人材育成のマネジメントとは
人材育成とは、企業の成長と発展に貢献できる社員を育てることを指します。
社員の能力やパフォーマンスの向上で、企業の業績アップにつながります。
そのため、企業の成長に不可欠な取り組みです。
人材育成は指導する社員にとってもメリットがあり、人材育成の経験を通して社員自身の成長も期待できます。
人材育成とマネジメントとの違い
人材育成とマネジメントは同じ意味に受け取りがちですが、意味は異なります。
まず人材育成は、企業内のマネージャーがメンバーを育てていくという意味です。
企業理念や価値観をメンバーに伝えながら、必要な知識やスキルを身につけさせます。
次にマネジメントは、マネージャーが企業を運営していくという意味です。
企業を運営し、成果を上げるためにスケジュール管理や進捗管理などを行います。
つまり、メンバーを育成することが人材育成、企業を成長させることがマネジメントということになります。
人材マネジメント
人材育成と類似する言葉で、人材マネジメントがあります。
人材マネジメントとは自社の優位性や維持、強化などを他社と比較しながらの管理が目的です。
具体的な取り組みは、下記の3つがあげられます。
- 社員の成長を考えた職場環境の整備
- 社員のスキルアップ研修の実施
- 評価制度や昇進制度の仕組みの整備など
人材マネジメントは経営の意味もあり、人事管理に経営面や企業を発展させる要素として捉えられています。
人材開発との違い
人材育成と人材開発では、似た場面で使われる言葉ですが、対象の社員と目的が異なります。
- 人材育成:対象は新入社員や管理職など階層別・目的は具体的なスキルアップ
- 人材開発:対象は全社員・目的は社員の能力やスキルアップの最大化
人材育成の目的と課題
企業にとって人材育成は重要な取り組みですが、具体的な目的と取り組むうえでの課題はどのようなものがあるのでしょうか。
人材育成の目的
人材は企業にとって、重要な資源です。
昨今では高齢化や少子化が進むにつれ、有能な人材の確保が容易ではなくなっています。
そのため、社員の人材育成がこれまで以上に必要とされています。
人材の育成の目的は、業務の効率化や生産性の向上です。
また、社員のエンゲージメントを向上させることにより離職率を抑える効果もあります。
さらに人材育成は、社員に企業理念がより浸透し法令厳守も定着できます。
社員の能力向上のみにとどまらず、パワハラなどのコンプライアンスに伴う理解度も深められることも目的です。
人材育成の課題
企業において重要とされている人材育成ですが、人材開発を後回しにされるケースは少なくありません。
育成するマネージャーの業務が多忙すぎる、リモートワークでコミュニケーションが取りにくいなどの要因があげられます。
また人材育成に注力しても、管理職の人材育成に必要なマネジメントスキルが不足していたり、育成されるメンバーの士気が低かったりなども、課題の1つです。
人材育成とマネジメントが求められる背景
企業を運営する中で、人材育成とマネジメントは欠かせない役割を持ちます。
では、なぜ人材育成とマネジメントが求められているのでしょうか。
人材不足に対応するため
現代の日本は少子高齢化の影響で、人材不足に陥っています。
人材不足の中で企業を成長させるためには、現在のメンバーで成果を上げる方法と離職を防止する方法を考えなければなりません。
そのため、企業の成長を目指してマネジメントを行い、メンバーの成長のために人材育成が必須となっています。
人材育成を行えば、メンバーのモチベーションアップだけでなく、エンゲージメントの向上も期待できます。
モチベーションアップでメンバーの活躍を促進し、エンゲージメントの向上で離職率の低下を目指すのです。
働き方の多様化
これまでは、終身雇用制度やオフィスでの勤務、設定した時間での勤務などが求められてきました。
しかし、現在はキャリアアップによる転職の活発化、テレワーク、フレックスタイム制、時短勤務など働き方が多様化しています。
働き方の多様化により、マネジメントや人材育成を強化しなければならないのです。
人材育成に必要なマネジメントスキル
人材育成の課題にもあげましたが、人材育成に必要なマネジメントスキルはどのようなものでしょうか。
ここでは、4つのマネジメントスキルをご紹介します。
- 目的管理能力
- コミュニケーション能力
- 育成のための計画力
- フィードバックとフォロー力
目的管理能力
目的管理能力とは、自分や他者を目的達成に導くために必要な能力です。
業務の進捗状況の把握・管理や達成までの計画、スケジュール管理が求められます。
マネージャーは特に求められるスキルの1つで、メンバーが自分の目標に向けてどのような行動しているのかを管理し、積極的に報連相をするよう促します。
目標を立てる際は、少しの努力で達成可能なレベルの目標設定がポイントです。
現状と最終的な成果に差がある場合には、途中のプロセスにも目標を追加し、実現的な目標管理を行うことが重要となります。
コミュニケーション能力
人材育成のマネジメントをするうえで、常に必要とされるスキルはコミュニケーション能力です。
現場との密なコミュニケーションにより、正確な現場の状況が把握できます。
このように、人材育成マネジメントで欠かせない正確な情報収集や信頼関係の構築にコミュニケーション能力は、重要なのです。
また、コミュニケーション能力により育成の進捗や日頃の様子などが理解でき、相手によってマネジメント方法を柔軟に変更できるスキルも身につきます。
育成のための計画力
人材育成に取り組む際は、計画立てが必要です。
やみくもに、経営陣が求める人材をメンバーに押し付けるのみでは、現状との差が大きい場合、メンバーに負担が大きなものとなります。
さらに、経営陣の信用も失いかねません。
まず現状を知っているマネージャーや管理者が、理想とする人材と現状を把握したうえで、細かく目標を設定し、育成の計画を立てます。
その後、進捗と現状を管理し状況に合わせ、ときには柔軟なスケジュール調整を行うことも大切です。
フィードバックとフォロー力
定期的なフィードバックやフォローは、人材育成に取り組むなかで重要となります。
コミュニケーション能力とも似ていますが、人材育成の進捗や状況に応じてフィードバックやフォローを行います。
目標に取り組む期間が終了したタイミングや、1on1ミーティングを行う際に取り入れるとよいでしょう。
人材育成に大切なこと5つ
次に、人材育成に取り組むうえで、押さえていただきたい大切なことを5つご紹介します。
- 目的を明確にする
- 自主的に行動する環境をつくる
- 実践とサポート体制を構築する
- 共通認識を持つ
- PDCAを構築する
目的を明確にする
人材育成の目的を明確にします。
人材育成を行う対象者に、会社からどのような人物像を求められているかを提示します。
例
- 新入社員育成の場合:企業理念を理解し、理念に沿った社員
- リーダー育成の場合:リーダーに必要なスキルやリーダーシップを養い、チームワークを構築する社員
このように目的を理解できると、人材育成に取り組む社員は目標に取り組みやすく、施策の効果が高まるでしょう。
自主的に行動する環境をつくる
人材の育成において、自分で考えて行動できることが1つの成功と言えます。
そのため、自主的な行動を促す環境の整備も大切なポイントです。
例えば古くからある社内ルールや社内の風土など、チャレンジしにくい社風がある場合、メンバーの自主性は損なわれてしまいます。
常に新しい風を社内に取り入れ、人材育成のためのチャレンジを促し、失敗も受け止める雰囲気づくりが必要です。
実践とサポート体制を構築する
人材育成の施策で学んだ内容を定着してもらうために、その後の実践も大切です。
例:リーダー育成の場合
- 組織内で業務上のつながりが深いメンバーでチームを作りリーダーを決める
- リーダーに一定の権限を委譲しチームを管理してもらう
- 進捗・結果を報告してもらう
実際に、少人数のリーダーとしてメンバーの管理・指導で、対象者は必要なスキルを自分なりに再発見するかもしれません。
また、課題や問題が発生した場合は、サポートを行いマネジメントに必要なスキルを身につけてもらいましょう。
経営陣との共通認識を持つ
人材育成は、経営陣や人事を管理する部署、管理職などが共通の認識を持ち連携しながら行うことで、効果を発揮できます。
認識したい項目は、人材育成が企業として重要なテーマであることと、企業のミッションやビジョンに沿った人材育成の取り組みが必要なことです。
まず、上層部が人材育成について話し合うことからの着手をおすすめします。
PDCAを構築する
企業として人材育成のPDCAを回すことも大切なポイントです。
最近では、社員の学びや成長を可視化する企業も増えてきました。
定期的なテストの導入で、社員の知識やスキルアップを定量的に把握する取り組みも有効です。
すぐに取り組める具体的な人材育成マネジメント手法とは
社員のマネジメント方法は、人事評価制度など複数あります。
ここでは、人材育成で効果的なマネジメント手法を4つご紹介します。
1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、マネージャーとメンバーが1対1で定期的に行うミーティングのことです。
半年に1回程度行う人事評価面談とは異なり、1on1ミーティングは週に1回、最低でも月に1回行います。
実施目的は、メンバーの成長を促進させるためです。
マネージャーが一方的に指示・指導するのではなく、メンバー自身に考えさせて能力を引き出します。
メンバーの成長が大切な人材育成において、非常に重要な要素となります。
1on1ミーティングについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
1on1ミーティングには6つのメリットや効果がある!進め方も解説
OJT制度の導入
OJTとは、On the Job Trainingの略称で、実務を通じて必要なスキルを習得する手法です。
実践において、必要な能力を補うことが目的で、即戦力となる人材の育成が特徴です。
主に新人を対象として、同じ部署内の先輩メンバーが新人メンバーの育成担当となり、育成を行います。
先輩メンバーにも、育成担当をしてもらうことでマネジメントスキルが向上できます。
eラーニングの導入
eラーニングとは、パソコンやタブレット端末などで、学習や研修を行う手法です。
インターネット環境が整備されている場所では、どこでも受講でき、管理者も時間を取られず、受講した進捗もシステム上で管理できます。
また、対面の講義などでは、時間に限りがあり細かな部分が削られる場合も多々あります。
しかし、eラーニングでは、一定の時間で多くの題材を扱うことが可能です。
メンター制度の導入
メンターとは、育成担当者の先輩メンバーが後輩メンバーに対し、業務に関するフォローやアドバイス、メンタルサポートを行う人を指します。
多くの場合、ほかの部署の先輩メンバーがメンターとなるため、後輩メンバーは同じ部署では話せない本音も言いやすくなるでしょう。
メンター制度は、育成対象の後輩メンバーの成長を促すメリットのみでなく、メンター役の先輩メンバーにもメリットがあります。
指導力やメンタル面でのサポートなどマネジメントスキルを養い、業務上での視野も広くなるでしょう。
人材育成・マネジメントに役立つ資格
人材育成・マネジメントには役立つ資格が3つあります。
- キャリアコンサルタント
- PMP
- ビジネスマネージャー検定
順に解説します。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは国家資格で、メンバーのスキルの開発やスキルアップに関する相談に乗り、アドバイス・指導を行える資格です。
キャリアコンサルタントは、メンバーのスキルアップなどのために、以下の6つのステップをサポートしていきます。
- 自分を理解する:仕事の適正や持っているスキルを明確にする
- 仕事を理解する:これまでの仕事・現在の仕事内容を理解する
- 啓発的な経験をする・思い出す:インターンシップや職業訓練、経験を思い出す
- 自分の意思を決める:キャリアプランや目標(短期・中長期)を設定する
- 目標のために実行する:キャリアプランや目標実現のために行動する
- 携わる仕事に適応する:取り組む業務に適応できるよう努める
PMP
PMPとは、プロジェクトマネジメント能力があることを証明できる資格です。
世界共通の資格であるため、グローバルな人材としても証明されます。
PMP取得により、マネジメントで必要な進捗管理やスケジュール管理などのプロジェクト管理に活かせます。
広い視点と知識が身につけられるため、企業運営においてのリスクも考えられるようになるのです。
ビジネスマネージャー検定
ビジネスマネージャー検定とは、マネジメントに必要な基礎知識を学べる検定です。
企業の成長のために欠かせない、組織と人材に関すること・業務に関すること・リスクに関することを学べます。
コミュニケーション能力や人材育成能力も身につけられるため、マネジメントに加え人材育成にも活かせます。
自社にあった人材育成のマネジメントで企業育成へつなげる
会社にとって人材は、人財とも呼ばれるように、企業にとって有益で大切な人を指します。
「社員は財産」と考える企業も少なくありません。
このように人材育成は、単に社員の能力を伸ばすものではなく、企業の財産として長期的に貢献できる人を育てる取り組みなのです。
人材育成は、企業によって考え方はそれぞれ異なります。
また、人材育成は中長期にわたり時間をかける必要があります。
ぜひ、自社にあった人材育成のマネジメントをしっかり行い、ぶれない企業成長へつなげていただきたいです。