管理とマネージメントの違いとは
管理とマネージメントの違いをきちんと理解できていない方は、意外と多いのではないでしょうか。
管理とマネージメントが混合されやすい理由のひとつは、マネージャーが管理職と呼ばれることから、メンバーを管理すると理解する人が少なくないからだと考えられます。
では、管理とマネージメントはどのように異なるのか、そして、現代においてマネージメントが求められるのには、どのような理由があるのでしょうか。
管理とマネージメントの違いと、マネージメントが求められる背景について解説します。
管理とマネージメントの定義
マネジメントを発明したと言われているピーター・F・ドラッカーの著書によると、マネージメントやマネージャー、管理は以下と定義されています。
マネジメントとは組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関であり、マネージャーとは組織の成果に責任を持つ者である。
管理とはそのものの働きが十分に保てるように、全体にわたって気を配り、取り仕切ること
ピーター・F・ドラッカーの上記の言葉からもわかるように、管理とマネージメントでは、言葉そのものの本質が異なるのです。
管理はマネージメントの手段の一つ
管理はマネージメント手段の一つです。
前述したとおり管理とは、そのものの働きが十分に保てるように、全体にわたって気を配り、取り仕切ることを意味します。
そのため組織の成果を向上させるためには、管理も必要な手段の1つなのです。
そして、マネージメントの目的は組織の成果を向上させることです。
マネージメント本来の目的を見失ってしまうと「マネージャーがこう言っているから」というような、直接的な理由にばかり注目してしまい管理を強化してしまう傾向があります。
行き過ぎた管理は、マネージメントに重要な要素をバランスよく保つことが、難しくなってしまう可能性があるため気を付けましょう。
いまマネージメントが求められている背景
現代において、マネージメントが求められる理由はいくつかあります。
- ITの進化
- VUCA(ブーカ)の時代への適応
- 在宅ワークや、リモートワークの普及
- ビジネスのグローバル化
IT技術の進化や、VUCA時代の到来により、専門性の高い技術を持った人材がさらに求められるようになりました。
しかし、複数の技術を一人の人間が保持することは比較的困難だといえるでしょう。
IT技術の進化や、VUCA時代の到来といった時代背景から高い専門性を持った人材がチームを組み、プロジェクトを進行していくスタイルが主流になったこともマネージメントが求められる背景のひとつです。
また、企業の経営革新により非正規雇用が増え、メンバー1人ひとりの働き方に対する考え方も変化しました。
部長や課長などの中間管理職が経営層から現場へ意向を届け、メンバーを統制・管理するといった従来の日本の管理手法では、組織が機能しにくい環境になってきたのです。
マネージメントとは?
ビジネスにおけるマネージメントとは、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を有効活用することです。
そして、同時にリスク管理や組織の運営をおこない、より大きな成果をあげ目標を達成していかなければなりません。
では、マネージメントにはどのような目的や種類があるのか、解説していきます。
マネージメントの目的
マネージメントの目的は、メンバーそれぞれの能力を最大限に活用しながら、同じ目標に向かって組織の成果向上と発展をさせることです。
組織の成果向上と発展のためにマネージャーが行う業務はさまざまですが、主な例は以下になります。
- 目標管理
- 業務進捗管理
- 人材育成
- メンタルヘルスマネジメント
- チームマネジメント
組織にマネージャーを配置する主な目的は、組織の成果を向上させるために、メンバーが最大限の力を発揮できる環境づくりです。
マーネジメント業務の中には、メンバーが一定の基準から外れないように多数の人間を管理する場合もあります。
また、マネージャーが自身を管理する場合もありえます。
マネージャーの業務は、管理職と同義に思えるかもしれませんが、マネージメント業務の項目のひとつに管理があり、マネージメント≒管理ではないため注意しましょう。
リーダーシップとマネージメントの違い
リーダーシップとマネージメントでは似ているようで必要とされる能力や立場が違います。
リーダーシップとは、集団の中に積極的に入り、組織の先頭に立ちチームが進むべき方向へと導く能力や立場のことです。
一方、マネージメントとは、見通しを立てメンバーの能力や特性を把握します。
そして、目標に対してチームが最大限の力を発揮できるよう働きかけることです。
リーダーシップとマネージメントでは、それぞれ重視しているものが違うため、求められる能力も変わってきます。
リーダーシップには、人間的魅力や目標設定や先見性などが求められます。
次に、マネージメントには計画策定や論理的思考、管理調整能力などが求められるのです。
一見似ているようでもリーダーとマネージメントでは、立場や重視しているものの違いから、求められる能力にも違いがあるのです。
マネージメントの3つの種類
下記の3種類のマネジメントは、それぞれの階層ごとに重要な役割を持ちます。
それぞれどのような役割をもつのか、解説します。
トップマネジメント
主に組織の運営方針や基本方針を決定し、経営戦略を立てます。
経営に直結する事柄を決めるので、会社そのものだといってもいいでしょう。
ミドルマネジメント
組織のメンバーと現場をつなげる重要な役割をもちます。
トップマネジメント層の考えやビジョンを理解し、かつローアーマネジメント層を束ねる高度なスキルが必要とされます。
ローアーマネジメント
トップマネジメント層の施策を現場に反映させます。
同時に現場が円滑に回るようにサポートをし、会社のビジョンをより現実に近づけていきます。
下記のリンク先にもある様に、マネジメントは、組織にとってなくてはならないレイヤーのひとつです。
各階層のマネジメントが、チームの力を発揮できるように働きかけることで、現代の組織において生産性向上が見込めるのです。
『社員がマネジメントを行う必要性とは?具体的な業務や目標と共に解説』
マネージャーとは?
具体的にマネージャーはどのようなことをするのかと聞かれると、返答に困る方もまだ多いのではないでしょうか。
ここでは、マネージャーになるにあたって必要な基本知識から身に付けておきたいスキルについてご紹介します。
まずは、マネージャーそのものを理解し管理とマネージメントの違いに対する理解をより深めていきましょう。
マネージメントをする人は?
マネージメントを企業が取り入れる場合、マネージャーという管理職を配置するのが一般的です。
マネージメントにもさまざまな手法があり、マネージャーは必要に応じてその時に最適なマネージメント手法を取り入れていきます。
マネージャーは、メンバーがそれぞれの力を最大限発揮できるように、サポートをしていきます。
例えば、メンバーの指導や育成・労務管理・さまざまな問題に対する意志決定・ときには、メンバーを直接的に管理しなければならない場合もあるのです。
マネージメントをするのに最適な人は、次の特徴があります。
- マルチタスクができる
- 観察力に優れている
- 本質を見抜くことが得意
- コミュニケーション能力にも長けている
- 人を動かせる人
マネージャーの定義
経営学者ピーター・F・ドラッカー氏の著書内で定義されているマネージャーの役割は、一言で言うと、組織の成果に責任を持つことです。
マネージャーは、組織の成果を上げるために道具・機能・機関といったあらゆる資源を使います。
そのときに最良なマネージメント方法を用いて、組織の成果を最大限に向上させるのです。
もちろん、いつもよい結果ばかりとは限らないでしょう。
思うような成果が出なかった場合でも、マネージャーが結果を受け入れ次に反映させることは、組織の成果に責任を持つことなのではないでしょうか。
マネージャーの種類
マネージャーにはさまざまな種類があり、業種やマネージメント対象によって使い分けられます。
組織や団体によって呼び方やカバーする範囲は異なりますが、一般的に分類されているマネージャーの種類とその役割の一部を以下にて紹介します。
ゼネラルマネージャー(GM)
マネージャーの中でも上位職です。また、外資系企業で設置されることが多いのも特徴です。
具体的には、人事・予算・業務活動の管理などを行います。
エリアマネージャー
担当地域にある複数の店舗の運営と管理を行います。
飲食店・小売店・店舗型のビジネスを運営している企業に設置されます。
売上を最大限に向上させるため、予算・人材・現場のコーチングを実施するのが特徴です。
プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトの進行と管理といったマネージメントを行います。
業界・職種を問わず比較的多くの企業に導入されているので、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
プロジェクトの進捗・予算・スケジュール・成果物の品質などを一括管理します。
プロダクトマネージャー(PDM)
製品(プロダクト)の企画・生産・販売の管理を行います。
市場調査や試作の製作をはじめとし、生産管理から販売後の成果分析にいたるまで、ひとつの製品に対する成果への責任を持ちます。
ラインマネージャー
ライン型組織のマネージャーです。
社長・部長・課長・係長・一般社員がひとつなぎのラインで成り立つ組織に配置されます。
従来の日本における管理職は、現代のラインマネージャーにもっとも近いといえるでしょう。
プレイングマネージャー
管理とプレイヤーを兼ねるポジションがプレイングマネージャーです。
組織の目標設定やメンバーの育成とともに現場業務も担当します。
マネージャーの役割
マネージャーの役割は、管理職と類似しています。
しかし、管理職と比べ業務がより広範囲なため、マネージャーに求められる役割も広範囲にわたります。
- プロジェクトや業務全体の管理
- 現場で起こる様々な問題への意志決定
- 社員の指導・管理
- メンバーや社員の労務管理
マネージャーは管理業務と同時に、全体の進捗状況を把握して、メンバーの能力を最大限に活かしながら目標に向かいます。
マネージメント方法もさまざまなため、マネージャーは、状況に応じてより最適な方法を選択し、効率的に組織の成果を上げなければならないのです。
そして、組織の成果に責任を持つことが、マネージャーの役割だといえるでしょう。
マネージャーに求められるスキル
カッツ理論を提唱しているアメリカの軽学者であるロバート・L・カッツ(Robert Lee Katz)氏によると、マネージャーに求められるスキルは3つに分類されます。
- 業務遂行に必要な知識や技術を指すテクニカル技術(専門能力)
- 人間同士の関係を円滑にする能力であるヒューマンスキル(対人関係能力)
- ものごとの全体的に概念化し、本質的に課題をとらえるコンセプチュアルスキル(概念化能力)
上記3種類のスキルは、どの職層にとっても重要なスキルです。
しかし職層によって、最適なスキルの比率は変化します。
マネージャーに求められるスキルについてより詳しく知りたい人はこちらの記事をお読みください
『マネジメントスキルとは?その種類や育成方法について徹底解説!』
管理職がマネージメントで抱えやすい問題
実際にマネージメントをしていると、管理者はさまざまな問題に直面するでしょう。
ここでは、管理職が抱えやすい問題と解決策をご紹介します。
メンバーの生産性低下
チーム発足からある程度経過すると、さまざまな原因によりメンバーの生産性が当初より下がる場合があります。
生産性が低下すると、他のメンバーやチーム全体にも影響を与えかねません。
そのためどのような理由で生産性が低下しているのか、プロセスや手順を継続して見直す必要があります。
解決策は、現在のシステムの弱点となっている部分のワークフロー分析をおこない、見直すことで仕事の効率を高められます。
さらに、1on1ミーティングでメンバーに状況をヒアリングし問題や課題を見つけ都度解決に取り組むことも有効です。
勤務時間や仕事の生産性の確認や見直しをおこない、定期的な改善に取り組みましょう。
人員不足
管理職は、チームの目標達成のため業務内容によっては、新たにメンバーを加えるかを検討する時期が必要な場合があります。
業務量の増加やメンバーの残業などを常に確認し、必要に応じて人員増加も視野に入れます。
新たにメンバー加入を決めた場合は、採用プロセスに時間が必要なため、人事担当や他部署に候補者がいないか早めに働きかけましょう。
採用の際は、チームメンバーに意見を聞くことも円滑に人員増加できるポイントです。
人と組織の変化の影響を受ける
管理職は、以前同僚だったメンバーを管理する立場になる場合があります。
昇進によって同僚と気まずい関係になる恐れがあります。
その場合はすぐに管理職として接するのではなく、時間をかけてリーダーとして適切な対応をすれば問題と感じることはありません。
さらにチーム全員で目標達成などの同じ方向性を持ち、全力で支援しチームワークを心がけましょう。
また、経営者の考えにより組織の変更はよくあることです。
積み上げてきたチーム力を組織の変化により一から構築する場合や、チームメンバーの入れ替えなど、管理職は影響を受けやすいポジションです。
人や組織の変化によって、メンバーも不安になりやすくモチベーションが下がる傾向があります。
特にチーム結束当初はメンバー同士のつながりが薄いため、管理職が率先してランチ会や親睦会を企画するなど工夫が必要です。
このように管理職が中心となり、どのような影響にも左右されないチームワークと信頼関係の構築が求められるでしょう。
コミュニケーション不足
チーム管理には、コミュニケーションの活性化は欠かせないものです。
しかし、チームメンバーにはさまざまな個性があり、ときには衝突したりコミュニケーションの行き違いが発生したりするかもしれません。
そのため、管理職はメンバーの個性を把握し、全員が円滑にコミュニケーションを取れる仕組み作りが必要です。
業務を効率的に遂行するため、管理職がメンバーに求めることなどを正確に伝達できるようコミュニケーションの回数を増やし、気持ちの良いやり取りを意識しましょう。
最近は、リモートワークなどですぐに話しかける状況にない場合も多いです。
日頃から業務以外の雑談も気軽に話せるよう、コミュニケーションツールなどを利用し、風通しが良いチーム作りを心がけましょう。
サポート不足
経営層や人事などの上層部をはじめ、マネージャーなど管理職のサポートが不足してしまうと、それらの職位より下位メンバーの業務を遂行する効率が低下する恐れがあります。
管理職は自身の仕事以外にも、プロジェクト全体の戦略立案・進捗管理などが忙しく、メンバーのサポートまで意識が向かない場合もあるでしょう。
その場合は、1on1ミーティングを行うなどメンバーをサポートする時間を全社で作り、体制を整えるとよいです。
管理職がマネージメントを成功させるためのポイント
管理職のマネージメントは、マネージメント能力を高めればいいわけではありません。
ここでは、マネージメントを成功させるためのポイントを3つご紹介します。
対話の頻度と量を増やす
繰り返しになりますが、マネージメントは信頼関係が大前提です。
チームで業務を進めるうえで、メンバー同士お互いを尊重しトラブルが発生した場合には助け合えるチームが理想です。
このようなチームワーク向上のためにも、管理職とメンバー間でも対話の頻度と量を増やし、信頼関係の構築で効果が出るマネージメントが可能となります。
日頃からメンバーを観察し、些細なことでも会話するなどコミュニケーションを心がけましょう。
メンバーの話をよく聞く
メンバーの話をよく聞くこともマネージメント成功のポイントです。
チーム内でメンバーが安心して発言できるといいアイディアが出やすくなり、目標達成に向けチーム全体のモチベーションアップも期待できます。
心理的安全性は、ただ仲がいいチームなだけではなく、全員が同じ方向を向き団結力のあるチームが構築できます。
このように管理職はメンバーの話をよく聞くことで、メンバー個人を尊重や敬意を持ち、相手の価値観の理解を心がけましょう。
組織やメンバーの仕事のプロセスを見直す
マネージメントは、結果だけを注視しメンバーを評価するものではありません。
そのため管理職は、目標達成への組織やメンバーの仕事のプロセスを洗い出し、日々の行動やタスクに反映させた業務の進捗管理も大切です。
プロセスが正しく行われているか、メンバー配置は間違っていないかをチェックしチームを管理できると、目標へ確実に近づきます。
このように、仕事のプロセスの見直しで、メンバーに任せる業務配分や挑戦的なプロジェクトに取り組むことも可能です。
また、管理職がプロセスを把握していることで、メンバーが壁にぶつかった際にフォローやリカバリーもスムーズに対応できるでしょう。
まとめ
従来の日本における時代背景や管理職という言葉から履き違えられることの多いマネージメントと管理ですが、深く掘り下げていくと似ているようでも意味やレイヤーは異なります。
マネージメントと管理をうまく使い分け、組織の成果を最大限に引き出せる人こそ、現代において求められる人材です。
ぜひこの記事を参考に、ご自身や組織内のマネージメントを見直してみてください。
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