ピープルマネジメントとは
ピープルマネジメントとはどのような意味なのでしょうか。
また、マネジメントとの違いはあるのでしょうか。
順に解説します。
ピープルマネジメントの意味
ピープルマネジメントとは、メンバー1人ひとりの成功・成長を促進するマネジメントのことです。
仕事の成果やモチベーション、エンゲージメントを向上させることが目的です。
マネージャーがメンバー1人ひとりと向き合うことにより、個人の可能性を引き出せます。
ドイツの心理学者クルト・レヴィンが発表した「クルト・レヴィンの法則」では、「人の行動は周りの環境が関係している」と提言しています。
つまり、ピープルマネジメントでメンバーに環境の変化で影響を与えると、メンバー1人ひとりの行動が変化することです。
マネジメントとの違い
マネジメントとは、組織の成功・成長を促進するマネジメントのことです。
経営資源(ヒト・モノ・カネ)を活用して、マネジメントを進めていきます。
一方でピープルマネジメントは、個人の成長を促し仕事におけるパフォーマンスやモチベーションなどを向上し、1人ひとりの成功にフォーカスします。
ピープルマネジメントも組織の成功・成長を目的としていますが、戦略的に経営資源を活用して組織を成長させていくマネジメントとはアプローチの方法が異なるのです。
ピープルマネジメントが注目される背景
ピープルマネジメントが注目される理由には、次の4つの背景があげられます。
ピープルマネジメントが注目される背景
- 働き方が多様化しているから
- 働く環境が変化を続けているから
- 生産労働人口が減少しているから
- 定着率アップが求められているから
順に解説します。
働き方が多様化しているから
働き方改革という言葉が定着する現代では、働き方の多様化も普及しています。
これまでの終身雇用制度の考え方が終わりに向かい、新しい価値観をもった世代が企業の中核となっています。
そのため、従来のマネジメントでは新しい価値観に対応できません。
メンバーの価値観を受け入れ、共感したりモチベーション・エンゲージメントを高めたりするピープルマネジメントが必要です。
従来の価値観で働くのではなく新しい価値観の尊重して働くことが大切なため、ピープルマネジメントが注目されているのです。
働く環境が変化を続けているから
VUCA時代と呼ばれる未来の予測が難しい時代では、終身雇用制度が終わりに向かい、ダイバーシティの推進や外国人の雇用が主流です。
加えて、AI技術やさまざまなテクノロジーの発展により、働く環境が変化し続けています。
また、育児や介護など家庭の事情によって勤務時間を変更できる時短勤務や、新型コロナウイルスの影響で定着したテレワークなど、さまざまな働き方が生まれています。
働く環境の変化に対応し組織を発展させるためには、トップダウンの組織では成長が見込めません。
そのため、新しい価値観をもつメンバーをピープルマネジメントで成長させることにより、働く環境の変化に適応できるようになります。
結果として、ピープルマネジメントの最終目標である組織の成長にもつなげられます。
生産労働人口が減少しているから
生産労働人口は年々減少しています。
組織内のメンバー数の減少につながり、組織の成功・成長が難しくなります。
組織の成長のためには、メンバー1人ひとりを成長させ生産性をアップさせることが必要です。
そのため、組織やマネージャーが、メンバー1人ひとりの能力や可能性を引き出すピープルマネジメントを行うことが大切となります。
定着率アップが求められているから
前述の通り、生産労働人口の減少により1人ひとりの成長を促すことが大切となっています。
加えて、転職によるキャリアアップ・チェンジを行う方が増加しています。
現在の企業では叶えられないキャリアを求めたり、自分のスキルを認めてくれキャリアアップできる組織を求めたりして転職する可能性が高いです。
スキルの高い優秀な人材を自社に定着させるために、ピープルマネジメントは欠かせません。
メンバーのエンゲージメントを向上できれば、定着率アップにつながります。
ピープルマネジメントの効果4つ
ピープルマネジメントは以下のような効果が見込めます。
ピープルマネジメントの効果
- メンバーのモチベーションが向上する
- メンバーの成長に向き合える
- マネージャーの育成ができる
- 企業の成長につながる
順に解説します。
メンバーのモチベーションが向上する
ピープルマネジメントはマネージャーが指導するのではなく、メンバー1人ひとりが考えて行動するマネジメント方法です。
また、マネージャーはメンバーの成功のためにサポートをし、細やかなフィードバックを行います。
自律性を高めて仕事に取り組めることに加え、マネージャーから適切な評価をもらえるため、モチベーションを高くもって業務に取り組めます。
さらに、エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
マネージャーとメンバーが向き合うことで、遠く感じがちな会社と個人の距離を縮められます。
メンバーの成長に向き合える
マネージャーとメンバーのつながりを重視するピープルマネジメントを行うと、必然的にメンバーとの関わりが増加します。
モチベーション高く仕事に取り組む1人ひとりと向き合うことで、徐々に成長するメンバーを間近に感じられます。
しかし、マネージャーは普段の業務に取り組みながらピープルマネジメントを行うため、定期的なコミュニケーションがなければ成長に向き合えません。
‟1on1ミーティング”を取り入れれば、1人ひとりとの関わりが増え、成長を促し向き合えるでしょう。
1on1ミーティングについては以下の記事を参考にしてください。
1on1ミーティングとは?目的・手法・進め方を解説
マネージャーの育成ができる
ピープルマネジメントでは、将来のマネージャー候補を育成できる効果があります。
自社の目標を理解しエンゲージメントを高め、メンバーのモチベーションを高められる能力をつければ、企業の成功・成長につながるピープルマネジメントを効果的に行えるでしょう。
トップダウンで指示をするのではなく、メンバーとの併走を意識したマネジメントが行えるようになります。
企業の成長につながる
メンバーが自社の目指す場所を理解し、モチベーション・エンゲージメントを高くもって仕事に取り組めば、生産性の向上が期待できるでしょう。
アメリカの調査会社Gallup社によると、日本企業に所属するメンバーのエンゲージメントは非常に低いことがわかっています。
エンゲージメントが低い理由は、適切なフィードバックが十分に行われていないことや、メンバーのモチベーションを上げる施策が行われていないこと、人材育成方法が確立されていないことなどがあげられています。
ピープルマネジメントでメンバー1人ひとりと向き合って高頻度でフィードバックを行い、成功のサポートを実施すれば、エンゲージメントを高め、生産性の向上が可能でしょう。
また、過去の価値観とは違う考え方を持つメンバーが多いため、特に自社の目標への理解を促すことも重要です。
目指す方向を一致させれば、自分の仕事の目的が明確になり、モチベーションをアップできます。
結果的に生産性があがり、企業は成長できるでしょう。
ピープルマネジメントの課題点
ピープルマネジメントの課題点は以下の3つが挙げられます。
ピープルマネジメントの課題点
- 計画的に進めなければメンバーが戸惑う
- メンバーから不満が出る可能性がある
- コミュニケーション能力が必要になる
順に解説します。
計画的に進めなければメンバーが戸惑う
成果を求めるメンバーが多かったり、これまで成果を求められていたマネジメントを受けていたりすると、自社の目標に向かって仕事に取り組むことに戸惑う可能性があります。
特に自社の目標やビジョンを理解していなかった場合には、モチベーションを低下させることもあります。
社内でピープルマネジメントを定着させるために、計画的に進めることが大切です。
メンバーから不満が出る可能性がある
ピープルマネジメントは自社の目標の理解を促したうえで、メンバーの目標をヒアリングして進捗などの管理を行わなければなりません。
その上で適切な評価を実施できないと、メンバーから不満が出る可能性があります。
目標は1人ひとり異なるため、管理が難しいうえに公平な評価を行うことは難しいと言われています。
メンバーと深く関わり感情移入してしまうと、さらに公平さがなくなるかもしれません。
また、成果主義の時代に仕事をしていた人がマネージャーになる傾向も強いため、成長に対して評価してもらえず不満が生まれることもあるでしょう。
目標管理や適切な評価ができるツールを導入したり、マネジメント研修を行ったりして、対策を行うことが大切です。
また、マネージャーからも不満が出る可能性があります。
メンバーと深い対話を行うことには時間と負担がかかりすぎてしまいます。
ピープルマネジメントの担当を依頼する場合は、人事部や上層部がマネージャーの仕事をサポートするようにします。
コミュニケーション能力が必要になる
ピープルマネジメントで重要となるのが、1人ひとりとの深い対話です。
信頼関係を築き、メンバーの気持ちを引き出せるような高いコミュニケーション能力が必要です。
普段から会話ができる環境があれば問題ありませんが、必要最低限の会話しかしていない場合は信頼関係を築くことに難しさを感じるかもしれません。
はじめから関係性をよくすることは困難のため、少しずつ信頼を得られるように意識してコミュニケーションをとりましょう。
高いコミュニケーション能力を身につけるために、担当者に研修を行うことも有効的です。
ピープルマネジメントの例
ピープルマネジメントの実施には、どのようなことを取り入れればいいのでしょうか。
ピープルマネジメントの例
- 1on1ミーティングを実施する
- メンバー1人ひとりの目標を設定する
- リアルタイムでフィードバックする
- 分析できるツールを導入する
順に解説します。
1on1ミーティングを実施する
ピープルマネジメントで取り入れてほしいのが、1on1ミーティングです。
1on1ミーティングとは、マネージャーとメンバーが1対1でコミュニケーションをとること。
マネージャーがメンバーに一方的に指導・指示するのではなく、メンバーの意見を聞き、答えを自ら出してもらうことが特徴です。
ピープルマネジメントはメンバー1人ひとりの成長を促進ため、1on1ミーティングは欠かせない役割を果たしていると言えます。
はじめは定期的に1on1ミーティングを行い、ノウハウや経験を積み重ねメンバーの傾向がわかれば、1人ひとりにあわせて頻度・時間を設定できます。
メンバー1人ひとりの目標を設定する
メンバーが成功・成長できるように、1人ひとりの目標を設定します。
重要となるのは、メンバー自ら目標を設定することです。
マネージャーが指示するのではなく、自律性を持って目標を定めることが重要。
適切な目標が設定できるようにフォロー・サポートを行います。
目標が設定できたら、進捗を管理します。
目標の進捗や達成は評価につながります。
適切な評価を行うためにも、進捗管理は非常に大切です。
リアルタイムでフィードバックする
ピープルマネジメントでは評価が大切です。
その中でも、即座に行うフィードバックが重要な要素です。
リアルタイムなフィードバックは、目標達成においての課題を即座に修正できることに加え、メンバーの満足度や納得度もアップします。
月に1度・半年に1度など期間の空いたフィードバックでは納得感も喜びも少ないうえ、1か月間・半年間で行った業務の意味がなくなる可能性があります。
メンバーのモチベーションが低下することに加えて業績にも影響するでしょう。
そのため、できるだけ早くフィードバックを行うことが大切です。
また、課題が修正・解決できた場合には、他チームに共有すると効率もあがります。
分析できるツールを導入する
ピープルマネジメントの成果を管理するために、分析ツールの導入をおすすめします。
普段の業務に取り組みながらメンバー1人ひとりの成果を管理するのは難しいです。
また、マネージャーの評価が適正かも把握できません。
分析ツールを導入すれば、ピープルマネジメントに必要な情報を統計的に解析したデータを見られます。
公平な評価につながり、メンバーの満足度も上がるでしょう。
ただし、トップダウン型でツールの導入を指示するのではなく、マネージャーが導入前にツールを試せる状況をつくるなどして、自主的に導入する姿勢に持っていくことが大切です。
ピープルマネジメントを成功させる7つの方法
ピープルマネジメントを成功させるために、マネージャーは以下のことを意識することが重要です。
ピープルマネジメントを成功させる方法
- メンバー1人ひとりにマネジメントする内容を決める
- メンバーと関わる機会を増やす
- メンバーの話をしっかりヒアリングする
- 「はい・いいえ」だけで答えられる質問をしない
- メンバーの意見を大切にする
- 公平に評価できる仕組みをつくる
- 高頻度でピープルマネジメントを行う
順に解説します。
メンバー1人ひとりにマネジメントする内容を決める
メンバー1人ひとりと向き合うために、マネジメント内容を決めましょう。
メンバーの成功・成長のためには適切な目標設定が大切です。
目標設定をしたうえで、どのようにマネジメントしていくのかを計画立てましょう。
また、マネージャー・メンバー間のコミュニケーションを適切に行うため、そして可視化しにくい業務への意欲・能力・モチベーションなどを把握するためにも、マネジメント内容をしっかり決めておくことが重要です。
メンバーと関わる機会を増やす
仕事の成果やモチベーション、エンゲージメントを向上させる目的のピープルマネジメントでは、メンバーとの定期的なコミュニケーションが大切です。
モチベーション・エンゲージメントをアップさせるために、「しっかり見てくれている」「気にかけてくれている」と認識させるとよいです。
何も問題が起きていない場合でも関わりをもつことも必要だと言えるでしょう。
進捗はもちろん、メンバーのメンタル面なども日々チェックするためにコミュニケーションをとります。
普段からのコミュニケーションはもちろん、1on1ミーティングを取り入れるなど定期的に関わる機会を増やすことを心がけます。
メンバーの話をしっかりヒアリングする
メンバーと話をする時には、しっかりヒアリングすることが大切です。
メンバーが「どのようなことが仕事のモチベーションか」「どのような悩みを持っているのか」「将来どのようなキャリアを目指しているか」など、寄り添って話を聞きましょう。
一見何も問題がないように見えていても、メンバーが抱えている意見・課題があるかもしれません。
定期的なコミュニケーションの場では、傾聴する姿勢を大切にして、聞き出すことを心がけます。
また、モチベーションやエンゲージメント、定着率アップのためにもヒアリングは重要です。
メンバーの考え・状況を把握し、それに寄り添ったサポートを行うきっかけとなります。
「はい・いいえ」だけで答えられる質問をしない
ピープルマネジメントで大きな役割を果たす1on1ミーティングなどのコミュニケーションの場では、「はい・いいえ」だけで答えられる質問をするのはよくないと言われています。
「はい・いいえ」の答えだけだと、メンバーが本当に考えていることや悩んでいることを引き出せません。
5W1Hと呼ばれる‟どのように” ‟なぜ” ‟何” ‟いつ” ‟どこで” ‟誰”を取り入れて質問することで、メンバーの考えを知るきっかけとなります。
また、結論を急ぐのではなく、メンバーが考えをまとめられるまで待ち、最後まで話を聞くことが大切です。
メンバーの意見を大切にする
メンバーの自律性を高めるピープルマネジメントでは、マネージャーが一方的に指示・指導するのは賢明ではありません。
メンバーの考えや課題、悩みを決めつけるのではなく、「なぜそのように考えるのか」という視線で話を聞き、意見を尊重することが重要だと言われています。
しかし、意見を尊重するあまり、自社の方向と正反対に向かうとピープルマネジメントの意味がありません。
間違った方向に行っている場合には軌道を修正できるよう指摘することが大切です。
意見を尊重すること・指摘することをバランスよく行い、メンバーのモチベーションとエンゲージメントをアップさせます。
公平に評価できる仕組みをつくる
ピープルマネジメントの課題となるのが、公平な評価を行うことです。
マネージャーの感情に左右されずに評価できる仕組みをつくりましょう。
例えば、360度評価。
360度評価とは、マネジメント担当者のみでなく、同僚、後輩などさまざまな立場のメンバーが評価する仕組みです。
複数のメンバーで多角的に評価することで、公平性が生まれ、メンバーのモチベーション・エンゲージメントを高められます。
360度評価については以下の記事を参考にしてください。
360度評価とはどのようなもの?目的・効果・注意点を徹底解説!
公平に評価できるツールを導入したりして、メンバーのモチベーションを高めていきましょう。
長期的にピープルマネジメントを行う
ピープルマネジメントは長期間行うことで効果を発揮します。
成長の速度や度合いには個人差があり、メンバーとマネージャーが成長を実感するまでに時間がかかるからです。
そのためピープルマネジメントでは長期的な視点を持って、メンバーの成長を促進するプランを立てましょう。
また長期的にピープルマネジメントを行うにあたって重要なのが、メンバーとの信頼関係の構築です。
信頼関係の構築には、メンバーと高頻度にコミュニケーションができる1on1ミーティングの活用を推奨します。
1on1ミーティングの進め方や成果を出すためのポイントを次の記事で解説しています。
気になる方はぜひご覧ください。
『1on1ミーティングの進め方と結果が出やすい4つのコツとは?』
ピープルマネジメントでメンバー・企業の成長を促進しよう
メンバー1人ひとりのモチベーション、エンゲージメントを向上させることを目的にし、成功・成長を促進するピープルマネジメント。
メンバーの成長は企業の成長につながるため、ピープルマネジメントは非常に重要な取り組みです。
働き方や働く環境が多様化し、自社へのエンゲージメントが低い人が多い現代では、優秀な人材を育成して生産性をアップし、定着率を上げるための大きな役割をもちます。
しかし、メンバーに寄り添ったり計画的に実施したり、マネージャー自身のスキルがなかったりすると、企業の成功・成長させることは難しいです。
マネージャーへの研修やリアルタイムなフィードバック、1on1ミーティングの実施で、最大限の効果を生めるよう環境を整えましょう。
「revii(リービー)」は、メンバーの定着率アップ・マネジメント課題の解決を支援する‟1on1ミーティング”サービスです。
可視化しづらい1on1をデータ化・分析することにより、マネージャーのマネジメントスキルやメンバーの状態を把握することができます。
1on1ミーティングを取り入れながらピープルマネジメントに取り組み、メンバー、そして企業の成功・成長を促進していきましょう。