OJTとは
OJTとはOn The Job Trainingを略した言葉で、業務を実際に体験しながら知識を身につけていく教育方法のことです。
マネージャーや先輩社員が教育担当となり、コミュニケーションをとりながら業務を学ばせ、新入社員の理解度を図ります。
近年では入社3年目から5年目の社員が担当することが多いです。
基本的に1対1で教育するため、新入社員の気持ちに寄り添いながら進められます。
不安に感じている新入社員のモチベーションをアップさせ、職場に定着させたり1人ひとりの力を発揮させたりする役割を担っています。
OJT4つのタイプ
OJTは新入社員に対して行う教育だけでなく、以下の4つのタイプがあります。
OJT4つのタイプ
- 新入社員へのOJT
- ステップアップのOJT
- OJT担当者のOJT
- オンラインのOJT
順に解説します。
新入社員へのOJT
前述した通り、マネージャーや先輩社員が新入社員1人に対して、必要な知識や業務内容を指導します。
知識や業務内容を教える前には、導入OJT研修を行うことも大切です。
例えば、企業の経営理念や目指す方向、判断基準などを教育します。
企業の基本となる事項を教育することで、自社への理解が深まることに加え、定着率アップにもつながります。
ステップアップのOJT
入社して3か月から6か月程度経ったら、OJT実施の振り返りやスキルのさらなる向上を図るためのステップアップ研修を行います。
フィードバックを通してプラスアルファのスキルを学ぶことにより、新入社員のモチベーションを上げられるでしょう。
また、OJTを通して不安に感じている点や困っていることなどを話せるように信頼関係を構築し、新入社員の効率アップを図ることも大切です。
OJT担当者のOJT
年度末にOJT担当者と次年度のOJT担当者で研修を行います。
新入社員との関係構築で工夫したところや業務指導で意識したところ、成功・失敗例などを共有し、次年度の担当者に引き継ぎます。
OJTを担当したことのない社員にとって、社員の教育は難しく、不安に感じるもの。
しっかりと共有を行い、できるだけスムーズに指導することを心がけます。
また、OJT担当者同士の研修を毎年行うことで、指導方法をまとめたマニュアルも作られます。
オンラインのOJT
リモートワークが多く取り入れられる現代では、OJTをオンラインで行う企業が増加しています。
対面のOJTと同じように顔を見ながら指導することで、オフラインでのOJTと同等、場合によってはそれ以上の効果を生めるかもしれません。
例えば、先輩社員と新入社員の交流会・グループディスカッションを行えば、より深い知識を得られるでしょう。
OJTの目的と重要性
OJTの目的は、新入社員の実践的な知識を植え付けること、OJT担当者の知識を深めることです。
新入社員は行動しながら知識を得ることにより、徐々に業務に取り組めるようになります。
戦力となる従業員を育てるためにもOJTは非常に重要だと言えるでしょう。
また、担当者にとってもOJTは効果的です。
実際に業務を通して得た知識を振り返りながら指導することで、知識をより深められます。
さらに、業務内容を客観的に見ることにより、新たな課題や改善点を発見できるかもしれません。
OJTとOFF – JTの違い
OFF – JTとはOff The Job Trainingを略した言葉で、講習やセミナー、eラーニングなど座学で行う研修のことです。
外部の講師が研修を実施することが基本です。
OFF – JTはOJTと同じく、新入社員や中堅社員、管理職などさまざまな立場の方が研修を受講します。
新入社員はビジネスマナーや自社の全体像、組織的な知識を学びます。
中堅社員は後輩やメンバーを育成するための知識、リーダーシップをとるための知識を学ぶことが多いです。
そして管理職は、人間関係の良好化や目標の明確化など働きやすい職場づくりを行う方法や、マネジメントスキルを学びます。
OFF – JTはOJTと異なり、実践形式ではないため業務に反映することは困難です。
そのため、OJTとOFF – JTを合わせて実施することが大切でしょう。
OJTの進化形「OJD」とは
近年はOJTが進化した「OJD」が注目されています。
OJDとはOn the Job Developmentを略した言葉で、実際の業務を通して将来的に必要な知識・能力を学ぶ研修のことです。
例えば、マネジメント能力や管理職の専門的な知識を習得していきます。
若手社員がリーダー・管理職に就くため、中長期的に育成を進めることが特徴です。
リーダーや管理職への就任後はメンバーを育成することになるため、1on1の知識を身につけることが大切です。
1on1で重要なスキルについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1on1ミーティングで必要なスキルとは?スキルの磨き方もご紹介
また、中小企業やスタートアップ企業、ベンチャー企業では入社後数年でリーダーになることもあります。
早い段階でOJDとOFF – JTを組み合わせて育成を進めることが大切です。
OJTの基本的な3つの方法
OJTを実施するときには、STDCを基本に進めることが大切だと言われています。
STDCとは
- やってみせる(Show)
- 説明する(Tell)
- 実践させる(Do)
- 評価する(Check)
のことです。
また、STDCをもとにしたOJTの進め方3つは以下の通りです。
OJTの基本的な3つの方法
- 1.目標を設定し、育成計画を立てる
- 2.OJTを実践する
- 3.フィードバックを行う
順に解説します。
1.目標を設定し、育成計画を立てる
OJTで効果を生むためには、まず目標を設定します。
OJT担当者のみでなく、人事や部署の責任者、マネージャーなどが連携して目標を定めることが非常に大切です。
なぜなら、自社が求める人物像と部署が求める知識・スキルがなんなのかを互いに理解すれば、効果的なOJTを実施できるからです。
目標設定後には育成計画を立てましょう。
育成対象者によって職種・業務経験年数・スキルが異なるため、しっかりと把握してから計画を立てる必要があります。
また、OJT担当者以外の社員にも指導の協力をお願いするのも1つの手です。
担当者が苦手な分野があったり、担当者以外の社員が得意な業務があったりする場合には指導を依頼することをおすすめします。
2.OJTを実践する
前述したSTDCを実行して、実践的な業務で指導していきます。
新入社員であれば基礎知識、中堅社員であれば習得しているスキルのレベルに合わせた内容を教えましょう。
簡単な業務からスタートし、1人ひとりの習得レベルに合わせて徐々に難易度を上げていきます。
責任の重い業務は大きなプレッシャーがかかってしまうので注意が必要です。
3.フィードバックを行う
1日に1度または1週間に1度はフィードバックを行いましょう。
フィードバックで大切なのは、具体的に伝えること。
できなかったことは、「なぜできなかったのか」「できるようになるためには何をすればいいのか」をアドバイスします。
できたことに対しては、”評価できるポイント”をしっかりと伝えましょう。
評価と改善点のアドバイスを伝えることで社員のモチベーションアップにもつながります。
また、育成を受ける社員が抱えている悩みや不安、疑問を解決することもフィードバックの場で必要な要素です。
1つひとつに寄り添って丁寧に答え、社員の精神面のケアも忘れないように心がけます。
OJTの効果を高めるコツ7つ
OJTは3つの方法を実行することに加え、7つのコツを取り入れることで効果を高める可能性が高まります。
7つのコツは以下の通りです。
OJTの効果を高めるコツ7つ
- 担当者に向いている社員を選ぶ
- 意図的・計画的・継続的のポイントをおさえておく
- 育成対象者の傾向を理解する
- 部署内の課題や育成方針を明確にする
- ワークショップ・ケーススタディを導入する
- 正しいフィードバックを行う
- 振り返りを行う
順に解説します。
担当者に向いている社員を選ぶ
担当者に向いているのは、
- 主体性がある
- 説明がうまく、ほめ上手である
- 自分を主観的・客観的に分析できる
の3つの要素を持つ人です。
OJT担当者は育成対象となる社員に必要な能力を身につけさせる役割を担います。
教育への関心を持つことはもちろん、1人ひとりの性格やレベルに合わせて主体的に行動する必要があります。
もし社員の成長が想像より遅かった場合には、教え方を工夫したり改善点を見つけたりできる方が向いていると言えるでしょう。
社員の成長がみられた場合や工夫していた場合に具体的な内容でほめれば、信頼関係を構築できます。
また、育成対象の社員がスムーズに業務内容を理解するためには、説明のうまさも重要となります。
指導内容を事前に整理して、目的にズレがないように説明しなければなりません。
さらに、自社の目標や戦略、過去のデータを主観的・客観的に分析する能力も必要です。
自社の全体像をとらえて指導することで、育成対象者の業務がどのように会社に貢献できているかを理解できます。
意図的・計画的・継続的のポイントをおさえておく
OJTを実施する中でおさえておきたいポイントは、
- 意図的
- 計画的
- 継続的
であることです。
OJTの目的・目標を“意図的”に考え、効果の高い育成のためにOJTの実施期間やトレーニング内容を計画し、“継続的”に反復的にトレーニングをして知識を身につけていくことが大切になります。
特に”継続的”に指導するのは、OJT担当者が普段の業務に追われおろそかになる場合があります。
しかし、継続的にトレーニングしなければ十分な知識を得られず、トラブルに発展しかねません。
決して放置はせず、根気よく指導することが大切です。
育成対象者の傾向を理解する
育成対象となる新入社員・中堅社員・管理職候補などの傾向を理解することも大切な要素です。
特に新入社員となる若い方々は、
- 失敗を過度に恐れる
- 着実にできる業務からスタートしたい
- 個性を大切にしたい
などの傾向があります。
難易度が高すぎない業務からスタートすれば失敗への恐れが少なくなるため、精神的な不安を抱えずに取り組めます。
また、積極的なコミュニケーションを図り信頼関係を構築すれば、疑問点を聞き業務に活かせます。
効果的にOJTを進めるためにも育成対象者の傾向を理解することは非常に重要です。
部署内の課題や育成方針を明確にする
育成対象者が所属する部署の課題を明確にして育成方針を決めることが必要です。
自社の全体像を理解し業務に取り組む社員・新しいアイデアを発信する社員・堅実に業務に取り組む社員など、
部署内のバランスを考えて育成方針を決めましょう。
もし新しいアイデアを発信する社員が少ない場合には、堅実に業務に取り組む社員を育成するより部署を変えられる社員を生み出す方が効果的ですよね。
課題を解決できる人材を育成すれば、部署・会社の成長に貢献できます。
ワークショップ・ケーススタディを導入する
OJTでは業務や知識を学んだあと、アウトプットできる環境を提供することが重要となります。
知識を振り返りながらワークショップに取り組めば、学習定着率がアップするでしょう。
また、現場で発生するケース・トラブルを用意して考えさせるケーススタディを導入すれば、どのような行動をすればいいのかを考えられます。
正しいフィードバックを行う
OJT担当者が容易と考える業務でも、育成対象者は「正しい方法なのか」「高いレベルの行動をすべきだったのか」と不安に感じます。
不安の解消のためには、良かった点・改善点を正しくフィードバックすることが大切です。
フィードバックにより、育成対象者は次の行動を理解して効率的に成長できるでしょう。
また、こまめにフィードバックして知識を確実に定着させるように意識することも重要です。
振り返りを行う
育成対象者へのフィードバックのみでなく、OJT担当者も振り返りを行いましょう。
育成の中で成功したポイント・失敗したポイントを整理した後、管理職やリーダーが支援することが大切になります。
今後の育成に活かせることに加え、育成対象者も成長できます。
OJT導入時の注意点
OJTにはいくつかの注意点を意識しながら進めなければなりません。
以下3つが注意点です。
OJT導入時の注意点3つ
- OJTの質を保つ
- トラブル・イレギュラー対応方法も教える
- 担当者へのフォロー体制を整える
順に解説します。
OJTの質を保つ
研修にはOJTのほかにOFF – JTやOJDがあります。
OFF – JTの教育内容と違うからどのように行動すればいいのかわからない」と戸惑ってしまうことがないように一貫性のある教育内容にすることが大切です。
自社が目指す方向性や求める人物像などを事前にすり合わせ、矛盾のないようにすることが必要です。
また、OJT担当者によってOJTの質が異なる場合があります。
OJT担当者にも研修を行い、会社が求める育成ができるようにしておきましょう。
トラブル・イレギュラー対応方法も教える
実際の業務ではOJTで学ばなかったトラブル・イレギュラーの事態が生まれます。
混乱しても対応できるように、トラブル・イレギュラー対応方法も教えておきましょう。
また、OJT担当者にもトラブル・イレギュラーのときの対応を伝えます。
自分で考え解決するライン・マネージャーに相談するラインを明確にすることが大切です。
担当者へのフォロー体制を整える
現状分析や育成計画はマネージャー・先輩社員と行っても、OJTがはじまると担当者に任せたままになってしまうケースが多いです。
OJT担当者が悩みや不安などの相談ができるよう、定期的な個別面談やミーティングを行いましょう。
OJTのメリット・デメリット
ここではOJTのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
メリットは以下の4つです。
OJTのメリット
- 1人ひとりに合わせて教育できる
- 実践的なスキルを身につけられる
- 担当者のスキルが向上する
- コストが抑えられる
順に解説します。
1人ひとりに合わせて教育できる
育成対象者によって知識・業務経験などはさまざまです。
OJT実施で1人ひとりに合わせた教育ができれば、効率的に成長させられるでしょう。
実践的なスキルを身につけられる
座学であるOFF – JTと異なり、OJTは実際の業務での指導です。
実務に取り組みながら知識を身につけられるため、スピーディーな成長が期待できます。
担当者のスキルが向上する
OJT担当者は、信頼関係を築くコミュニケーション能力や物事の正しい伝え方、タスクのスケジュール管理などさまざまな業務を担当します。
そのため、マネジメント能力を身につけられます。
また、普段の業務内容を咀嚼しながら指導するため、自分自身の知識を深めることもできるでしょう。
コストが抑えられる
外部講師を呼んで講習を行うOFF – JTと異なり、社員が教育をするOJTはコストが最低限に抑えられます。
ただ、すでにオーバーワークぎみのマネージャーにOJTの教育側を依頼してしまうと、実務に影響が出る可能性があるので、コスト面と人的リソースのバランスはとりつつ導入しましょう。
デメリット
デメリットは以下の3つです。
OJTのデメリット
- 担当者によって効果に差が出る
- 全体像の理解が難しい
- 担当者に負荷がかかる
順に解説します。
担当者によって効果に差が出る
OJT開始後は担当者に任せきりになってしまう可能性があります。
そのため、担当者によって社員の知識への理解度や成長度が異なってしまいます。
OJTのすべてを任せるのではなく、マネージャーや先輩社員もサポートすることが大切です。
全体像の理解が難しい
会社が目指す方向や業務の意味など全体像の把握が難しいのもデメリットだと言えます。
社員のモチベーションダウンにもつながるため、OFF – JTと組み合わせて実施することが必要です。
担当者に負荷がかかる
基本的に1対1で実施するOJTは担当者に負荷を与えてしまいます。
普段の業務に加えて教育を行うため、体力面はもちろん精神的な負担も大きいでしょう。
OJT担当者の業務を分担したり、教育方法を指導したりなどしっかりとしたサポート体制を整えておきます。
また、OJT実施前の成果を求めないことも大切です。
1on1ミーティングの実施も重要
ここでは1on1ミーティングの必要性と簡単な取り組み方法についてご紹介します。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、マネージャーとメンバーが1対1でミーティングを行い、メンバーを育成していくものです。
週に1度、最低でも月に1度程度、定期的に実施することが大切になります。
1on1ミーティングについてより詳しくは以下の記事を参照ください。
1on1ミーティングの方法
1on1ミーティングの方法は以下の通りです。
1on1ミーティングの方法
- 目的を明確にする
- 実施時には傾聴を心がけ、内容を記録する
- フィードバックする
- 改善方法や対処法を決め、支援を行うことを伝える
- 振り返りを行う
順に解説します。
1.目的を明確にする
1on1ミーティングはしっかりと準備を行うことが大切です。
ミーティング内容について情報収集したり整理したうえで、1on1ミーティングの目的を定めましょう。
目的はマネージャー・メンバ0間で共有し、「何のためにミーティングをしているのか」を理解することが大切です。
2.実施時には傾聴を心がけ、内容を記録する
1on1ミーティングはマネージャーが指導する場ではなく、メンバーが自発的に考えて成長する場です。
そのため、話をさえぎったり意見を述べたりするのではなく、傾聴することを意識します。
また、内容を記録することも大切です。
メンバーとの信頼関係を築くためには、前回話した内容を忘れるのはよくありません。。
話した内容を記録して、継続して成長を促せる体制を整えましょう。
3.フィードバックする
メンバーが自発的に考え整理できれば、フィードバックを行いましょう。
ここで注意したいのが、メンバーの意見を述べないこと・指導を行わないことです。
メンバーが考えた内容が、成長につながるのか・課題を解決できるのかを検証できるよう、質問をします。
もしメンバーが課題解決できず成長につながらないと考えた場合には、ヒントを与えながら考えてもらいましょう。
4.改善方法や対処法を決め、支援を行うことを伝える
課題が解決でき成長につながる考えがまとまったら、具体的な改善方法や対処方法を決めます。
中長期的な方法ではなく、今日から実践できる方法を考えることが大切です。
また、行動に移すときにはマネージャーが支援をすることを伝え、安心感を持って取り組める環境をつくりましょう。
5.振り返りを行う
最後に行うのが、振り返りです。
今回話した内容を振り返り、どのような考えを持ってどのような行動をするのかを改めて確認します。
1on1ミーティングで得られる効果
普段業務を行う中では、メンバーの考えや不安をじっくり話す機会は少ないです。
1on1ミーティングを行うことでコミュニケーションが活発になり、マネージャーとメンバーの関係性も良好となります。
また、継続的に実施することにより、メンバーの業務の進捗状況を把握でき、適切な評価を行えます。。
メンバーも正しく評価してくれていると実感でき、不満を解消できるかもしれません。
まとめ:OJTで活躍できる人材を育成しよう
OJTの実施により、自社で活躍できる人材を育成できます。
OFF – JTと組み合わせれば自社の想いや目標などの全体像も理解でき、モチベーションを持ちながら仕事に取り組めるでしょう。
また、1on1ミーティングを実施することも社員のモチベーションを上げる方法の1つです。
自分の考えを整理し、マネージャーとの関係性を築けばスムーズに業務に取り組めます。
OJT・OFF – JTの実施に加え、1on1ミーティングの導入も検討してみましょう。