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360度評価とは?導入のメリット・デメリット、導入の流れなど詳細解説

「360度評価」は、上司だけでなく部下や同僚など複数人が対象を評価するという新しい方法で、国内でも多くの企業が取り入れています。では実際、導入することでどのような効果が期待できるのでしょうか?
360度評価の概要やメリットデメリット、成功させるためのポイントなどを解説していきます。

360度評価とは

360度評価とは、上司や部下、同僚など、仕事に関係する複数人の社員が対象を評価するという制度で、「多面評価」とも呼ばれます。また、対象者本人の自己評価も含まれます。
上司だけではなく、立場の異なる複数人からの意見を集めるという部分が従来とは異なる新しい点で、企業の6割近くが導入しているとされています。

360度評価を導入する目的

主な目的は、「人事評価」と「人材育成」です。

従来の方法の場合、上司だけでは気づけないことがあったり評価スキルが不足していたりする恐れがあります。そのため、対象者は不満や疑いを持つこともありました。
一方、多方面からの意見を聞くことができる360度評価は、従来の方法よりも公平性に優れています。360度評価の一部を人事評価に結びつければ、評価への納得感を高めることが可能です。

また、人材育成を目的とすることもあります。複数の観点から意見を受けることにより、自身のスキルや行動に対する発見を得られるからです。
上司による単独評価に比べると社員が意識改革しやすいため、人材育成の面で効果的です。

360度評価が注目されている理由

注目されている理由の一つとしては、リモートワークのような新しい働き方が広がっている点です。
直接管理できるオフィスワークと比べ、リモートワークでは上司と部下間のコミュニケーションが少なく、勤務態度や業務状況を把握しにくいという面があります。そのため、成果以外の評価項目が見えづらいうえ、上司だけでは適切な判断が難しくなったり、判断する側の負担が増えたりしてしまいます。
結果、複数人に評価される方法が求められるようになりました。

また、人事評価が年功序列から成果主義へ移行しているという点も大きな理由です。どれほどの成果を出しているのかを正しく判断するために、公平性のある360度評価に注目が集まっています。

360度評価を導入するメリット

次に、メリットについてお伝えします。

多角的な評価を得られる

従来の方法では、上司の判断能力自体が不足していたり、好き嫌いに影響されたりといった恐れがあります。場合によっては、部下が不満や疑いを持つことがあるでしょう。
一方、360度評価は複数の社員が実施するので、公平な人事評価を行えます。

評価の納得感を得られる

公平な人事評価を行うことで、評価を受けた側も納得感が高まります。
例えば、好ましくない意見を受けた社員の場合、上司ひとりだけの意見では不満が生まれてしまうかもしれません。しかし、360度評価では複数人の意見を聞くため、あまり良くない結果でも素直に受け入れられる可能性が高まります。

自身の改善点を発見できる

360度評価では、対象者となる社員も自分自身に対して評価を行います。そのため、自己と他者の間にある評価のギャップがわかりやすいです。
結果を確認すれば、自身の改善点に気づいて具体的な行動に取り組みやすくなるでしょう。

自身の強みや弱みを把握できる

自分自身の特性について把握できるという点もメリットです。強み・弱みを客観的に認識することで、仕事のパフォーマンスを高める効果が期待できます。

評価制度への当事者意識を持ちやすい

従来の方法は上司による判断のみで、部下は完全な受け身でした。
一方、360度評価は立場や勤続年数に関係なく誰もが行うので、評価制度に対する当事者意識を持つようになります。さらに評価者としてのスキルも磨かれるため、リーダー候補の育成に繋がります。

社員の人間関係を把握しやすくなる

人間関係の把握に役立つこともあります。
例えば、特定の社員の結果が極端に悪かった場合、パワハラやいじめといった問題が起きているかもしれません。傾向をチェックすることで、トラブルの早期解決に繋がります。

社員のモチベーション向上に繋がる

納得感のある評価や改善点の発見は、社員のモチベーション向上に繋がります。生産性の向上や離職率の減少などのメリットが期待できます。

社員のエンゲージメント向上に繋がる

公平に評価されることで企業への信頼が高まり、エンゲージメントが向上します。
さらに、評価を行うということは、人事評価に自分の意見が反映されるということ。意見が尊重されるという満足感を得られるため、企業に貢献しようという気持ちがより強まります。

360度評価を導入するデメリット

次に、デメリットについてお伝えします。

運用コストが大きい

一番のデメリットは、運用コストが大きい点でしょう。
従来の方法は、判断を行う管理職のみに負担がかかるものでした。しかし、360度評価では多くの社員が関わるため、シートの作成や配布、集計などに時間と手間がかかります。また、人事評価に関係する重要な資料として、管理に必要なコストも上昇するでしょう。

主観が評価に影響を与えやすい

全社員が対象なので、他者を評価した経験の少ない人も評価を行います。中には、主観の影響を受ける人もいるかもしれません。
印象や好みに左右された意見では、正当性がなくなってしまいます。

指導や育成が甘くなる可能性がある

従来とは異なり、上司も評価を受ける側になります。そのため、厳しい上司を低く評価する人もいるでしょう。
このような点を気にするあまり、部下に対する指導や育成が甘くなるケースがあります。

本音で評価できない可能性がある

事前に社員同士が高い評価をするよう約束したり、強要したりするという可能性があります。また、匿名でも内容で誰が行ったものかわかる場合があるので、本音を出せない人もいるかもしれません。
公平性や正当性のない表面的な意見ばかりが集まると、導入する意味がなくなってしまいます。

お互いの不信感が生まれやすい

どの社員も、評価する側・される側になります。そのため、表面上だけのコミュニケーションになる可能性があるでしょう。
また、場合によっては「きっとあの人が悪い評価をしたんだ」と考えてしまうことで、不信感が生まれやすくなります。

360度評価を導入する際の流れ

では実際、導入するにはどうすればいいのでしょうか?簡単な流れを解説します。

導入する目的を明確にする

まずは、導入する目的を明確にしましょう。曖昧なままでは、社員の理解を得られません。
人事評価を目的とする場合、どのように落とし込むのかを検討する必要があります。

具体的な実施方法を検討する

目的が決まったら、会社の規模などに合わせて具体的な実施方法を検討します。基本的には、紙媒体によるアンケート形式かオンラインを利用した集計となります。
オンラインで行う場合、併せてシステムも選びましょう。

評価項目を選定する

次に、評価項目の選定です。バラツキが生じにくく、社員が全員理解できるような内容にします。
一般的に、一般社員に対しては業務遂行能力に関係するものを、管理職に対してはマネジメントに関係するものを織り込みます。

社員に対して周知する

具体的な目的や実施方法が決まったら、社員に対して周知します。
なぜ導入するのか、どのように行うのか正しく理解されていないと、効果が得られません。丁寧に説明したうえで、社員に納得してもらいましょう。

360度評価を実施する

周知できたら、いよいよ実施です。事前に決定した実施方法やルールに基づいて、結果を集計します。
また、一気に導入するとトラブルや混乱が起こる可能性もあるので、まずは対象者を限定して実施するという方法もあります。

評価内容を集計しフィードバックを実施する

評価が終了したら集計し、フィードバックを行います。本人にのみ開示する場合があれば、本人と上司に対して開示する場合もあります。
フィードバック後は360度評価について振り返り、次回の施策がより効果的になるよう検討します。一人で360度評価を振り返るのは難しい場合があるため、1on1を活用し、本人と上司とで話し合うことが有効です。

360度評価を成功させるためのポイント

360度評価は、ただ導入すればいいというわけではありません。
上手に活用し成功させるためのポイントをお伝えします。

全ての社員を対象にする

360度評価の対象は、原則全社員です。一部の人だけが評価したりされたりすると、公平性が欠けてしまいます。
「まずは試験的に少人数から行いたい」などのケースを除き、全ての社員を対象にしてください。

導入の目的を明確化して周知する

導入の目的が明確化していれば、導入により効果があったかどうか、次回の施策にどのように活かせばいいのかなどを検討しやすいです。また、周知によって社員の理解を得ることで、公平な意見を集められます。
目的の明確化と周知を徹底し、効果を高めましょう。

評価項目は執務態度を中心にして厳選する

評価項目は、執務態度を中心に設定しましょう。成果に関わる項目では、判断が難しいからです。どのように仕事に取り組んでいるかといった日常的な行動であれば、誰でも意見を出しやすくなります。
また、「普段見かけない、あまり知らない人が対象となっている」という状況も考えられるので、「わからない」などの項目を設定するのもポイントです。

平均化した数値を評価得点にする

当然ですが、集計した結果によっては大きなばらつきがみられます。
最高値・最低値で判断するのでは公平性が失われてしまうため、平均化したうえで評価得点にするのが重要です。

定期的にフィードバックを行う

360度評価を導入して実施するだけでは効果をあげられないので、うまく活用することが重要です。
結果をどのように受け止めたか、どうやって今後に繋げるかといった内容を確認するよう、フィードバックを定期的に行いましょう。

評価がどう反映されるのか明示する

評価の結果は人事評価などに反映します。この点が曖昧だと、適切な判断が難しかったり結果をどう活用すべきかわからなかったりしてしまいます。
反映先は何か、どのような内容が反映されるのかを明示し、公平に行えるようにするのがポイントです。

研修やシステムを活用する

うまく運用しきれないと、効果をあげられないまま社員の負担ばかりが増えてしまう可能性があります。ただ導入して終わるのではなく、本人と上司とで話し合うことが有効です。
安心して導入できる環境や話し合う環境を整えるために、360度評価に関する研修やシステムを活用するのもおすすめです。

360度評価の具体的な評価項目例

具体的な評価項目として、いくつか例をご紹介します。導入する際の参考にしてください。

<一般社員向けの評価項目>
・執務態度
・印象
・コミュニケーション能力
・業務遂行力
・論理的思考力
・チームワーク
・挨拶

<管理職向けの評価項目>
・判断力
・リーダーシップ
・コミュニケーション能力
・業務遂行力
・組織運営能力
・人材育成
・課題思考力
・経営理念の理解

360度評価の導入事例

次に、360度評価を実際に導入した企業の事例をご紹介します。
世界的に有名な「トヨタ自動車株式会社」では、メンバーの意見を排斥しようとする管理職の意識や行動の変革するため、導入されました。2020年、関連企業も含め1万人以上いた課長級以上の管理職が対象となったそうです。
評価の内容によって昇格するのはもちろん、管理職から降格することもありえます。

他の導入事例については、以下の記事でご紹介しています。併せてお読みください。

あの有名企業も!360度評価の違いを10社の導入事例と共に解説

まとめ|360度評価のポイントを押さえて効果的に運用しよう

360度評価は、上司や部下、同僚といったように、複数の社員が対象を評価するという制度です。人事評価や人材育成を目的に、国内でも多くの企業が実施しています。
導入を検討している場合は、ご紹介したポイントを押さえたうえで、効果的な運用を目指してみてください。

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