マネジメントには課題がつきもの
マネジメントの目的を一言でまとめると人を使って仕事の成果を上げることです。
その内容は以下のような多岐にわたります。
マネジメントの種類
- 適材適所に人員を配置する
- 仕事の目標を定めメンバーが達成できるように指導する
- メンバーの仕事ぶりを的確に評価して報酬を払う
- メンバー自身が成長できるように指導する
マネジメントを行うには、指導力はもちろんのこと以下のようにまざまな能力が必要です。
マネージャーに求められる能力
- コミュニケーション能力
- メンバーを率いる指導力
- 目標を定め、メンバーを支えるサポート力
- 仕事や時間を管理する能力
有能な社員でもマネジメントに取り組んで、はじめからスムーズに問題なく行なえるケースはめったにありません。
どのような会社でもマネジメントに取り組めば、課題が表面化します。
その解決に苦労している会社も多いでしょう。
しかし、放置しておけば問題は大きくなり、最終的にマネジメントが行き詰まってしまう可能性もあります。
マネジメントの問題は会社によって異なるものもありますが、共通する課題もあります。
したがって、マネジメントに取り組む際はあらかじめ起こりやすい課題や、その解決方法を知っておくのは有効です。
また、共通しやすい課題の解決方法を知っておけば、会社固有の課題が持ち上がったときも解決方法のヒントとなるでしょう。
マネジメントで起こりやすい課題6選
では、会社でマネジメント業務を行う際、どのようなことが課題として起こりやすいのでしょうか?
ここでは、マネジメントを行う際に発生しやすい課題を6つ紹介します。
コミュニケーションがうまく取れない
マネジメントを行うには、コミュニケーションが大切です。
ほとんどの会社では、マネジメントはチームリーダーや役職付の社員が行いますが、「年下のメンバーとうまくコミュニケーションが取れない」と悩む方は珍しくありません。
また、「コミュニケーションが取れない」と一口にいっても、内容は以下のようにさまざまです。
マネージャーがコミュニケーションを取れないと悩む状況
- 聞きたいことにメンバーが答えてくれない
- メンバーが指示を聞かず勝手に仕事を進める
- メンバーと必要最低限の会話しかできず、お互いの理解が進まない
- マネージャーの言うことを理解してくれない
マネージャーや同僚とは、家族や友人のように気やすくつきあうのは難しいです。
特に、マネージャーとメンバーで年齢差があると、ジェネレーションギャップもあってお互いの理解が進みにくいこともあるでしょう。
しかし一緒に仕事をする以上、スムーズな意思疎通は必須です。
そのため、マネージャーが「コミュニケーションが取れない」と悩んでいる場合、重要な問題が起きている可能性もあります。
この問題をうやむやにしてしまうと、別の問題が起こっても隠しきれなくなるまで放置される恐れもあるでしょう。
生産性が上がらない
マネジメントがうまくいっているかどうかを測る指針の一つに、生産性があります。
適材適所に人員が配置されており、メンバー全員が仕事の全貌を把握し、各々が目標に向かって努力していれば生産性は上がっていくはずです。
メンバーとマネージャーとのコミュニケーションがうまくいかないなど、わかりやすい別の課題があれば改善も比較的容易でしょう。
しかし、メンバーとマネージャーのコミュニケーションがうまくいっていても、生産性が上がらないこともあります。
この場合、仕事のやり方や進め方、さらに仕事の環境など複数の問題が絡んでいることもあり、解決に時間がかかることもあるでしょう。
そのため、生産性が上がらない場合はマネジメントが悪いのか、それとも職場の環境やシステムが悪いのか、明確にすることが重要です。
チームワークがうまくいかない
チームで行わなければならない仕事ほど、マネジメントが重要視されます。
チームワークが悪化した場合はマネージャーの責任が問われる可能性もあるでしょう。
しかし、マネージャーとメンバーとのコミュニケーションがうまくとれていても、メンバー同士の仲が悪ければチームワークは悪化します。
また、誰と組んでもうまく仕事ができないといった人がメンバーに含まれている場合、一概にマネージャーの責任とはいえません。
それでも、マネジメントを行う以上、マネージャーはチームワークがうまくいくように心を砕く必要があります。
好き、嫌いはどうしても発生してしまう以上、頭の痛い問題といえます。
なお、一見すると和やかに仕事が進んでいるように見えても、仕事に関する情報がスムーズに共有できない場合は、チームワークがうまくいっていない可能性が高いです。
大きなチームを統率する場合は、マネージャーは仕事に関する情報が共有されているか、仕事の時にメンバー同士が協力できているかなど、複数の観点からチームを観察しましょう。
メンバーが言うことを聞いてくれない
ベンチャー企業のような新進気鋭の会社の場合、20代~30代の若い年代が役職に就いていることも珍しくありません。
会社によっては、メンバーが30代後半~40代、マネージャーが20代~30代前半のこともあります。
人によっては、「役職が上でも年下の言うことは聞けない」と意地になることもあるでしょう。
また他営業所からの出向・ヘッドハンティング・外部からの委託などで、部外から来たマネージャーが、社員から反発されることもあります。
マネージャーもメンバーも人間同士ですから、ぶつかり合うこともあるでしょう。
しかし、最初からコミュニケーションを取る気がないという態度を取られると、マネジメントは暗礁に乗り上げてしまいます。
このような問題が起きた場合、マネージャーとメンバーの間だけでは、解決が難しいこともあります。
放置しておくと、メンバーからマネージャーへのハラスメントに発展することもあるでしょう。
メンバーやマネージャーの配置換えも視野に入れて取り組まなければならない問題です。
マネージャーばかり責任を追及されプレッシャーを感じる
マネジメントがうまくいかない場合、マネージャーはさらに上の方から叱責を受けることもあります。
マネジメントの責任者である以上、それも仕事の一環です。
しかし、マネジメントを精いっぱい行っていても、会社のシステムが生産性の向上を邪魔していることもあります。
また、メンバーが最初からマネージャーの意見を聞かない場合も、マネージャーにできることは限界があります。
そのような事情を考えてくれず、一概にマネージャーの責任ばかり追及されると、会社全体に影響が出てくることもあるでしょう。
特に、経営陣と一般社員の橋渡しを務める中間管理職はメンバーと経営陣の両方から責任を追及されることが多く、彼らのサポートも重要です。
一概に叱責するばかりでは、重要な人材が社外へ流出してしまう可能性も高まります。
マネジメントが長期間うまくいっていない場合は、経営陣が介入したほうがよい結果につながることもあるでしょう。
サポート・評価がうまくいかない
マネジメントの仕事の一環にサポートと評価があります。
サポートはメンバーを手助けする重要な仕事ですが、サポートのやり方があっていないと効果はありません。
特に、マネージャーが自分のやり方にこだわってしまうと、サポートが逆効果になることもあります。
また、評価は公正であることが重要であり、少しでも私情を挟むと信頼を失います。
くわえて、十分な結果が出ない場合は厳しい評価もやむを得ませんが、十分な結果が出たときはそれを認めてあげることも大切です。
厳しさと優しさ、どちらに偏りすぎてもうまくいきません。
このほか、厳しい評価を下すのはあくまでも仕事ぶりだけに限らないと、パワハラに抵触する恐れもあります。
マネジメントの課題の解決方法
ここでは、マネジメントを行う際に発生しがちな課題の解決方法を紹介します。
問題の解決方法は1つではなく、独自の方法で解決したいという方もいるでしょう。
しかし、解決の一例を知っていると何かと役に立つはずです。
なぜ課題が発生したのか原因を分析する
マネジメントを行っている際に問題が発生したら、解決策を考える前に原因を考えることが大切です。
マネジメントだけが問題なのか、それとも会社のシステムや環境に問題があるのか、それともマネジメントを受ける人間に問題があるのかをはっきりさせましょう。
例えば、マネジメントが適正であり、メンバーがマネージャーの指示に従って仕事を行おうとしたら、会社の規則やシステムがそれを許さない場合もあります。
また、理想とするマネジメントを行いたくても、職場の環境が整っていないこともあるでしょう。
このほか、メンバーがマネジメントを受ける気がないこともあります。
原因によって解決方法がすべて異なり、一概に「マネジメントのやり方が悪い」とは言い切れません。
そのため、マネジメントに課題が生まれたら、なぜこの課題が発生したのか原因を探りましょう。
場合によっては複数の原因が絡んでいることもありますが、原因がわかれば解決方法もわかります。
この手間を惜しんではいけません。
1人で問題を抱え込まない環境を作る
マネジメントは縦のつながりも大切ですが、横のつながりも重要です。
マネージャー同士協力して問題を解決したり、課題を共有したりできれば、1人で悩みを抱え込むことはありません。
例えば、複数のマネージャーが同様の問題を抱えているならば、その問題の原因はマネジメントのやり方ではなく会社のシステムや職場の環境にある可能性があります。
また、マネジメントに問題がある場合も1人であれこれ考えるより、同じ立場のマネージャー同士で協力したほうが問題解決はスムーズです。
マネージャーはマネジメントを受けるメンバーよりも仕事に関する経験が豊富で広い視野を持っています。
しかし、マネージャーは万能ではありません。
特に、はじめてマネジメント業務につくマネージャーには手厚いサポートが必要です。
そのため、マネージャーにも定期的に研修をしたりマネージャー同士のミーティングを行うなど、問題を抱え込まない環境を作りましょう。
ただし、以下のような例外もあります。
マネージャー同士の情報共有に慎重となるべき例
- メンバーからハラスメントの相談を受けた
- 相談がメンバーのプライバシーに関わるものである
- 情報を共有するとマネージャーだけでなく会社中に話しが広まる可能性がある場合
- メンバーから他言無用という条件で相談を受けた
特に、メンバーのプライバシーに関わる問題や、ハラスメントに関する問題は扱いに慎重になりましょう。
会社側も、このような相談は専門の窓口を設けたほうがよいケースもあります。
このほか、マネージャーの悩みがほかのマネージャーと共有したくないものである場合は、産業医を紹介するなど対処が必要です。
ほかのマネージャーの協力も仰ぐ
マネジメントの途中で発生した問題は、一つの部署では解決が難しいこともあるでしょう。
また、一つの部署で解決することを推奨してしまうと、組織の縦割りかが進む恐れもあります。
問題が発生したときに、すぐにほかのマネージャーと協力する体制を作っておけば、問題が大きくなる前に解決できるでしょう。
なお、この体勢はマネージャーだけでは作ることが難しいため、経営陣が指揮を執ってシステム作りをすることも大切です。
会社がマネジメントで発生した問題に対して取り組めること
これまでは、マネージャーがマネジメントを行った際に発生する問題に対してできる解決策を紹介しました。
ここでは、会社が発生したマネジメントの問題に対してできる対処法を紹介します。
マネージャーに負担が集中しないようにする
社員から出世して役職がつけば、自分で仕事をこなすよりメンバーをマネジメントするマネージャーの仕事が多くなります。
前述したようにマネジメントが仕事である以上、効果を上げられなければ厳しい評価をされることもあるでしょう。
しかし、マネージャー個人でできるマネジメントには限度があります。
一例をあげると、チームで仕事をするのに向いていない社員のマネジメントです。
人の気質までマネージャーは管理できません。
また、マネージャーが行おうとしているマネジメントが会社のシステムによってうまくいかないこともあります。
マネジメントの失敗をすべてマネージャーの責任にすれば、社員全員が萎縮してマネジメントが十分に行なえません。
マネジメントの負担は、会社も担うことが大切です。
マネジメントがやりやすい環境を作る
仕事の仕方や組織のあり方は、時代によって変化します。
かつては最良とされた仕事のやり方は、現在ではいまひとつと評価されることもあるでしょう。
時代に合わせて、組織も変化していくことが大切です。
組織を変化させるには、トップが動くのがもっとも効率がよい方法です。
必要ならば、外部からコンサルタントを招いてでもマネジメントが行いやすい環境を作りましょう。
このほか、マネジメントの小さな失敗は目をつぶるくらいの寛容さも必要です。
会社が問題を解決する姿勢を見せる
マネジメントの過程で発生した問題の中には、マネージャーの手に負えないものもあります。
例えば、ハラスメント問題や、社員のプライバシーに関わることなどは会社が解決に乗り出したほうがうまくいくケースもあります。
このほか、人事に関する問題も、末端のマネージャーに任せられません。
会社が組織内で起きている問題解決に乗り出すためには、こまめにマネージャーやメンバーの話を聞いておくことが重要です。
必要ならば、マネージャーを飛び越してメンバーの意見を経営陣が聞けるシステムを作りましょう。
ただし、この場合はマネージャーの立場に配慮することも重要です。
会社はあくまでもサポートに徹し、マネージャーのやり方には口を挟まないことも大切です。
まとめ マネジメントの課題は必ず発生すると考えておくことが大切
マネジメントを行えば、必ず問題が発生します。
そのため、問題が発生しないようにと対処するのと同じくらい問題が発生した場合の対処法を考えておきましょう。
問題は起きるものと構えておけば、実際に問題が起きたときもすぐに対処できます。
また、マネージャー同士のコミュニケーションや、会社のサポート体制を強化しておくことも大切です。
そうすれば、マネージャーも安心してマネジメント業務に取り組めて、問題が起きてもすぐに対処できるでしょう。
場合によっては、外部からコンサルタントを招くなどの方法も視野に入れてください。