場合は、メンバーの未熟さが目に付きがちな場合もあります。

また、やる気がなく何ごとも消極的なメンバーには、つい強い言葉をかけて奮起させたくなるかもしれません。
たしかに、強い言葉で叱責すれば奮起するメンバーもいます。

しかし、反対に徐々にやる気がなくなってモチベーションが下がるメンバーも多いのです。
1on1は1対1で行うので、なだめたり助け舟をだす方もいません。

そのため、メンバーを励ます意味で叱咤しているのに、気持ちが高ぶって言わなくてもいいことまで言ってしまうケースもあります。
メンバーから見れば、何を言っても叱咤されたり否定されたりするので何も話せません。

このようなことを防ぐには、マネージャーにはコーチングの研修を受けてもらいましょう。
コーチングとは、相手の話に耳を傾けてやる気を引き出したり気づきを与えたりする質問をする訓練のことです。

名指導者はコーチングに長けた方が多く、コミュニケーション能力に長けた方の中には人付き合いの経験を通して自然とコーチングができるようになった方もいるでしょう。
コミュニケーションが苦手というマネージャーも、研修を受ければメンバーから話を聞きだすコツがつかめるかもしれません。

“ただだまって相手の話を聞く”のは、思っている以上に難しいものです。
コーチングもマネージャーに必要な能力といった認知が広がっており、コーチングのコツややり方を解説した本もたくさんあります。

研修を受けるのと同時に、マネージャーはこのような本を積極的に読んでもらうように指導してもいいでしょう。
そうすれば、マネージャーは行動に移しやすくなり、ミーティングを効率的に進められます。

話題をあらかじめ選んでおく

1on1ミーティングでもっとも大切なのは、話題選びです。

しかも、できるだけ具体的に選んだほうがメンバーも話をしやすいでしょう。
例えば、マネージャーがメンバーに目指す目標を達成するには、メンバー自身に何が足りないのかを聞きたい場合に、「あなたに今足りないものは何ですか?」と質問したとします。

この質問を聞いただけで、メンバーがマネージャーの意図を完璧に理解するのは難しいでしょう。

人によっては「もう少し余裕が欲しいです」など、さらに抽象的な答えを返してマネージャーが困るかもしれません。
「あなたが現在定めている目標はなんですか」「その目標を達成するには、どうすればいいと思いますか?」「自分の努力だけでは解決が難しい問題は何ですか?」と1つひとつ具体的に質問していけば、メンバーもマネージャーの意図を理解しやすいはずです。

しかし、話題選びは難しいものです。
最初は、1on1ミーティングのマニュアル本などから普遍的な質問を選び、すべてのマネージャーがメンバーに同じ質問をしてもいいでしょう。

そうして、慣れてきたらオリジナルの質問をしていきます。
話題をあらかじめ選ぶことで、ミーティングの準備がぐんと楽になります。

心理的安全性を高める

心理的安全性とは、相手に警戒を抱かずに安心して本音を語れる環境のことです。

常に厳しくメンバーに接するマネージャーがいきなり「君をサポートするから本音で不安を話してくれ」と1on1ミーティングで述べても、メンバーは素直にうなずけないでしょう。

「何か言えば、すぐに叱責されるのではないか」と不安が先だって当たり障りのないことしか言えない可能性が高いです。
特に厳しく接していなくても、挨拶以外は仕事の話しかしないメンバーとマネージャーではお互いになかなか胸の内を素直に語れません。

そのため、1on1ミーティングを導入する際、経営者が導入の目的を明確にすることが大切です。
1on1ミーティングが人事評価に影響しないことや、マネージャーが不適切な対応をした場合、相談できる先があることだけでも明確にしておけば、メンバー側の心理的安全性は高まります。

マネージャーにも経営者が早急な結果を求めないことや、1on1ミーティングの結果が人事評価に関係ないことを明確にしておきましょう。

メンバーのサポートもマネージャーの大切な仕事ですが、1on1ミーティングが自己育成の手段として適さないケースもあります。
失敗しても評価に影響しなければ、マネージャーも安心してトライ&エラーを繰り返せます。

最初に雑談をして共通の話題を見つけ、それで相互理解を深めてから相談に乗るといった長期的な計画も立てられるでしょう。

一回のミーティングは短めにする

評価や人事には関係ないといっても、マネージャーと1対1で話し合うのは気が重いメンバーも多いでしょう。

マネージャーもミーティングの時間が長ければ話題選びに苦労します。
1on1ミーティングの時間は、30分~1時間、週1回~月に1回程度が目安です。

しかし、導入した直後は20分程度から始めてもいいでしょう。
20分程度なら、何も話すことがなく2人も押し黙ったまま時間が過ぎるのを待つ、といったことも少なくなります。
「もう少し話したい」と思うくらいの時間が理想です。

マネージャーも指導するメンバーが多ければ、就業時間の多くを1on1ミーティングの準備や対応に費やさなければなりません。
ミーティング時間が短くなれば負担も減らせます。

結果を出すことを急がない

数回の1on1ミーティングで、メンバーが見違えるほど成長して生産性も上がる、といったことはほぼありません。

1on1ミーティングでマネージャーからアドバイスを受け、気づきを得られてもそれが仕事の結果として現れるまで時間がかかります。
経営者は、メンバーとマネージャー双方に早急に結果を求めすぎないようにしましょう。

現在のビジネスはスピード感が求められがちですが、いくら技術が進歩しても時間をかけないと達成できないものも多いのです。
最低でも半年は期間を設け、経過を見守りましょう。

1on1は事前準備をしっかりして導入することが大切

1on1ミーティングは、マネージャーにすべてを任せても成功しません。
経営者が導入の目的を明確にし、事前準備をしっかりとしてから導入しましょう。

1on1ミーティングは人事評価に影響しないことを明確にしたり、マネージャーにコーチングの研修を受けてもらったりすれば、心理的安全性も高まります。
また、経営者もすぐには結果が出ないことを心に留めておけば、マネージャーもメンバーも余裕をもって取り組めます。

このほか、導入時期にも注意しましょう。
繁忙期や人事異動の時期を避け、比較的仕事に余裕ある時期を見計らって導入してみてください。

reviiコラム編集部

revii(リービー)のサービス企画・運用に携わるメンバーが、組織改革やマネジメント育成、1on1ミーティングなどで役立つ情報・HowToを発信しています。
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