登壇者プロフィール
株式会社EVeM 取締役COO:紺野 佳南 氏
新卒で株式会社スパイア(現株式会社ユナイテッド)入社。デジタルマーケティングのプランニング業務に従事。2013年株式会社サイバー・バズ入社。25歳で同社のマネージャーとなり、セールスマネージャーやメディア部門立ち上げなど様々なマネジメント業務を担う。
2018年、美容プラットフォーム「LIPS」などを運営する株式会社AppBrewに11人目の社員として入社。同社のビジネス部門を統括するゼネラルマネージャーとして広告事業、採用、PRなどあらゆる面で同社の急拡大を牽引。2021年秋に現職。セールス・マーケティングなどビジネスサイドを担当。
▼(法人の方向け)EVeM for BusinessへのURLはこちら
https://www.evem-forbusiness.jp/
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https://emo.evem-management.com/
株式会社ZENKIGEN revii事業部 プロダクトマーケティングマネージャー:東 壌
2012年に株式会社大塚商会へ新卒入社し法人営業に従事。2014年に株式会社マイナビに入社し、法人営業や事業部内人事を担当。2020年にアイセールス株式会社に入社し、営業部長と人事責任者を経て、2022年より現職。
▼「revii(リービー)」へのURLはこちら
https://revii.jp/
組織の急拡大に伴い、中途入社のMGRが増えて管理できていない
東:1つ目の課題として、組織の急拡大に伴い、中途社員をたくさん採用したものの、マネジメント流派がバラバラで、どのマネジメントがいいのかがわからないというお悩みがあります。どのように統一や育成をしていけばいいのでしょうか?
紺野 氏:「マネジメント」という言葉はややこしいですよね。人によって解釈が全く違います。「メンバーを育成すること」という方もいらっしゃいますし、「戦略を策定すること」「メンバーのモチベーションを上げること」など、言葉の定義が異なります。
EVeM流「マネジメント」の定義とは
紺野 氏:私たちは「事業成長を実現する上での仕組み作りができること」がマネージャーの役割だと考えています。特にベンチャーやスタートアップは環境変化が激しいです。その中でも経営からオーダーされた成果を残さなければいけません。むしろ経営陣もいちマネージャーにすぎないというか、経営マネージャーとしての側面を持っているような観点がありますね。定義をさらに細かく説明すると、以下の4項目になります。
- 事業成長するための手段の方向性を組織に提示して、組織全体がそこに向かうためにディレクションをする
- 方向性を実現するための実行主体者、すなわち人の才能が最大限活かされるために必要な仕組みをつくる
- 人の才能を最大化させるためのコミュニケーションを運用する
- さらに人の才能が方向性そのものをアップデートする可能性を大いに期待する
紺野 氏:マネジメントの全体像の図で、先ほどの1点目の「ディレクション」に当てはまるのが、
- マネージャの役割認識
- 現状把握
- 役割/目標/意義の再定義
- 戦略策定
です。2点目の「仕組み作り」に当てはまるのが、以下の3つです。
- 体制構築
- システム構築
- 初期成果/モメンタム
ピープルマネジメントは、3点目の「コミュニケーションの運用」に当てはまります。「立ち位置と心得」は、この人に付いていきたいなと思えるような立ち振舞いのことです。
例えば大手企業から転職してきた人は、「マネジメント」というとピープルマネジメントを指している人が多いですね。逆に、ベンチャー上がりのマネージャーの方は、戦略策定や「目標をいかに達成するか」に意識が向いている方が多いと思います。働いてきた環境によって、認識の違いが生まれてしまうことがあります。
認識を統一するには「うちの会社にとって、マネジメントって何を指すと思う?」といった会話をしていくことが大切です。
東:共通言語をまずは作っていくことがファーストステップになるんですかね。
「マネジメント」の定義はどのようなアプローチで作るのか
紺野 氏:ゼロから作ろうと思うと大変なので、「これ大事だよね」「これは今は必要ないよね」などのディスカッションをすることが非常に大事だと思います。
全員で対話する必要はなく、数人から十数人のシニアマネージャーだけでも「自分たちの会社におけるマネジメントは何を指すのか」と話し合うのは重要です。
業務範囲が広くピープルマネジメントの難易度が上がっている
東:2つ目に、マネージャー個々のバックグラウンドや価値観が違う中で、ピープルマネジメントの難易度が上がってきているというお悩みがあります。このようなときはどうすればいいのでしょうか?
紺野 氏:ピープルマネジメントはまず、「どのようなチームの布陣・体制になっているか」を認識することが重要です。ベンチャー企業にはいろいろな経験を持った人がいます。ここでマネージャーが一番腕を振るわなければいけないのはアサインメントですよね。
「前の会社でこういう仕事をしていたから」のように、前職に引っ張られてアサインメントを決めるケースが多いと思うのですが、ここでアサインメントを決める上で重要な要素を紹介します。
- 従業員のタイプ
- 従業員のWill / Can
EVeMが提唱する4つのメンバータイプ
紺野 氏:まず従業員のタイプについて説明すると、EVeMではアサインを決める上で4つのパターン分けを提唱しています。
紺野 氏:どれかが優れているということはなく、すべてのポジションが尊い存在です。4つのメンバータイプを考慮した上で仕事を振ってみましょう。それぞれのタイプにどのようなアサインが適しているかは次の通りです。
紺野 氏:タイプに加えてスキルの高さを鑑みて、チームメンバーのアサインメントをしていきます。
EVeMが重視するWill / Canの考え方
紺野 氏:マネージャーの皆様は、メンバーのWillとCanをしっかりと把握することが大切です。特にWillはメンバーが将来どうなりたいか、どのようなキャリアを積んでいきたいのかを指しますが、実はWillを把握できていないケースは多いのではないかと思っています。
紺野 氏:WillとCanが高いものは「最適アサイン」と呼ばれ、メンバーにやる気もあり、成果も出ることを意味します。最も理想的なアサインメントです。
メンバーを「絶望アサイン」にしないことが求められる
紺野 氏:しかし、スタートアップで働いているとすべて最適アサインになるとは限りません。必要なケアを都度行うことが求められますが、一番注意すべきはWillとCanが低い「絶望アサイン」と呼ばれるものです。
紺野 氏:絶望アサインはできる能力もないし、本人も希望しない仕事を指します。放置しておくと成果は残らないし、本人がしたくない仕事で非常に辛い日々を過ごすことになり、最終的に辞めてしまう可能性があります。なので、マネージャーの皆様はメンバーを絶望アサインにしていないかどうかに注意を払いましょう。
東:僕の経験として、本人のWillを見越してポテンシャルアサインをしたけれど、実際はそのWillが本心ではなく絶望アサインになってしまったことがあります。また、ポテンシャルアサインから時間の経過とともにWillが変化して、絶望アサインに変わっていく懸念点もありますよね。
紺野 氏:ありますね。Willは変わっていくものであり、人によってはWillをうまく言語化できていないケースも多いと思います。
メンバーのWillはいかにして引き出すか?
紺野 氏:Willの引き出しは非常に難しいです。しかし、目的はアサインメントです。マネージャーの皆様は「できるだけあなたがやりたい仕事で成果が出せるようにアサインメントしたいので、あなたがやりたい仕事をぜひ聞かせてもらえませんか」といった聞き方をしてみましょう。
そこで「こういう仕事をしてみたいです」といった話が出てきたらチャンスです。そこからメンバーの思考性や将来チャレンジしたいことが、マネージャーの中で徐々に言葉として輪郭を帯びてくるのではないかと思います。
また、「これは向いていないな、したくないなと思う仕事はありますか」と聞くのも一つの手です。年次の浅いメンバーは自分のWillがそもそも何かわからないことがあります。その際はマネージャーの視点から、「こういう仕事がきっと向いているのではないか」と伝えてあげるのもいいと思うんですよ。
そこからメンバーが業務に興味を持ち、Willに繋がることもあります。Will自体はその人のものなので操作できませんが、提案したり、可能性を広げたりすることは誰にでもできるのではないかなと思います。
効率的で効果がある1on1ミーティングができていない
東:3つ目の課題です。権限委譲ができていない組織において、効果的な1on1はどのように実施すればいいのでしょうか。
紺野 氏:1on1はピープルマネジメントの中でも効率的な手段として考えられていますが、簡単にできるわけではありません。人間は感情の生き物であり、ロジックが正しくても感情が勝ってしまうからです。
紺野 氏:とりわけベンチャー企業において、正解のロジックがガチガチに固まっているものはそもそも存在しないと考えています。目標が野心的である以上、ロジックの整合性をどれだけ追求したとしても不完全なものになってしまいます。そのため、感情で繋がるというところが非常に重要です。
感情で繋がるとはどういうことか
紺野 氏:まず、表面的なコミットではなく、本気で心からやることが非常に大事で、「全身全霊・全人格をもって相手の話を聞く」ことを意識していただきたいなと思っています。また、「惜しみなく与える」ことも非常に大事です。マネージャーはメンバーから何かを得ようとする前に、メンバーに何ができるのか徹底的に考えてGiveしているかが重要です。
最後はメンバーの皆様に「敬意を持つこと」です。当たり前のことですが、なかなか意識できていない方もいらっしゃいます。どのような人からも学ぶことはできますし、人に優劣はないと思います。その人の個性を尊重し、最大限の敬意を払うことで「感情で繋がる」ことを実現できます。
1on1ミーティングに必要なポイント
紺野 氏:1on1はやることが目的になっているケースが多いのですが、メンバーの目標達成を支援する時間が1on1であることを改めてお伝えできればと思っております。1on1はマネージャーから仕掛けていき、きちんとマネジメントする必要があります。
「目的・目標・アジェンダ・参加者・頻度・時間」を会議の6点セットと呼んでいますが、これをきちんと設計することが非常に重要です。加えて、様々なケースに対してどのような対策がベストかを頭の中に入れておいていただきたいなと思っております。
1on1で解決すべき課題と対策例
紺野 氏:1on1が必要な事象と対策には、適切な組み合わせがあります。私たちは、事象への対策法として「ティーチング」「コーチング」「フィードバック」の3つを提示しています。
紺野 氏:それぞれを適切なシーンで正しく使い分けられるかが非常に重要です。マネージャーの皆様は、目的を持って1on1をすることが大切です。その目的の中でも、「今日はあの子にティーチングモードで接しなきゃいけないな」などイメージしながら臨みましょう。目的に応じて対策方法を使い分ける意識を持っていただければと思います。
東:感情で繋がっていくためにはマインド面の前提がすごく大事で、その上でスキルを使い分けることが大切ですね。
この度はご登壇いただき、誠にありがとうございました。