テレワークの現状
近年、テレワークを導入する企業が増加しています。
では、テレワークの導入率は現状どの程度なのでしょうか。
総務省の調査によると、2021年8月時点のテレワーク導入率は51.9%と半数を超える結果となりました。
また、2年たった現在でも、フルテレワークが58.4%、週3以上のテレワークが61.3%となっています。
情勢が落ち着きつつある現在でも、テレワークは多くの企業が導入しています。
参考:総務省『令和3年通信利用動向調査の結果』
Job総研『リモートマネジメント実態調査』
テレワークマネジメントの課題5つ
多くの企業が取り入れるテレワークですが、オフィスで行う業務とは違いが出てくるでしょう。
また、以下5つのような課題が生まれてしまいます。
テレワークマネジメントの課題
- コミュニケーションが不足する
- 進捗管理が難しく、生産性が下がる
- これまでのやり方と変わり、モチベーションが下がる
- メンバーの成長度が把握できない
- メンバーが人事評価に不安を持つ
課題内容をくわしく見ていきます。
コミュニケーションが不足する
Job総研の調査によると、テレワークマネジメントで1番に課題に感じるのが“コミュニケーション”だと言われています。
Web会議で話せますが、対面で仕事を行うことに比べるとどうしてもコミュニケーションが不足してしまいます。
これまで行っていた相談がしづらくなったり、雑談ができなくなったりして、メンバーの不安が増加してしまうのです。
メンバーのサポートが難しくなり、不安が増加すれば信頼感が下がってしまう可能性もあります。
また、テキストでのやり取りも増え、メンバーの表情がわからなくなります。
「指示が正しく伝わっているか」というマネージャーの課題のみでなく、「指示内容はこれで正しいのか」とメンバーも不安を感じ、業務が円滑に進まないこともあるでしょう。
参考:JobQ『2023年 リモートマネジメント実態調査』
進捗管理が難しく、生産性が下がる
コミュニケーション不足のみでなく、進捗管理が難しいことも課題として感じられています。
対面で業務を行っているときはこまめに進捗を確認できるため、進捗管理が比較的容易でした。
しかし、コミュニケーションが不足したり、進捗状況が目に見えない状況だったりすれば、進捗管理が難しく目標達成度が可視化できません。
進捗管理が難しくなれば自然と生産性も下がってしまいます。
これまでのやり方と変わり、モチベーションが下がる
テレワークでの仕事は、オフィスでの仕事と方法が異なります。
対面で行っていたミーティングがWeb会議になったり、使っていたパソコンが変わったり、報連相がチャット上になったりと、多くの部分が変化してしまいます。
また、営業活動もオンラインとなれば、これまでのやり方ではうまくいかないことが増え、メンバーは戸惑ってしまうでしょう。
自宅で仕事をするとプライベートとの区別が難しく、モチベーションが下がってしまうこともあります。
メンバーの成長度が把握できない
業務のプロセスが見えないテレワークでは、メンバーの成長度が把握できません。
「スキルがアップした」、「前回よりうまく取り組めた」などを把握できないため、人事評価が困難になることにもつながります。
メンバーが人事評価に不安を持つ
パーソル総合研究所の調査によると、テレワークで働くメンバーの約40%が‟マネージャーに仕事をさぼっていると思われていないか不安”だと感じ、約35%が‟公平で公正な評価がされるか不安”だと感じています。
前述の通り、テレワークでは業務のプロセスが見えません。
そのため、マネージャーがメンバーの評価を適切にできるのかと不安に感じているのです。
また、テレワークに合った人事評価制度がなければ、さらに不安を感じるでしょう。
参考:パーソル総合研究所『テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査』
テレワークマネジメントを成功させる方法6つ
テレワークマネジメントにはさまざまな課題があります。
しかし、課題を解決し、マネジメントを成功させる方法があります。
テレワークマネジメントを成功させる方法
- コミュニケーション不足の解消
- チーム・組織目標を明確にする
- メンバーのタスクを可視化する
- 「報連相」を徹底する
- 1on1ミーティングを活用する
- セキュリティ対策を行う
以上6つを順に解説します。
コミュニケーション不足の解消
テレワークマネジメントを成功させるために、まずはコミュニケーション不足を解消しましょう。
コミュニケーションを円滑にするには、Web会議ツールやチャットツールを活用します。
指示を出すときやミーティングのとき以外にも、うまく活用することが大切です。
例えば、常時Web会議ツールをつなげたり、気軽に投稿できるチャットグループを作ったりすればいいでしょう。
ときには雑談ができる環境をつくれば、コミュニケーションが活発になります。
また、フィードバックを行うことも重要です。
ミーティング時や進捗状況を見たときはもちろん、業務期間が3分の1程度経ったときにフィードバックを行うなど、フィードバックの時期を決めておきましょう。
コミュニケーション不足を解消すれば、メンバーのモチベーションを保ち、生産性をアップできます。
チーム・組織目標を明確にする
テレワークはメンバー1人で仕事を行うことが増えるため、目標が曖昧になりがちです。
チーム目標・組織目標を明確にし、メンバー1人ひとりの目標設定を行いましょう。
また、目標設定前には、チーム目標・組織目標を正しく伝える必要があります。
まずはマネージャー自身が目標を正しく理解し、設定することからスタートしましょう。
メンバーのタスクを可視化する
メンバーのモチベーションアップや生産性アップのためには、メンバーのタスクの可視化が大切です。
可視化するために、進捗管理ツールや定期的なミーティングがおすすめです。
定期的にメンバーのタスク状況が確認できれば、状況に合わせたフォローやアドバイスが可能になります。
また、マネージャーに加え、メンバー間でもタスクがわかるようにすると、オフィスで働くときと同様にサポートし合えるでしょう。
チーム一丸となって仕事に取り組めれば、これまで通りの成果を得られる可能性が高まります。
マネージャーはタスクをうまく管理するために、タスクの細分化を行います。
しかしマネージャーのみがタスクの細分化を行なっていると、メンバーは自立しないです。
そのため、タスク管理がうまくできていないメンバーには、タスクの細分化をするように促しましょう。
例えば、営業活動を行うといったタスクがある場合、次のように細分化が可能です。
“営業活動を行う”のタスク細分化の例
- 営業用の資料を作る
- 報告書を作成する
- 商品満足度調査を行う
- 調査方法を決める
- アンケートを作成する
- 顧客に配る
上記のように細かく決めておきましょう。
「報連相」を徹底する
コミュニケーション不足にならないよう、“報連相”ができる環境をつくりましょう。
おすすめなのが、毎日の朝礼と終礼です。
仕事の状況や、毎日のタスクを確認することにより、困ったことや課題を発見できます。
また、チャットツールなど会話できるツールを使い、いつでも報連相ができる環境を整備しておきましょう。
1on1ミーティングを活用する
コミュニケーションが不足したり、進捗管理が難しかったりという課題を解消するために、1on1ミーティングを活用します。
1on1ミーティングとは、マネージャーとメンバーが1対1で対話を行うミーティングのことです。
1対1で話すことにより、コミュニケーション不足の解消に加え、マネージャー・メンバー間の信頼関係を保ったり築いたりできます。
また、現在のタスク状況や課題、不明点が明らかになり、生産性のアップにもつながるでしょう。
1on1ミーティングでは、
- 定期的に行うためのスケジュールを立てる
- 1回あたり30分など時間を決めておく
- マネージャーはヒアリングすること・コーチングすることを大切にする
上記を意識するとよいでしょう。
くわしくは以下の記事をご覧ください。
『マネジメントにおける1on1ミーティングの役割・活用法を徹底解説』
セキュリティ対策を行う
テレワークでは、オフィスでの業務に比べて情報漏洩の可能性が高いです。
また、ウイルスにかかってしまうことも考えられます。
そのため、不正侵入などを防ぐセキュリティ対策を徹底することが大切です。
例えば、自宅からオフィスのパソコンにアクセスできるVPNを活用したり、テレワークで使うパソコンに重要事項を保持させなかったりなど、さまざまな取り組みを実施しましょう。
また、セキュリティ面に関する知識をメンバーに指導することも大切。
日頃から意識できれば、安全性がアップするでしょう。
マネージャーに求められるスキル
マネージャ-に求められるスキルは以下の通りです。
マネージャーに求められるスキル
- コミュニケーション能力
- 管理能力
- 適切な評価能力
順にみていきましょう。
コミュニケーション能力
前述した通り、テレワークマネジメントではコミュニケーション能力が必須となります。
Web会議ツールやチャットツールを活用しながら、対面と同じようなコミュニケーションをとれるような能力が必要となるのです。
パーソル総合研究所の調査によると、テレワークマネジメントで有効なのは“マネージャーの観察力”だと言われています。
観察力が高ければ、メンバーの仕事内容や進捗状況を把握でき、適切なコミュニケーションがとれます。
加えて、仕事に関するコミュニケーションの量と雑談の量が多い場合、メンバーとの信頼関係が構築できるのです。
つまりテレワークマネジメントでは、対面でのマネジメントよりも意識してコミュニケーションをとる必要があるのです。
仕事のコミュニケーションに加えて雑談を交えることで、メンバーのタスク管理に役立つことはもちろん、課題や困っていることを把握できるでしょう。
また、1on1ミーティングを実施する際には、コーチング・ティーチング・フィードバックを行うためのコミュニケーション能力が必要です。
コミュニケーション能力を高めるために、マネージャーには研修を行い、マネジメント力を高めていきましょう。
参考:パーソル総合研究所『テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査』
管理能力
テレワークマネジメントで必要な管理能力とは、“業務管理”と“労務管理”の2つです。
まず業務管理では、各メンバーが抱えるタスクを把握し、進捗状況や達成度を管理します。
対面での管理より工程数が多く億劫に感じるかもしれませんが、業務管理はテレワークマネジメントには欠かせません。
適切に業務管理を行うために、チャットツールや進捗管理ツールの活用はもちろん、チーム内でルールを決めるといいでしょう。
次に労務管理では、オフィスでの勤務と同じように管理する必要があります。
厚生労働省が発表する『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』には、おさえておくべきポイントが明示されています。
特に労働時間はしっかり管理しなければなりません。
仕事とプライベートを分けられなかったり、これまで通りのタスクがこなせなかったり長時間労働になる可能性も高いため、勤務時間や残業時間の制限を決めるなどして対策をとりましょう。
また、労務管理には勤怠ツールの利用がおすすめです。
メンバーはパソコンで出退勤の打刻ができ、マネージャーはパソコンで労働状況を管理できます。
参考:厚生労働省『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』
適切な評価能力
テレワークは、メンバーの仕事への姿勢や振る舞い、目標達成までのプロセスなど普段の様子が見られないため、評価は非常に難しいです。
これまでの評価制度と同じでは、テレワーク社員と出社社員の評価に違いが出てくる可能性もあります。
適切な評価を行うためには、まずテレワーク時の評価項目を設定する必要があります。
例えば、Web会議での“発言内容”を評価する、“目標達成度”や“実績”のみを評価するなど、どの部分を評価に入れるのかを決めておきましょう。
また、設定した目標の達成度を測定するMBO(目標管理制度)や、組織の価値観にそった行動を評価する“バリュー評価”を取り入れるのも有効的です。
テレワークマネジメントの成功事例
テレワークマネジメントは難しいですが、スキルを身につけ、成功する方法を実践すれば適切なマネジメントを行えます。
では、テレワークマネジメントに成功した企業はどのようなことを実践したのでしょうか。
神戸トヨペット株式会社
トヨタ自動車株式会社のディーラーである神戸トヨペット株式会社は、人材の育成に課題を感じていました。
人事評価シートがマンネリ化しており、目標達成に向けての行動ができていない現状があったようです。
また、マネージャーの主観で評価が行われており、評価に不満を持つメンバーもいました。
そこで導入したのが、1on1ミーティングです。
マネージャーとメンバーが定期的に対話することにより、目標達成への意識を向けたり、人事評価制度への理解を促したりできました。
さらに、マネジメントスキルも向上させることで、人材育成にもつながりました。
このことから、1on1ミーティングはマネジメントにおいて非常に重要な要素だと言えるでしょう。
株式会社LIG
株式会社LIGは、Web関連事業を展開する会社です。
同社が課題に感じていたのは、業務状況が曖昧になっていることでした。
そこで、業務状況を把握・管理できるツールを導入したのです。
マネージャーは業務状況のほか、エンゲージメントや作業集中度、仕事の負荷度を把握できるようになり、メンバーはタスク達成度が把握できるようになりました。
結果として、マネージャーの業務管理に役立つことはもちろん、メンバーにとってもメリットが生まれ、生産性がアップしました。
株式会社ブレイクスルー・ネットワーク
介護を行うメンバーが増加した株式会社ブレイクスルー・ネットワークはリモートワークを導入しました。
しかし、「どのように生産性をあげるか?」に課題を感じていました。
そこで導入したのは、コミュニケーションを活発にするWeb会議ツール。
勤務中は常にカメラをオンにすることで、メンバーの顔を見て仕事ができます。
テレワークで感じがちな心の距離を近づけ、コミュニケーションの活性化につながったそうです。
生産性がアップした結果から、コミュニケーションを活発にする能力やツールが必要だとわかるでしょう。
オムロン エキスパートリンク株式会社
オムロン エキスパートリンク株式会社がテレワークマネジメントで課題に感じていたのは、マネージャー・メンバー間のコミュニケーションです。
結果を残すチームをつくるためには、マネージャー・メンバー間で信頼関係を築き、メンバーの成長を促す必要があります。
そこで導入したのが1on1ミーティングです。
1on1ミーティングで対話した内容が仕事につながっているか、そしてマネージャーがサポートしているかを把握し、業務に活かせました。
1on1ミーティングによってコミュニケーションの活性化・生産性アップにつながり、テレワークマネジメントを成功させた事例です。
テレワークマネジメントを成功させて生産性をアップしよう
半数以上の企業が取り入れているテレワークは、対面とは異なりさまざまな課題が生まれてしまいます。
一方で、テレワークを取り入れたメンバーからの満足度は高い傾向にあります。
メンバーの満足度を低下させないためにも、適切なテレワークマネジメントを実践することが大切です。
1on1ミーティングやツールを活用して、メンバーのモチベーションやエンゲージメントを向上させ、生産性をアップさせましょう。