登壇者プロフィール
株式会社ZENKIGEN
HRDX事業本部 revii事業部 カスタマーサクセスチーム マネージャー
坂本 珠里
新卒にて株式会社リクルートスタッフィングに入社。大手法人営業をはじめとし、総勢400名程度の派遣スタッフマネジメントに従事。その後、株式会社サイバーエージェントにてベンチャー企業を中心としたWEB広告プランニングに従事したのち、「人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」という当社ビジョンに魅かれZENKIGENへ入社。
harutaka事業部でのEnterpriseセールス経験を経て、2022年4月にrevii事業部にて異動。現在はセールス・カスタマーサクセスを中心に担当。
▼「revii(リービー)」へのURLはこちら
https://revii.jp/
対話を起点とした高パフォーマンスチームの作り方
坂本:今日は、対話を起点としてパフォーマンスチームを作る方法についてお話しします。
——パフォーマンスが高いチームを作るための要素とは
パフォーマンスが高いチームを作るためにはどのような要素が必要でしょうか。
高いパフォーマンスを発揮するチームを作るためには、次のような要素が必要です。
- 魅力的なビジョンがある
- 優れた戦略や筋の通ったストーリー
- 実行に必要なアサインメント
- 目標設定やメンバーのスキル
- 気合いやモチベーション
これらには、魅力的なビジョン・ミッション・目標などが含まれます。また、経営戦略・事業戦略・人事戦略・組織戦略など、実行するための戦略も重要です。さらに、組織体制や目標管理など、実行するための戦術も求められます。
ただし、重要なのはこれらを実行するのは誰なのかです。優れた目標の達成や戦略・戦術を実行するのは人です。現場の最小単位である1チーム1メンバーが、担います。どれだけ魅力的な目標があっても、優れた戦略や戦術があっても、実行する力が弱ければ望む結果は得られません。
メンバーが目標や戦略を正しく理解した上で、生産性高く自走していくのは非常に難しいことです。しかし、実現していくのがマネージャーの最も重要な役割だと私たちは捉えています。
メンバーの主体性や生産性を引き上げていくことが全てのベースです。ベースがなければ、どれだけ優れた戦略があっても全て絵に描いた餅になります。
——高パフォーマンスチームを築くマネジメントとは
マネジメントとは何かを改めて考えてみたいと思います。
私たちreviiチームは、マネジメントの究極的な目的について、チームメンバーやチーム全体の業務遂行効率を向上させることだと定義しました。そのためにさまざまなアプローチを用いてメンバーが自走できる環境を作り上げ、メンバーのモチベーションを高め、目の前の仕事に前向きに取り組めるように持っていくことがマネジメントの役割だと考えています。
私たちはメンバーが気持ちよく仕事を進められる環境を常に作り上げることが大切だと考えています。そうすると、メンバーはエンゲージメントが高まり、「マネージャーは自分のサポートをしてくれる」「この会社で働くことで自分は生き生きしている」と感じるでしょう。環境が整えば、生産性も向上させることが可能です。
結果的に評価や役職が上がったり、昇給したりすることがあり、さらにメンバーのモチベーションにつながることもあります。このような流れを図にまとめました。
「エンゲージメント」という言葉が昨今で注目されており、皆様の会社でもエンゲージメントサーベイを実施されている場合が多いのではないかと思います。
ギャラップ社が提供するエンゲージメントサーベイを紹介しましょう。この指標は実際には多くの質問がありますが、簡略化すると約80%の項目がマネジメントに起因することがわかっています。例えば、「上司や同僚はあなたのことを気にかけてくれますか?」「あなたの意見は尊重されていますか?」など、マネジメントが生み出す機会や結果に基づく項目が非常に多かったです。
さらに、エンゲージメントが上がると生産性が向上することが実際のデータで証明されました。
個人の労働生産性の向上は、働きがいと正の相関関係があることが知られています。生産性が上がっていくと退職率が下がることもデータとして示されました。要するに、生産性が高い状態は、十分に素晴らしいパフォーマンスを発揮できるわけです。いわば、キラキラと輝いていて楽しくてやめられない状態といえます。
結論、パフォーマンスの高いチームや生産性の高いチームを作るためには、マネジメントが最も重要な項目です。
——画一的なマネジメント手法からはリスキリングが必要
ここからは、高いパフォーマンスを持つチームを作るために、どのようにマネジメントを実行するかについて説明します。それに先立ち、チームメンバーの自走能力やモチベーションが人によってまったく違うことに触れておきましょう。
例えば、よりストレッチな目標を渡して成長を促しても、動ける人は少ないものです。「この業務やっていて意味あるのかな」「今の戦略をもう少し理解してから業務に取り組みたい」と思う人もいます。あるいは、成長よりもプライベートや家族のことを大切に考えたい人もいます。
メンバーが今まで生きてきたバックグラウンドや価値観は異なるため、画一的なマネジメントでは成立しません。
このことはリクルート社が調査した「Z世代の新人若手の育て方」に関するデータでも実証されています。例えば、若手人材が職場に求めることランキングでは「尊重や助け合いを求めたい」「上司には個別丁寧な指導や傾聴・承認を求めたい」といった回答が上位に食い込んでいました。
一方で、「仕事に情熱を持って取り組むことを求めたい」「周囲を引っ張ってくれる強いリーダーが欲しい」といった回答はスコアが下がっています。また、「上司に求めたいこと」を見ると、「自分の人間性や価値観をフラットに認めてくれていると感じれば、本音で話す」といった回答が多く見られました。
このような結果から、従来の画一的なマネジメント手法からはリスキリングが必要になっていることがわかります。
——個別の会話をしながら適切なアプローチを選ぶべき
マネジメントには、個別の状態に応じて適切なアプローチを選ぶことが必要です。個別の会話をしながら、次のようにメンバーに応じたアプローチを取ることが重要です。
- 成長がモチベーションになる方にはストレッチの目標を提供する
- 思考優位的になってしまう方には事前に戦略をインプットする
- 家族やプライベートを大切にしたい方には価値観を理解する
——将来の長期的な見通しが立てばパフォーマンスは上げられる
1on1ミーティングとマネジメントの位置付けについてご理解いただけたと思います。ここからはメンバーに自走状態でパフォーマンスを上げてもらう上で重要な基本構造を最後にお伝えします。
当たり前のことですが、人生があって将来のキャリアがあって、その上で現在の業務があることを忘れてはいけません。ゴールの長期的な見通しが立つほどマイルストーンがわかり、そこに向かってスピード感を持って進められます。
メンバーの方々も当然ながら同じで、「将来どうなりたいか」「人生どうありたいか」と今の業務がしっかり接続される状態になれば、今よりも自発的に生き生きと仕事に取り組み、パフォーマンスがどんどん上がっていくでしょう。
余談ですが、私も社会人1年目のときにマネージャーに「どのようなWillがありますか?何がしたい?」と言われて「わかりません」と面談から逃げる日々を送っていました。自分がまだまだパフォーマンスを発揮できていない中で、事業責任者やマネージャーになりたいなどといったWillは描けません。
Willをいきなり描かせるのではなく、Mustの段階で着実に経験を積み、Canの部分でできることを増やすのが大切です。Must→Can→Willのサイクルは基本構造として知っておきましょう。
実践的な1on1ミーティングのはじめ方
——相互理解や信頼関係が1on1ミーティングには不可欠
1on1ミーティングをはじめる前に、まずマネージャーとメンバー同士で相互理解を深める必要があります。メンバーから適切なタイミングで相談を受けたり、適切な業務アサインやサポートを実現するためには、お互いに理解がなければなりません。上司か部下かは関係なく、関係値がないままだと悩みごとは相談できず、目標を聞かれてもどのような角度で回答すればいいかわかりません。
また、信頼していない人からパスを受け取るのは難しいです。仮に仕事を任されても、何を期待されているのかわかりません。
そのため、私たちは以下の表をマネージャーの皆様にお渡ししながら、相互理解を目的としてまずは会話してみましょうとお伝えしています。1on1ミーティングのアジェンダに困ったときは以下のフレームを参考にしながら皆さんに対話をしていただいています。
——まずは相手の過去を知ることからはじめる
私たちは、まずは1、2回目のミーティングで相手の過去を知ってくださいとお伝えしています。パーソナリティや振り返りといった対話テーマを通じて、メンバーとマネージャーがお互いを理解します。
マネージャーがバインダーを持って1個ずつ聞いていくと、信頼関係を築けません。まずは自己開示をして、「自分としてはこうなんだけど、あなたはどうですか」という形で引き出すのがポイントです。その後、現在の価値観や考え方、人生の目標、理想の働き方、モチベーションなども相互に理解していくのがおすすめです。
ここまで理解できると、ようやくいいパスが振れるまでの準備が整います。ここから未来に向けてしっかりと接続するために、将来のキャリアすなわちWillの話をして、アサインメントに活かしましょう。
——実践的な1on1ミーティングに役立つreviiの機能
reviiのライブルームの画面にはメンバーには見えない形でメモ欄があり、マネージャーだけがメモを取れるようになっています。メモの履歴は次回以降の1on1ミーティングでも呼び出せるため、書き足しながらの運用が可能です。
もう少し体系的にしっかりと管理する場合には、ワークシートをおすすめしています。将来のキャリアパスや今後取り組みたい業務についてメモを取り、スキルセットを活かしながらメンバーを育成していくことが大切です。
相互理解は、全5回で終わりますが、6回目以降も1on1ミーティングは当然続きます。6回目以降の1on1ミーティングの目的はマネージャーがトップダウンで決めるのではなく、メンバーと一緒に考えて合意していただくと非常によい場が作れると思っています。そして週に1回なのか隔週に1回なのか頻度をしっかり決めましょう。最初は6回目以降のことは考えず、ワークシートを埋めてみてください。
最後に
昨今では研修でもよく取り入れられるようになってきた1on1ミーティングは、メンバーのための時間と捉えられることもありますが、私はメンバーのためにマネージャーが考える時間として位置づけています。
マネジメントの業務とは優れた戦略や戦術を考え、実行するための体制を整えることです。そのためにはマネージャーがメンバーの話をしっかり聞き、相互理解を深め、メンバーを承認することが必要です。そのような時間として取り組んでいただけると1on1が非常によいものになると思っています。
質疑応答
——マネージャーからWillを聞かれ答えられなくて困ったというお話がありましたが、ご自身はどのようなサポートを得てWillが見えてきたのでしょうか。また、Willを叶えるためにマネージャーはどのようなサポートをするといいでしょうか。
私の話になってしまい恐縮ですが、今ではMust→Can→Willのサイクルを辿ってようやくWillが見えてきたと感じています。
目の前の業務をこなしていくことで視野が広がり、ミッションを自分で達成できるようになり、「事業責任者をやれるかもしれない」と視座が上がってきたのが現在です。
マネージャーのサポートについては、Willを叶えるための業務をアサインメントで振れることが一番理想的です。
しかし、会社はWillを考える場所ではないと思います。メンバーは自分でその会社の環境を選んでいるため、マネージャーがサポートできることは限られています。マネージャーができることは、メンバーのWillを知っておいて振れる準備をすることや、目の前の仕事をマスターさせて、できることを増やす取り組みです。
——マネージャーに意識変革してもらうためにどういった取り組みができますか。また、変革しやすい人や組織の特徴もあればお聞きしたいです。
結論から言うと、大人の意識を変革するのは簡単なことではありません。むしろ不可能に近いと私はいろいろなプロジェクトを通じて思いました。
意識を変えようと思って取り組むのではなくて、行動から意識が変わるのだと、逆の発想を持って取り組んでいくとよいです。
例えば、reviiを使って発話比率が8割であることがわかると、マネージャーは「自分が8割も話していたのか」と内省します。その危機感が人を変えていくものだと思います。
——reviiで人事側はどのようなデータが見られるのでしょうか。せっかくオンラインでやるなら実施の有無が見られたらいいなと思っています。
データは大体のものが見られます。1on1ミーティングを何回、何分やっていたかという実施のログも閲覧でき、何割くらいトークテーマを話していたかも全て人事の皆様にデータとしてお渡しが可能です。
また、AIのスコアや定性的なアンケートの結果なども報告しています。ただし、録画データや文字起こしデータなどセンシティブなものは、現場のマネージャーのみが閲覧できるように制限をかけています。
reviiのご紹介
reviiは1on1ミーティングをサポートするサービスです。オンラインで面談すると映像や言語の解析を通し、マネージャーに対してコミュニケーションを定量化して可視化して、フィードバックとともにレポートを提供します。
さらに、マネージャーがどのような内容を何割ずつ発言していたかなどを可視化できます。承認や傾聴などの行動が相手にどの程度伝わっていたかを定量的に計測することも可能です。メンバーに対しては、仕事に対する積極性やマネージャーへの心の開放度などを解析し、マネージャーにフィードバックをします。
今までのマネジメントは、マネージャーの知識や経験に非常に頼るものでした。しかし、reviiは積極性を縦軸、開放性を横軸としてメンバーの状態を毎回の1on1ミーティングごとにプロットして客観的に教えてくれます。
プロットされた表を見ながら、マネージャーの皆様が次どのようにマネジメントを仕掛けていくかをお手伝いしているのが、reviiのメインバリューです。
あらゆる指標を使ってマネージャーのスキルを定量的に可視化し、今はあらゆる企業様と取り組みをしております。従来のマネジメント研修やコミュニケーション研修では、全員に同じコンテンツを提供することが多かったです。しかし、reviiを使うことによってセグメントで切り分け、個別に最適な改善策を提供できます。
–この度はご登壇いただき、誠にありがとうございました。